表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/17

魔族領で暮らす勇者③

魔王城の一室にある部屋。



なんの飾り気もない机と椅子しか置いていない部屋で、黙々と報告書を見ては眉間に皺を寄せる人物がいる。



やる気の無い表情で仕事をするこの男が、世間に恐れられている魔王だ。




「魔王様、もしかしてそれって。」




「あ?お前には関係の無いことだ。」




「ひぃ!す、すいません!」




部屋を掃除しに来た魔族は気になりゼノンに話しかけたのだが、あからさまに不機嫌なゼノンに恐怖心を抱いた。



情けない声をあげると同時に慌てて部屋から出ていった!




(チッ……怖いなら話しかけんじゃねぇよ!)




その姿を見て更に苛つくゼノンだったが、手元にある報告書の内容を改めて確認する。




『王国は勇者だけが帰ってこないことに疑問を抱き、魔王軍に殺されたものと断定。それに伴い報復のために、王国の戦力の八割を投じて全面戦争の意向。更に新たな勇者召喚の準備を進める。』




早い話が、勇者アーサーが殺されたと騒ぎ立てて魔族領に攻め込んでくるということであった。




「まさかこんな早く動くとはな……」




ゼノンは予想以上に早く動きだした戦況に対して、今後どう対応するか脳内で整理をし始める。




(いやぁ、どう考えてもマイナスにしかならないよなぁ……はぁ、めんどくさ。)




何十通りのパターンをイメージしてみたが、それらの行き着く先は全てバットエンド。血で血を洗うような結末しか見えてこなかった。




(いや、一つだけあるな。)




ゼノンが脳内で弾き出した唯一の策。しかしそれを決行するためには幾つかクリアする事柄があった。




「とりあえず最悪の事態を回避するために根回しだけしとくか。」




今後の予定を立て椅子から立ち上がろうとした時、勢いよく部屋の扉が開け放たれた。




「ゼノン暇か?」




「また来たのかアーサー。」




扉の向こうには酒瓶を手に持ったアーサーの姿があった。




「ったく、お前ぐらいだぞ?魔王の部屋に酒持って遊びに来るやつなんて。」




「なんだ?友達がいないのか?」




「そういうことじゃない。」




素の表情で答えるアーサーを見て、ゼノンは苦笑いするしかできなかった。



諦めたようにゼノンは机の上の書類を引き出しに戻し、魔法で椅子を一脚とコップを二つ机に出した。




「座れよ。どうせ飲み終わるまで帰らないんだろ?」




「話が早くて助かるよ。」




アーサーは出された椅子に座ると机に『魔王殺し』を静かに置いた。




「お前嫌味か?」




「そんなの気にしないでしょ?」




二人は笑いながら酒を酌み交す。魔王と勇者だがよく酒を飲みながら話をしていた。



傍から見ればおかしな光景かもしれないが、この時間は二人にとってかけがえのないものだった。




「そういえば何かあったの?」




「何だ急に?」




アーサーの質問に心当たりがないゼノンだったが、アーサーは部屋から逃げるように出てきた魔族を見たと話した。




「あぁ、あいつが勝手に俺の事を怖がっただけだ。別に何も無いよ。」




「嘘だね。ゼノンとはまだ浅い付き合いかもしれないけど、君は嘘をつく時に視線を少し逸らす癖がある。今ちょっとだけ逸れたよ?」




(こいつ変なとこで鋭いな。)




ゼノンは今まで指摘されたことない自身の癖驚いたが、王国軍の動きをアーサーに伝えるべきか悩んだ。




(こいつの事だから知ったら何とかしようと動くだろうな。)




「別に何も無い。」




「…………。」




「あー!わーったよ!!俺の負けだ。」




数秒の沈黙の後、根負けしたゼノンはアーサーに例の報告書を見せた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ