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名も無き少女  作者:
4/7

第4話


 中に入ると、重機が沢山並んでいた。鉄の扉が閉まると真っ暗で何も見えなくなる。

「こっち、黒木くん」

 ツンツンと僕の肩をつつき、再び先導者として歩き出す。とりあえず僕は後ろを着いていく。奥へ奥へと進むと、二階へと続いてるであろう階段があった。コツリ、と百合さんのヒールが音高く響き、僕は内心ドキリとした。こんな音鳴らしたら誰かに聞こえるんじゃないかと思った。

「大丈夫だよ、誰もいないし」

 どうして無人だと知っているんだろう。わざわざそれを狙って来たならまさしくストーカー行為…

「ストーカーなんてしてない。ちゃんと調査してるの」

 見ようによっては…まぁいいや。

 一段一段上がる度に腰近くまである黒髪がふわりと揺れて、甘い香りが鼻をくすぐる。そんな百合さんの後ろ姿を追う。何処へいくんだろう。あてがあるのかな。

「百合さん何処いくつもり?」

「ここね、二階が家になってるんだ。だからそこを家宅捜索」

 ほぅ。確かに調査はしっかりしてるんだ。

「で、何を探しに来てるのか教えてくれません?」

 階段を登りきり、くるっと僕をみる。まだ二段下にいる僕に視線を合わせるように腰を低くし、顔を至近距離に持ってくる。

「秘密です」

 相変わらずの無表情で左手の人差し指を口に当てて言った。不意打ちに不覚にもドキッと、鼓動が大きく鳴った。

 百合さんは踵を返し、また進んだ。慌てて僕も着いていく。

 少し奥へ進むと扉があった。その扉がきっと家へとつながる扉なんだろう。

「入るよ」

 百合さんは僕の返答を待たず、扉をあける。かちゃり、と軽い音をして、開く扉。本気で不法侵入しちゃうんだな…。

 入ってすぐにあったのは玄関だった。不法侵入者がご丁寧に玄関から入っていいのか?

「泥棒じゃないから」

 ……関係ねぇ。

 百合さんは少しかがみ、靴を脱いだ。綺麗に並べて家にあがる。

「早く」

 渋っている僕を急かす。渋々僕も靴を脱ぐ。

 先程の工場とは違って、家のなかは明るかった。生活感溢れる家。こんなところになにを探しに来たのだろう。

 百合さんは家の至るところの引き出しや扉を開けている。だが、なにも盗むものが無いらしく、開けては閉じ、を繰り返している。荒らしている様子もないから、これなら通報されたりもしないのか、と納得。一応白手袋もしてる。ばれなきゃいいという思考らしい。


「ない」

 一通り調べ終え、一息。無表情に変わりはないんだけど、少し悲しそうに見えた。気のせいかな。

「じゃあ…帰ります?」

 色のない瞳でこちらを一瞥し、小さなため息をついた。

「そうだね。長居はよくない」

 僕らは家を後にした。







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