第2話
翌日、僕は時間通りに学校に着いた。いつもの座席に座り、鞄から本を出しHRが始まるまで読みふける。いつも通りの日がまた始まるはずだった―――
ガシャーンっっ!!!!!
「きゃぁぁぁ!!」
女子数名の叫び声。窓ガラスが割れたのだ。割れた窓側を見ると、血を流した生徒が数名。破片が刺さっているようだ。
「早く誰か先生を!」
誰かが叫び、固まっていた教室の空気がとけ、皆一斉に教室を飛び出た。
僕はそのとき、窓際に不審な影をみた。
「……だれ?」
窓際に近寄り、恐る恐る影に問い掛けた。姿は見えないが、人がいるのは確かだ。 そのとき、僕はとてつもない力に引っ張られ、教室から窓の外へ飛び出した。
「ぅわあっ!」
そのままものすごい力と速さで引きずられ、校外に連れてこられた。そして止まった。
「ちょっと!なんですか!」
僕を力任せに連れてきた人にキレぎみに言った。地べたに尻餅をついてる僕にはその人の顔が見えなかったけど、足元を見るに、女性らしい。
無言のその人に軽い怒りを覚えた僕は立ち上がって文句をつけようとした。けど。
「!」
顔を見て驚いた。なんとこの女性は、昨日肩がぶつかった女だった。
「ふぇ?なんで?」
我ながら情けない声を出した。
「あ、やっぱり君だ」 無表情にちょっと笑顔を浮かべる女。呆気にとられている僕をなめ回すように隅々まで見学し、それから汚れた制服をはらってくれた。
「なんすか?僕に何か用でも…」
「うん。ちょっとついてきてほしいんだ。黒木くん」
胸にあるネームを見て、僕の名を呼んだ。ニィっと悪そうに顔を歪める女。怪しい。
僕としては『怪しい人にはついていっちゃダメ』という教えを守る気マンマンの筈だったのに、手首を捕まれ強制的に連れ去られる。誘拐ですか?
「変なことはしないよ」
いや姉さん、すでに変な状況にもつれこもうとしてますが。
されるがままに、僕は女にある場所へ連れていかれた。