すぎはらけ
下界の杉原家では夫の純也、妻の絵里、娘の華澄が誰が見ても幸せそうに暮らしていた。
しかし、純也は人知れず怯えていた。
今、会社で大きなプロジェクトを任されている。出世のチャンスだとものすごく意気込んでいた矢先、ニュースが目についた。
『シングルマザーが子供を死なせる。』
そのシングルマザーは知っている名前だった。
『加賀美清香』
かつての恋人だった。お互い愛し合っていた。自分と結婚したがっているのを知っていたが、まだそんな気がなかった。
「…できちゃったんだ。純也との子供。」
少し恥ずかしそうに笑みを浮かべながら報告された。
それを聞いた瞬間、どうしていいか分からなくなってしまった、と同時に清香への愛情が完全に覚めてしまった。
実は会社の上司から縁談が持ち上がっていた。出世のために受けるつもりでいたし、徐々に清香への愛情が薄れていってたところだった。
そして、清香とは完全に縁を切って縁談で紹介された女性と結婚した。それが妻の絵里だった。
そして華澄が生まれ、人並みの幸せな暮らしをおくっていた。
『会社にバレるとヤバいよな…せっかくのチャンスがパアだ…』
そう考えながら純也は帰宅していた。
家に着いた。
「ただいま。」
「お帰りなさい。華澄、寝ちゃったわ。今日はたっちができるようになったわ。」
「そうか…」
着替えて夕ご飯を食べ始めた。
「ねぇ、純也。最近、元気ないわよ。仕事大変なのね。」
「…あぁ、そうなんだよ。社運をかけたプロジェクトを任されてるんだ…」
それだけじゃない。先日ニュースになっていた母親がかつての恋人で、死んだ子供が自分の子供かもしれない…そのことが会社や取引先、ライバル会社にバレたらどうしよう…1番まずいのは妻だ…そのことで頭がいっぱいだったのだ。
絵里は先に寝室に寝に行った。純也はリビングでくつろいでいた。
スマートフォンを確認した。メールを多数受信していた。友人たちからだ。
『清香の子供、お前の子供だったんだろ?』
『父親は純也だって噂になってるけど?』
『だから清香を捨てたのか?!サイテーだな!』
『奥さん知ってるのか?』
『ちゃんと供養してやれよ。』
『お前も同罪だ!人殺し!』
純也は頭を抱えてしまった。友人を信用していればいいのか、口止め料を払うか、でも何人に?清香の友達から情報が漏れないか、など考えていた。




