魔族の子ゼノン
勇者レオンハートとして処刑された後、気づくと彼は何処かは分からない暗いお城のような場所にいた。
不思議なことに前世のレオンハートとして生きた記憶が全て残っていた。
それだけではない
自分の手を見るとまだ子供の身体だが、身体能力も以前と変わらない勇者レオンハートだった。
そしてその時に使っていた聖魔法も使え、更には剣術までもが全く同じレベルで使えていたのだ。
ある日彼は城にある鏡を見た。そこに映るのは6歳ほどの少年。
褐色の肌に見覚えのない角が頭から生えていた。
頭からなにか生えているなという感覚はあったが、きちんと見たのは初めてだった。
そしてここでようやく確信する。
「俺は魔族に生まれ変わったのか?」
鏡に映る自分の姿が生前争っていた魔族の姿そのものだった。
(皮肉なものだな)
内心卑屈になりかけたが、レオンハートとしての最後を思い出した時その気持ちは一切無くなった。
「人は裏切る、保身の為に命懸けで戦った者さえ見捨てる醜い生き物だった。なら今回は魔族として人間を相手にするのもまた一興か……」
ここから魔族ゼノスとしての人生が始まった。
この城で過ごすこと数日、いくつか分かったことがあった。
まずこの城には数十人の魔族が暮らしており、城の外には大きな街があること。
そこにはたくさんの魔族が暮らしており、前世のような勇者が攻めてくるイベントや人間側との争いはあまりない事。
魔族とは知識や自分の意思を持つ魔物であり、それ以外は攻撃性の高い魔物と呼ばれる存在であること。
ちなみに魔族は全員人型であった。
そして一番重要なことはここが魔王城であるということであった。
中には四天王と呼ばれる魔族の中でも実力の飛び抜けた四名の配下がおり、更にそのトップには当然魔王と呼ばれる存在がいる。
そしてこの魔王が実は…
「さぁゼノン!儂と遊ぶのじゃ!!」
「嫌だよ母様!!」
魔界最強の女傑であり、ゼノンの母であった。
そう。前世で世界を救い世界に裏切られた勇者レオンハートは、異世界で魔王の子供に転生したのだった。
魔王の子供として転生してからは毎日が親子のじゃれ合いという名の殺し合いの日々だった。
魔族の再生能力は凄まじく生きてさえいれば蘇る。再生息とば魔族ごとで異なるがゼノンはずば抜けた再生能力と速度を携えていた。
そんな子供に容赦などするはずない魔王との遊びは、勇者として生きた前世が可愛く思えるほどだった。
前世の勇者としての剣技と聖魔法、そしてゼノンとしての魔法を全て駆使して戦っても歯が立たない。
死なないようにするのに精一杯だった。
初めて聖魔法を使った時、魔王は自分の子が勇者の魔法を使ったことに驚いたが
「まぁ、面白いからいいのじゃ!!」
と周りがドン引きするほど軽いノリでサラッと流した。
魔王の子ゼノンとして転生して50年が経つ頃には見た目は成人した姿となっていた。
人として50歳を過ぎていたら孫がいてもおかしくない年齢だが、魔族の中ではまだまだ青年。
この頃には四天王のトップとして君臨していた。
魔王の子として産まれ鍛錬した結果、莫大な魔力量、天才的な魔力コントロール、全ての魔法に対する知識、そしてそれを扱える天才的な才能。
結果ゼノンは母である魔王を既に超えて、歴代最強の魔族となっていた。
しかし面倒事には巻き込まれたくない性分と現場主義の性格な為、魔王にはならず四天王として働いていた。




