こんらん
ひかり、ゆあ、いつきは積み木で遊んでいた。さくらもやってきて4人で仲良く遊んでいた。その後ろで山田がニコニコしながら3人を見ていた。
「あら、上手ね。そんな高さまで積み上げて。」
しばらく遊ばせたあと、
「さぁ、お勉強しましょうか。」
山田は勉強道具を用意して子供たちに言った。
みんな机に向かっていった。ひかりは途中で前田をチラッと見て、ニコッと笑った。
『本当にグミを気にいってくれているのね。』
前田もひかりに笑い返して手を振った。それを見ていた山田がキッと前田をにらんだ。
子供は机に向かってそれぞれ勉強を始めた。
「そうそう、高橋光さん、字お上手ね。」
“高橋”という言葉を強調して山田がひかりに言った。
ひかりは聞き覚えがあったが思い出せずに考えていると、山田はニヤリと笑った。
「あなたは、田所さくらさん、カタカナ書けるのね…」
山田がさくらに言いかけると、
「イヤ!」
さくらが叫んだ。子供たちはビックリしてさくらを見た。
「田所さくらさんどうしたのかしら?」
「イヤ!イヤ!」
さくらは耳をふさいで激しく首を横に振った。前田もその様子を見て慌てて駆け寄った来た。
「どうしたの?」
前田がさくらの背中に手をおいてさくらの顔をのぞきこもうとした。
「あなたは関係ないわ!」
山田が前田にきつい口調で言った。
ひかりはビックリしたままどうしていいか分からなかった。ゆあといつき同様呆然とさくらを見ていた。
「さぁ、田所さくらさん。落ち着いて、みんなでお勉強しましょ。頑張ったらおやつをあげますわ。」
“おやつ”という言葉に一瞬、ひかりは反応してしまったが、さくらが心配だったなのでじっとさくらを見ていた。
「なぜ、わざとフルネームで呼ぶのですか?原因はそれですよね?」
前田は厳しい顔つきで山田を見た。
「私は子供たちのために本名で呼んで差し上げただけですわ!」
「子供たちのためじゃないでしょ?白々しい!」
前田は怒っていた。
「後藤さん、呼ばなきゃ。」
前田は立ち上がってどこかに行こうとしたが、山田が前田の腕を引っ張った。
「今は私がここの担当なのよ!」
山田が叫んだが、前田は山田の手を振り払って消えてしまった。
「あっ…」
ひかりの口から声が漏れた。
山田がこちらに振り向いたときの眼鏡をじっと見ていた。ひかりの頭の中に強い光の中でひかりを囲むように立っている帽子とマスクをした大人たちの光景が浮かんだ。そのうちの1人が山田の眼鏡と似たような眼鏡をかけていた。以前も同じ光景を思い出したことがあった。ひかりは涙目で遠くの方を呆然と眺めていた。




