魔王ゼノンと勇者①
勇者召喚の一報は魔族領にもすぐに届いた。
『今後の戦争がさらに激しくなるのではないか?』
という不安に駆られる人々がほとんどだったが、魔王ゼノンは違った。
かつての自分と同じく勇者に祭られた人物のことを憂いていた。
「勇者が召喚されたとしても我々のやることは変わらん。誰が来ても我が相手をするから、お前たちは街の支援を任せたぞ。」
「「「「はっ!!」」」」
四天王の面々はそれぞれの担当している街へと向かった。
本来ならゼノンも街に降りて人々と話をしながら作業をしたかったのだが、そろそろ王国から旅立った勇者パーティーが魔王城に到着するとの連絡を受けていたので一人残ることにした。
周りの魔族からは一人は危険だと反対されたが、ゼノンに勝てるような相手がいないという意見と、残ったとしても戦いの邪魔になるのなら他の事に手を回す方が良いという意見があったので、ゼノンに勇者パーティーを任せたのだ。
なので現在魔王城にいるのはゼノンだけであった。
そして勇者パーティーはその日のうちにやってきた。
勇者は若い男性だった。幼さの残る面影から成人はしていないと推測できた。
その両隣に居るのは大きな剣を装備してる男と、盾を装備している男性。
後ろには杖を装備してる女性が二人。黒と白のローブをそれぞれ羽織っているので、魔法使いと回復役のヒーラーであろう。
前衛三名、後衛二名のパーティーはそれぞれがかなりの実力者であることはすぐに分かった。魔王ゼノンと向かい合っている今も一切の油断はない。
「お前が魔王か?」
話しかけたのは勇者の男。装備は金属製の全身フル装備で、腰には大きな剣が差さっている。
(あれは聖剣か?いや、聖剣は母が討たれた時に呪いで破壊されたと情報があったか……)
全魔王は首を落とされた瞬間、魔王の持つ特別な力である【武器破壊の呪い】を聖剣にかけて破壊していたのだ。
魔力は封じられていたが、【武器破壊の呪い】は魔法ではないので最後に発動することができたのだ。
「まぁ俺しかこの城に居ないからな。お察しの通り俺が魔王ゼノンだ。」
「なんか想像してた魔王と違うな。」
ゼノンのやる気の感じられない自己紹介を受けて勇者はぽつりと呟いた。
「いやいや、お前達が何を想像してたか知らんが、家に勝手に入ってきたヤツらに対して、丁寧な対応なんかするわけないだろ?」
やる気の出ないゼノンはあくび混じりに答える。
「ふざけないで!あんたのせいでどれだけの人が苦しめられたと思ってんの!?」
いきなり大声で怒ったのは黒いローブの魔法使いだった。
その瞬間ゼノンの瞳に怒気が混じる
「うるせぇな...そんな大声出さなくても聞こえている。」
頭をガシガシ掻きながらゼノンは魔法使いを睨んだ。
「で?俺がお前らを苦しめていると?」
「そうよ!あんた達が攻めてきたせいで、罪のない人達が大勢死んだわ!」
魔法使いの発言を聞きゼノンは鼻で笑った。
「それはお互い様だろ?そもそも俺達は、自分達の土地を返してもらう為に戦っただけだからな。元を辿ればお前達が自分達の領土を広げようと、無抵抗な魔族を攻撃してきたのが原因だろ?」
ゼノンがそう言うと魔法使いは言葉を返せなかった。
「え?どういう事?」
そう答えたのは勇者であった。




