ひかりのきおく―たんじょう
陣痛から1日経って、母親は破水して分娩室へ入った。父親も立ち会った。
「オギャ、オギャ…」
重度の心臓病をもったひかりがだったが、産声をあげた。これに周りの医師や看護師は驚いていた。
「生まれた…」
母親は出産の疲れで力が抜けていた。
「頑張ったな!光ちゃんも頑張った!」
父親は涙ぐんでいた。
ひかりは体を拭かれた後、カンガルーケアで母親の胸の上にのせられた。
母親はひかりの頭や背中を優しくなでた。
父親もひかりをなでた。
「小さいね。」
「かわいい…頑張ったね、光ちゃん。」
分娩室には小児科医もいた。
「では、連れていきますね。後でNICU(新生児集中治療室)に来てください。」
そう言って小児科医はひかりを急いでNICUへ連れていった。
自力で呼吸するのはひかりにとってかなり負担だった。ひかりは安定剤の点滴を打たれ、呼吸器をつけられた。
NICUに来た両親は医師から今後の治療や手術の話を聞いた。呼吸器をつけられたひかりを両親は抱っこできなかったが、
「手術が終わってから、いっぱい抱っこしてあげるから。それまでお互いが我慢だ。みんなで手術を乗り越えよう。」
と父親が言った。ひかりはすやすや眠っていた。
母親は入院中、3~4時間おきにひかりを見に行った。
頭をなでたり話しかけたり、それしかできなかったがひかりがいる幸せを感じていた。
「光ちゃん、今日はパパが出生届出してくれたよ。これで光ちゃんも市民の1人だね。ママの友達もおめでとうってメールくれたの。良い名前だねって。」
「ママね。やっとお乳出たの。」
「明日はパパも来てくれるよ。おじいちゃんおばあちゃんも来るって。」
ひかりは注射器を使って管から胃にミルクや母乳を入れられた。
「お乳の味、覚えておこうね。」
看護師が綿棒でひかりの舌に母乳をつけた。ひかりは母乳を味わうように口を動かした。
ひかりの祖父母もひかりのお見舞いに訪れた。
「光ちゃん…みんなついてるから頑張って…」
みんなひかりの頭をなでたり、体をさすったり、小さな手を握ったりと思い思いにひかりに触れた。ひかりは時々、体を動かしていたが安定剤で眠ったままだった。
ひかりはずっと利尿剤などの薬物投与の内科的治療をされていた。
母親が退院する前、医師が告げた。
「薬物治療はこれで限界です。手術のめどがついたので2日後から始めます。」
いよいよ、小さな体のひかりが手術を受ける時が来た。




