ひかりのきおく―くうはくの2ねん
ひかりが死んで、おっちゃんに『おそら』に連れてこられる間は2年ほどあいていた。
「ひかりはママのお腹から出た後もずっと眠っていたが、ママとパパからの愛情は感じていたんだろうな。ひかりの魂は『天国』に行かずにママのお腹の中に戻ってしまったんだ。」
おっちゃんの手はひかりの頭から離れていた。
ひかりは目を開けておっちゃんの顔を見た。
「俺がそのことに気づいたとき、ひかりのママのお腹にひかりの弟の望がいたんだ。ひかりの魂は望のためにママのお腹から出てきた。俺がひかりを見つけたとき、ひかりの魂は今の2歳くらいの姿になっていた。ひかりはお葬式のときに病院を退院したときに着せる予定だったベビードレスと靴下を身につけていた。」
ひかりは自分のワンピースと片方しかない靴下を見た。
「みんなと同じお洋服にしようと思ったんだけどな。そしたら、胸の手術跡が見えてしまう。だから、ひかりが来ていたベビードレスをワンピース風に変えてもらったんだ。靴下は俺がひかりを見つけたときから片方しかなかったな。」
ひかりは納得してワンピースのヒラヒラ部分を軽く引っ張った。せいらが着てみたいと言って脱いだときに胸の傷があったこと、おっちゃんが慌ててやって来たことの理由がようやく分かった。
「死んでから『おそら』に来るまでの2年間の記憶は俺でも思い出させることはできないんだ。ひかりの魂はずっと眠った状態だったようだし。」
ひかりはうつらうつらと眠そうにし始めた。
「色々思い出して疲れただろ。寝てもいいぞ。」
おっちゃんはひかりを床に寝かせた。ひかりは目を擦りながら頷いた。
しばらくするとひかりは寝入ってしまった。
とても穏やかで幸せそうな顔をしていた。
「こんな顔で眠って…教えてよかったんだな。」
ひかりの寝顔を見ておっちゃんは安心した表情になった。
ひかりの夢の中ではせいらと一緒に遊んでいた。
「せいら、今度は積み木しようよ。」
ひかりはせいらの腕をつかんで歩き出そうとしたが、せいらはいなくなっていた。
「せいら?」
ひかりはキョロキョロしてせいらを探した。
『ひかり、待ってるよ。先に行くね。』
せいらの声が聞こえたが姿がなかった。
「せいら、どこ行っちゃったの?」
ひかりは泣きながらせいらを探した。
『『おそら』に来た子供はね、ずっとここにはいられないんだ。』
前におっちゃんがそう言っていたのを思い出した。
『じゃあせいらはどこに行っちゃったの?』
ひかりはふと足を止めた。
『せいらも行っちゃったんだ。』
確か、せいらがいなくなった時にさくらがそう言っていたのを思い出した。
「さくらに聞かなきゃ。」
ひかりは寝言でそう呟いた。




