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ショートえっち  作者: 友野久遠
第4話  ミイラ取りのララバイ
14/22

1、ファースト・エロス

全然いやらしく見えないのに、実はフェロモン系キャラである廉さん。

一方で、本編のキャラのうち、一番しっかりして見えるエムさん、実は一番激しく道を踏み外すタイプだったりします。

ふたりの出会い、意外と過去の因縁があったのです。

この章は前作から少々書き足しの形で書き換えています。

 小学校3年の頃のことって、覚えてますか?

 男の子のこと、どのくらい意識してました?

 セックスの知識ってありましたか?


 突然変なこと聞いて、ごめんなさい。

 わたし、すごいオクテだったから、普通はどうなのかなって思って。

 小学生時代で男の子を意識したの、たった1回だけなんです。

 それが、3年生の時だったんだけどなんだか印象的で。

 おかしいんです。

 その記憶はわたしの頭の中では、えっち体験の項目に入ってるんです。

 でも実際には、全然そんなんじゃないんですよ。


 夏休みの後半でした。

 友達の家に泊まりに行って、庭のテントで寝たんです。

 なんで庭にテントが出てたかと言うと、もともと、キャンプをする予定だったんです。

 それなのに、その日に台風が来ちゃって、お互いの親の休みが、都合付かなくなっちゃって。

 子供たちからはブーイングの嵐でした。


 それで、夜みんなで庭に泊まろうかって話になったんですね。

 子供は4人。

 わたしと、わたしの弟と、友達の麻衣と、麻衣のお兄さんのマコト。

 4人とも、赤ちゃんの頃からの付き合いでした。

 母親同士が親友なんです。

 住んでるのは隣町だったから同じ学校になったことはなかったけど、お誕生日パーティーだとか、冬休みイベントだとか、何かと理由をつけて家族ぐるみで騒いでました。


 ご飯が終って、お風呂を済ませてからのことです。

 タオルケット持ってテントの中で麻衣と話をしてたんです。

 そしたらいつの間にか、わたし眠ってしまったらしいんですね。

 

 はっと目をさますと、隣で男の子が寝てるんです。

 しかも、わたしのタオルケットに一緒にくるまって。

 テントの中は、わたしたちふたりだけ。 ほとんど真っ暗だったけど、玄関灯の灯りがもれてて、その男の子が知らない子だってすぐわかりました。


 弟じゃない。 マコトともちがう。

 わたしが声も出せず固まっていたらね、その子はタオルケットから首だけ出して、シーッってサインをしました。


 「麻衣ちゃん、ごめん。 ちょっとかくまって。

  誰か来たら、いないって言ってくれよ」

 ちょっとハスキーな声で、見知らぬ男の子は囁きました。

 わたしのことを、麻衣と間違えてるんです。

 たぶん、わたし達が来てることを知らずにやってきた、マコトの友達だろうと思いました。


 わたしはうなずいて、その隣で寝たふりをしました。

 なんだか気持ちが昂ぶって落ち着きません。

 マコトとなんか、もつれあってプロレスまでしてたけど、こんな気分になったことはありませんでした。


 その時テントが細く開いて、麻衣のお母さんが顔を覗かせました。

 「ポエムちゃんだけ? そこにもうひとりいるのは誰?」

 「麻衣ちゃんよ。 もう寝ちゃったみたい」

 わたしはとっさにウソをつきました。

 麻衣が家に入ってたらばれちゃうなと思いましたが、2階にいるのか、おばさんは気がつきませんでした。

 「そう。じゃあ、うちには来てないって事ね」

 「だれのこと?」

 「ううん、いいのよ」

 おばさんはそう言って、家の中に入って行きました。


 男の子がそーっと起き上がりました。

 こそこそと頭をかいて、

 「ごめん、麻衣ちゃんじゃなかったんだ。

  きみ、だれ? ポエムっていうのは、名前なの?」

 と、小声で聞いて来ました。

 

 「うん。 あのね、麻衣の友達で、泊まりに来てるの」

 「ふうん。 いいな、僕もテントで寝たい」

 そう言うと、その子はまたコロンと横になってしまいました。


 わたしはその顔を、闇の中で見つめながら動揺してました。

 もう、めちゃくちゃに取り乱してました!


 ドキドキとか、ワクワクとかじゃないんです。

 こんなこと、だめ! いけないわ! と思ったんです。

 こんなに密着して、ふたりきりで、誰にも知られてない状態でいるなんていけない。 お母さんに申し訳ないわ! とか、何故か思ったんです。

 変でしょ?

 なんか変だなと、その時はそれだけしか感じなかったんだけど。

 

 今思うとね。 罪悪感、なんです。

 初めて親に内緒で外泊しちゃった時とか、キスしちゃったときとか。

 要するに「オトコと何かあった」時に感じる、罪悪感なんですよ!


 小学校3年生の時だから、性行為の実態はしらなかった時代です。 えっちと言えば、スカートめくりとか、バストタッチとか、カラダを触ったり見たりすることだと思ってた。

 なのに隣に男の子が寝てるってだけで、親に罪悪感を持つって、ありですか?

 

 別に、特別親がうるさかったわけじゃないですよ。

 男女混合で、テントで雑魚寝させる親だもの。

 子供って怖いですよ。 わかってない様で、いっちばん深いところだけちゃんと知ってるんです。


 それがわたしの、初エロスでした。


 そして。

 二度目のエロスが、広瀬 廉でした。




 ダアン!

 突然、下駄箱が飛び上がったので、わたしは仰天しました。

 高校3年の春休み、部活を終って帰るところでした。

 鍵を戻しに行っていたので、わたしは一人になっていました。


 靴を入れようとした途端でした。

 向こうから誰かがぶつかったのです。

 思わず耳を澄まして、裏側に誰がいるのか確かめようとしました。


 「危ないだろサラちゃん!

  こっちは両手が塞がってるんだ‥‥」

 聞いたことのあるような、ないような男子の声です。

 「だって‥‥」

 もうひとりは女の子で、こっちは泣き声でした。

 「あの先生、おかしいです。

  須藤に負けた負けたって、何回言えば気が済むんですか?

  あれって絶対、上垣さんに聞かせようと思ってやってますよね?

  あたしって、なんなんですか? ウエさんの踏み台?」


 「あの人、気分でモノ言うから。

  ……おいおい、僕は汗だくで汚いぞ。 そんなに」

 「そんなのどうでもいいです。

  もぉッ! ちゃんと抱いてください、イヤなんですか?」

 「こわいな」


 なんか、危ないことになってる。

 わたしは出るに出られず、しばらくそこで待ちました。

 でも、それきり変化も物音もないので、そーっと靴を履きました。


 忍び足で出入り口に向かう途中、やっぱり、振り向いて見てしまいました。

 予想に反した情景がそこにありました。

 下駄箱の裏で抱き合っているのは、袴をはいた人影でした。

 剣道部の部員でしょう。


 女の子の顔は、伏せられて見えませんでした。

 男子の方は、私の姿を見てそっと片手を上げ、拝むようにして何かのサインをしたようでした。

 それが、広瀬 廉でした。



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