ぎゅう
ひかりがお昼寝から目が覚めて起き上がるとせいらがいないことに気づいた。
「せいら…」
そう呟きながらふらふらと歩いた。
しばらく歩くとおっちゃんと一緒にいるせいらを発見した。
「せいらー。」
ひかりはせいらを呼びながら近づいていった。
せいらは涙目だった。ひかりはビックリして足を止めた。それを見たおっちゃんがせいらの背中を優しく押した。せいらはおっちゃんの顔を見上げ、涙を拭ってひかりの方へ走っていった。
「せいら、泣いてるの?痛いの?」
ひかりは心配そうにせいらの顔を覗きこんだ。せいらは首を振りながら
「悲しいの…ママともう会えないから。」
と言った。
「ママ?」
「せいらはママがぎゅうしてくれるの好きなの。温かくて、柔らかくて気持ちいいの。」
ひかりはせいらの言っていることが分からないので首をかしげた。
「ママはね『痛い、痛い』って言いながらせいらを産んでくれたの。ママがわーってなったときせいらは待ってたの。ぎゅうしてくれるの待ってたの…ママなかなかぎゅうしてくれなくて、せいらがママぎゅうしたの…そしたらママがわーってなって…」
せいらは泣き出してしまった。
「…ここにいたの。せいら、ママ大好きだったのに…ぎゅうして欲しかっただけなのに…」
おっちゃんがせいらを抱き上げた。ひかりはせいらの言ってることが全く理解できずにいた。
「ちょっと散歩しようか。ひかりも来るか?」
おっちゃんはひかりに手を差し出した。ひかりはおっちゃんと手を繋いですこしご機嫌になって歩き出した。
せいらはおっちゃんに抱かれながら泣きっぱなしだった。
「おっちゃん、抱っこ!」
ひかりがおっちゃんに抱っこをせがんだ。
おっちゃんはひかりも片腕で抱き上げた。
せいらは嗚咽をこらえながらひかりを見た。ひかりはニコっとせいらに笑いかけた。
せいらもようやく笑顔になった。
「ひかりはせいらが好きなんだな。」
おっちゃんが言った。ひかりは満面の笑みで大きく頷いた。
「せいら、お前は1人じゃないだろ?」
せいらも頷いた。また涙がこぼれた。
おっちゃんは2人をおもちゃ箱のあるところで降ろした。
ひかりはうれしそうに箱の中に手を伸ばしてブロックを手に取った。そして、せいらにブロックを手渡した。
せいらも箱からブロックを出してひかりからもらったブロックを積み上げて遊びだした。
「次はせいらか…」
おっちゃんは寂しげな顔で少し離れたところから2人を見つめていた。




