第1話
初作品となり、ぎこちない面もあると思いますが楽しんでいただけたら幸いです。
「あ、ごめんなさい」
そう言ったのは長い黒髪の女だった。
「いえ…」
僕がそう答えるより早く、女は走り去ってしまった。とても焦っているように見えた。それにしても女は足が早いみたいで、もう姿が見えなくなっていた。
僕の名前は『黒木 雄介』。とある名門公立高校に通う、成績優秀な三年生。あ、別に自慢してる訳じゃないよ。
僕の通う高校はこの辺じゃ一番レベルが高い所。制服だってそこら辺の平凡な高校のとは違って、王子様が着るような、ビシッとしたもの。歩いてるだけて皆の目は釘付け。
なんだけど。
さっきの女。あの子は最近、下校中によく見かけていた。綺麗な顔立ちをしているから、僕もついつい目がいっちゃってたんだけど。いつも真っ黒なパーカーを着ていてフードを深くかぶってる。パンツも黒だし、夏には地獄のような暑さが待っていることだろう。
話がずれた。そうじゃなくて、僕が思うに道で偶然肩と肩がぶつかったらそれは『運命の出会い』なんじゃないのか?
何故「ごめんなさい」で終わりなんだ。もっとこう、
女『あっごめんなさい』
僕『大丈夫だよ。それより君、怪我してない?』
女『えぇ…優しいんですね…』
僕『いえ、当然ですよ。それよりこれからお茶でもいかがですか』
とか……いや、この展開は古すぎる。
なんにせよ僕の淡い期待がこんなにあっさりと裏切られるとは。
まぁいい。確かに美少女ではあったけど、一目惚れなんて一時の気の迷いだ。だいたい僕は恋なんてしてる暇はない。僕は学校一頭がいいんだから。勉強一筋だ。
そんなことを考えながら家路を急ぐ僕に、翌日あんなことが起きるとは誰が予想できただろうか……。