ひかりのきおく―しゅじゅつ、そして
小さな体のひかりには手術はかなり負担になるものだった。
執刀医は何回かに分けて手術することに決めた。
ひかりはNICUから看護師たちに囲まれて手術室に運ばれた。
両親も祖父母も手術室の前までひかりを見送った。
「光ちゃん、頑張って…ママ、待ってるからね…」
母は泣きながらひかりの手術が終わるのを待った。
みんなひかりの手術が成功するのをじっと祈っていた。
1回目の手術は成功した。ひかりはICU(集中治療室)に移された。ひかりの胸には縦に大きな手術跡があった。
「光ちゃん、頑張ったんだね。」
「痛々しいけど、この子が耐えた証ね。」
みんなひかりの手術が1つ終わってホッとしたが油断はできなかった。
2回目に予定していた手術の前に、ひかりの容態に合わせて何度か小さな手術を行った。
「こんな小さな体に何度もメスを入れなきゃいけないのね…」
手術の度に母親は涙ぐんでいた。
「あの子がこれから生きていくためだ。俺だって辛いんだよ。でも、光ちゃんがもっともっと大変な思いしてるんじゃないかな。俺たちがつよい気持ちで待っててあげなきゃ。」
父親は母親を慰めた。
そして、2回目に予定していた手術が始まった。
「この手術を乗り越えたら呼吸器が外れるのが近くなるのよね…やっと抱っこできる…」
まだ油断はできなかったが、みんなではひかりの手術を終わるのを待っていた。
ひかりの手術は無事に終わった。
しかし、その日の晩、ひかりの容態が急変した。
「光、光ちゃん!ダメだ!」
「いやー!光!目を開けて!お願い!」
ひかりについていた心電図の心拍数が0になった。
ICUには母親の泣き叫ぶ声が響いていた。
ひかりの死は治療や手術のミスではなく、原因ははっきりとは判っていないが、小さな体が手術に耐えきれなくなったことだろうと結論付けられた。
「もし、手術をしていなければ、この子は今日まで生きていなかったかもしれない…」
泣きながら自分に言い聞かせるように母親は呟いた。
小さな命の死―みんなの心に大きな傷をつけることになった。
「ひかりはね。みんなから愛されていたんだよ。みんなひかりと一緒に生きたかった。でも、できなかったのは仕方のないことなんだ。」
おっちゃんはひかりに語りかけた。
「ひかりの病気は誰のせいでもないんだ。ひかりのせいでも、ママやパパのせいでもないんだよ。」
ひかりは目をつぶりながら頷いた。
頬に涙が伝っていた。




