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魔王ゼノンと勇者③

一気に敵意が無くなった魔王ゼノンを見て、勇者が問いかけた。



「なぜ、僕を残したんですか?」



「お前とならちゃんと話しができると思ったからな。」



ゼノンが勇者を残した理由はただ一つ。この勇者はまだ自分の考えを持てていないだけの若者だったからだ。



そして彼自身恐らく、その機会があればしっかりと考えて行動を起こすだろうと感じたからだ。




「一つ聞いてもいいですか?」



「いいぞ。答えられる範囲で答えてやろう。」



勇者は既に聖剣を腰元に差していた。そして自身が持つ最大の疑問を魔王ゼノンに投げかけた。



「魔王軍は本当に人に危害を加える気はないのですね?」




「あぁ。先程も言ったが俺達は奪われた土地を取り戻しているだけだ。その際、街や村に住んでいる者たちは極力傷つけないようにしている。」




魔王軍には鉄の掟があった。それが『無抵抗な者を傷つけない』である。



武器を持って反抗してくる者に対しては、無力化させるために力を振るうが、基本的には穏便に物事を進めていたのだった。




「そうだったんですね…なら今まで僕が聞いていたのは全くのデタラメだったということか。」




勇者は口元に手を当て考え込むように独り言を呟く。




「ありがとうございます!おかげで色々腑に落ちました。」




お礼を言う勇者の表情は、来た時とは別人の笑顔であった。



その表情を見たゼノンは少し呆気にとられた。




「魔王に礼を言う勇者なんて聞いたことないな。」



「あははは、確かにそうですね。でも僕は人も魔族も争わずに共存できるなら、その方が良いって思いますから。」



そう語る勇者の姿と、少し昔に笑顔で語っていた母の姿が重なって見えた。




「そういえばお前の名前を聞いてなかったな。」




「ほんとですね。僕はアーサーと言います。」




「勇者アーサーか。これからどうするんだ?」



ゼノンがこれからのことを聞くとアーサーは少し困ったような表情を浮かべた。




「本当なら魔王を討伐して王国に戻る予定だったんですが、今となっては王国には不信感の方が大きいのでこのまま戻るのはなんというか……」




「戻りたくないんだな?」




「はい。」




魔王討伐に成功していないなら戻ったとしても、また討伐に行かされるだけだろう。




「多分勇者パーティーもゼノンさんに瞬殺されたから、自然解消になりそうですし。」




「確かに、奴らがここに来ることはもうなさそうだな。」




考えた末ゼノンはアーサーに一つの案を出した。




「では王国側から帰還命令が出るまで城下町に住むか?」




「はい!?」




魔王ゼノンの提案は、魔族や魔物の住む城下町での滞在であった。




「ちょ、ちょっと待ってください!確かに魔族の方々の暮らしとか知れたらいいなと思ってましたけど、さすがに一緒に暮らすのはダメでしょう!?」



「まぁ、人が普通に暮らすとなると敵対する奴は出てくるだろうな。」




「そうでしょう?普通に暮らしたらそうなります……普通に暮らしたらですか?」




ゼノンの返答に引っかかったアーサーは聞き返した。




「お前のことは、俺の客人として招いたということにすれば何も問題ない。好きなだけ滞在して、その目で俺達のことを知ってくれればいいさ。」




「それならありがたいですけど、本当に大丈夫ですか?」




「大丈夫大丈夫。たぶんな…」




後半声が小さくなったので、アーサーにははっきり聞こえなかったが、ここまで来たらゼノンに任せるしかないので全てを任せた。




結果としてアーサーは、魔王ゼノンの来客として城下町で暮らせるようになった。




アーサーの知らないところで、反対派の魔族と魔王ゼノンの大乱闘があったという噂が街中に流れたが、月が変わる頃には忘れる者が殆どだった。

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