おっちゃんとおそら
『おそら』はもともと死んでしまって『極楽』に行けずに迷ってしまった子供の魂を一時的に預かって、一定期間を過ぎると転生させる場所だった。
しかし、100年ほど前に虐待を受けて死んだ子供が迷いこみ、当時『おそら』の担当していた女性天使と母親をダブらせてしまってパニックを起こして『おそら』の担当をおっちゃんに変えたのだった。
「今後、下界の流れ次第では虐待で死んでしまう子供が増える可能がある。」
天国を統括する『天国部』の部長の判断だった。
「『おそら課』の異動の話が出たとき、ごっさんはかなり悩んでいた…『俺に子供の世話なんかできるのか』ってな。子供の世話は女性の方が適任だとも言ってたな。」
『おそら』に初めて来たおっちゃんは戸惑いながらも子供たちの世話を始めた。しかし、だんだん疑問が出てきた。
「ここに来ている子供には『訳あり』な子供もいる。そんな子供を生前の記憶がないのを理由にただ機械的に転生させて良いのだろうか。」
おっちゃんは『おそら』に来る子供を『訳あり』な子供、親の愛情が足りずに死んだ子供の魂のみを受け入れて、生前の記憶と向き合わせてはどうかと提言した。
「子供たちの心を救ってやりたい…生前の記憶を思い出しても転生後はまた忘れてしまうが、それでも心があるのにはかわりないだろ。」
そう訴えて、記憶の戻った子供に転生か『極楽』に行くか選択させることになった。
さらに、『転生課』に協力してもらい、転生先の親にまた虐待されることがないように本当に愛情を持って育ててくれる親を優先的に紹介してもらうようにもした。その担当になったのが佐藤だった。
「もともと『転生課』だったからすんなり通ったんだが、部長の言った通りだんだん虐待死した子供が増えてきて、しかも色々な事情を抱えた子供も増えてきたからごっさんはまた悩んでたんだ。『俺1人で子供みんなの心を救えるだろうかって。女性天使の導入もまた検討した方が良いかもしれない』ってな。」
山田の口元がわずかにゆるんだ。佐藤はそれを見逃さなかった。
「『おそら』はごっさんのお陰で子供の笑顔が増えた。下界に転生した後も、親友になったりとか結婚したのもいたな。ごっさんのお陰で子供たち同士の絆もできたんだ。簡単に楽に業績を上げれる場所だなんて言わないでくれ。」
佐藤の目はとても真剣だった。山田は少し怯んでしまった。
「でも、まぁ、今後女性天使の導入は検討していこうとは思っていますよ。」
おっちゃんがそうたを抱いたまま戻ってきた。
「確かに、子供を転生させれば業績として残りますがね。『おそら』の今のシステムだとなかなかうまくはいかないと思います。」
おっちゃんが山田に言った。そうたはキョトンとした表情でおっちゃんの顔を眺めていた。




