めをつぶって
ひかりは両親の声を思い出しながら穴を掘っていた。
しかし、雲でてきた床に穴が空いているだけだった。
ひかりは諦めずに場所を変えて穴を掘った。
何回もやっても同じことの繰り返しだった。
それでもひかりは諦めなかった。
ひかりが掘った後はもぐらたたき状態だった。
「ふぅ…」
20個ほど掘った後、疲れて座りこんでしまった。
ふと、さくらの言葉を思い出した。
『お目目、つぶってたんじゃない?』
ひかりは目をつぶって夢の中で両親の声を聞いていた時を思い出しながら穴を掘った。
しばらく掘って目を開けてみた。
ひかりの掘った穴に霧のようなものが渦巻いていた。
ひかりは手で霧のようなものを払った。
すると、家の中の一室が浮かび上がってきた。
ひかりはチリ一つ見落とすまいと必死で凝視していた。
ひかりと同じくらいの男の子が部屋の中を走っていたが、こけたしまった。男の子はわあわあ泣いていた。
「望。家の中走っちゃダメでしょ!?ケガはないかしら?」
聞き覚えのある声だった。
「ママ…」
ひかりが呟いた。
女の人が望と呼ばれた男の子に駆け寄ってきた。
「あの子はね。ひかりの弟なんだよ。」
いつの間にかひかりの背後におっちゃんがいた。
「ひかり、あの人がママだよ。」
ひかりはじっと母親を見た。
母親は泣きじゃくる望を抱っこしてあやしていた。よく見ると母親のお腹は少し膨らんでいた。
ひかりは悔しいような寂しいような羨ましいような色々な感情が込み上げてきてわあわあと泣き出した。
おっちゃんがひかりを抱き上げた。
「ママにああやって抱っこして欲しいんだよな?ひかりにはママのお腹にいた頃の幸せな記憶が残っているからな。それはママとパパからの最高のプレゼントになったな。ひかりは本来、『おそら』に来るべきじゃなかったんだが、俺が連れてきたんだよ。お友達と仲良く遊んでほしかったから。でも、もうママには会えないんだ。ひかりは死んでしまったから。」
「何で…ひかりは死んでしまったの?…ママと…パパと…一緒にいれなかったの?」
ひかりは嗚咽をこらえながら聞いた。
「もう、ひかりは十分苦しんだよな。」
おっちゃんが言った。
「これ以上はひかりは自力で思い出せないと思う。でも、やっぱり自分のこと、知りたいよな。ひかり、全部本当のこと話すけど、ショック受けるかも知れない。それでもいいかい?」
おっちゃんはじっとひかりの目を見た。
ひかりはおっちゃんが自分のためにとても真剣になってくれているのが分かった。
ひかりは涙を流しながら大きく頷いた。
「じゃあ目をつぶってごらん。」
目をつぶったひかりの頭におっちゃんは手を当てた。




