勇者レオンハートの最期
これは数奇な運命を辿る事となった始まりの物語。
彼の名前はレオンハート。ごく普通の村で生まれた彼は農業を生業とする家族の次男だった。
ある時村がゴブリンに襲われた際、近くにあった木の棒を掴むと身体中を光が纏った。
それは伝説の勇者が使えるとされていた聖魔法で、瞬く間にゴブリンを倒した。
この出来事は直ちに王都ベルマーデンにいる王様の元まで伝わることになり、レオンハートは王城に招集された。
そこで魔物が活性化しているのは魔王が復活したためで、このままだと世界が滅びる危機だと伝えられたレオンハートは魔王討伐の旅に。
旅の途中で仲間になった戦士、僧侶、魔法使い、シーフと共に10年の時を経て魔王城に。
魔王四天王と呼ばれる魔族とは激戦で一人、また一人と仲間が倒れていく中ついに魔王の元へ辿り着く。
「これで終わりだーーー!!!」
レオンハートが最後の力を振り絞り繰り出した聖剣の一撃は魔王に届き、三日三晩にも渡る激闘は勇者レオンハートの勝利。
すなわち人類の勝利という形で幕を閉じた。
しかしその代償は大き過ぎた。
仲間は全滅で生き残ったのはレオンハートのみ。魔王討伐の達成感より仲間を失った喪失感の方が大きく、失意の中王都に戻る。
しかしそこで待ち受けていたのは魔王討伐のパレードでも、平和を祝したパーティーでもなかった。
王都の門の前に着いたレオンハートは王族直属の騎士団に捕えられた。
普段なら軽くあしらえるのだが、失意の中の帰還だったので抵抗する気も起きなかった。
王城まで連行されるとそのまま王の御前まで連れていかれた。
「残念だ……勇者レオンハート。いや大罪人レオンハートよ。」
「は?僕が大罪人……どうして?」
レオンハートは訳が分からなかった。自分達は世界を守るために文字通り命を懸けて戦った。
その結果が大罪人??
「しらばっくれるな!!お前は魔王討伐という名声の為に数々の村や街で悪事を働き、最後には仲間達を見殺しにしたではないか!!そんなもの勇者ではなく悪魔の所業ではないか!?」
大声を張り上げたのは騎士団長の男だ。
レオンハートは知っていた。王都の騎士団が自らのストレスを発散する為に王都から離れた村や街を襲っていた事を。
そしてその事件を自分達の力で解決したように見せかけて褒美を貰っていたことを。
もっともレオンハートがこの事実に気づいたのは、魔王討伐後の王都に戻る途中だった。
証拠を集めて王に突き出し断罪するつもりだったのだ。
(こいつら罪を擦り付けようと!?)
レオンハートが気づいた時には遅すぎた。
「更には魔王を倒したその力を使いこの国を乗っ取ろうとしてるとは……余はお主を信じていたのだかな。」
「待ってください王様!?僕はそんなつもり全く……」
「ええい!見苦しいぞ大罪人レオンハート!!お前は明日の朝に処刑されることが決まっている!こいつを牢に連れていけ!」
騎士団長の一言で周りにいた騎士達がレオンハートを取り囲み乱雑に立ち上がらせた。
その際、魔力封じの腕輪をつけられたレオンハートは何の抵抗もできなくなってしまった。
その後の話は予め決まっていたかのようにスムーズに進んでいった。
朝になった瞬間牢から連れ出されたレオンハートは、王都の広場に設置された処刑台に連れて行かれた。
広場に着くと既に民衆が集まっておりお祭り騒ぎの状態だった。
「これより大罪人レオンハートの処刑を執行する!!」
騎士団長の口からは、身に覚えのない罪状が何十個と出てきた。
(全部お前らのやった事じゃないか……)
しかし、そんな事実を知らない民衆からはレオンハートを軽蔑する言葉が次々と出てくる。
そしてその声は処刑を望む声に変わっていった。
「残念だなレオンハート。世界を救ったのにこんな仕打ちとは……無様だなぁ!!」
騎士団長は高笑いしながらレオンハートを磔台に固定する。
力の無い目でレオンハートは最後に目の前の光景を焼き付ける。
(僕は……俺達はこんなヤツらの為に命をかけたのか...)
「最期に言い残すことはあるか?」
騎士団長がニヤリとしながら問いかける。
レオンハートは騎士団長の頬に唾を吐きかけた。
「へっ、全員地獄に落ちやがれ……」
「殺れええ!!?!」
騎士団長のその言葉を最後にレオンハートの意識は途絶えた。




