ゆめ
れんとたちが佐藤を待っている時、ひかりは夢を見ていた。
暗くて狭くて窮屈なところにひかりは逆さまの状態でいた。
手を伸ばすと柔らかい壁のようなものに当たった。
「あっ、今動いた。」
女性の声が聞こえた。
「どれどれ…あっ、動いた。」
ひかりが足を動かすと、男性の声も聞こえてきた。
「おてんばさんになるかな?」
「ねぇ、名前なんだけど、光ってどう?私たちの希望の“光”でありますようにって。」
「高橋光か…いいと思う。光ちゃん、パパだよ。」
「聞こえてるかしら?」
「頑張って生まれてくるんだ、光ちゃん。パパもママも待ってるから。一緒に手術も乗り越えよう…」
ひかりは目を覚ました。最近、よく見る夢だった。
どこか懐かしい、切ない気持ちになった。
「パパ…ママ…」
夢に出てきた単語を呟いてみたが何のことか分からなかった。
辺りをキョロキョロ見回すと、せいらがすこし離れたところで眠っていた。
ひかりはせいらの横に行き、また眠った。
せいらは寝言を言っていた。
「ママ…ママ…」
せいらはムクッと起き上がった。横にひかりが寝ているのに気がついたが、寝ぼけながらふらふらと1人で歩き出した。
しばらく歩いて床に穴を掘った。そしてじっと眺めていた。
おっちゃんが戻ってきてせいらの様子に気づいた。
「せいら…」
おっちゃんがせいらに声をかけるとせいらが泣き出した。
「ママがいないの…せいら悪い子だから…?」
おっちゃんがため息をついて、せいらの肩に手を置いた。
「せいらはいい子だよ。せいらは悪くない。ちょっと散歩でも行くか。」
そう言ってせいらの手をつないで歩き出した。
「せいらはね、ママ大好きなのに…ママ忘れてたの…」
「それは俺がせいらの記憶を封印してたからなんだよ。」
「どうして?」
おっちゃんは少し黙って言った。
「『おそら』でせいらの笑顔が見たかったから。せいらは下で悲しそうな顔をしてただろ。せいらは笑っている方がかわいいぞ。」
せいらは照れて顔がゆるんだ。
「どうしてせいらはここに来たの?」
おっちゃんは少し考えて
「せいらが…寂しいと感じてたからだよ。」
と答えた。
「みんなも?」
「あぁ、そうだ。」
「ひかりも?」
「…ひかりはちょっと違うんだが…」
せいらは分かったような分からなかったような難しい顔になった。
「ゆっくり気持ちを落ち着けて、また色々せいらに話してやるからな。」
おっちゃんは寂しげな顔でせいらに笑いかけた。




