東條の贈り物(現代/同期4人)
「わあ、相変わらず煌びやかだね〜。玲、今年は鈴蘭?」
「そうみたい。……わ、すごい。これ刺繍だ。」
年末に届いた贈り物を、楽と玲がきゃっきゃと楽しげに広げていく。
一見すれば女子の集いのような様子を少し離れたところで見ながら、彰良は苦笑気味の清治と顔を見合わせて溜息を吐き出した。
毎年、この時期になると東條から着物が届く。東條家への新年の挨拶に合わせて、美しい着流しと羽織、帯など一式が届くのだ。
それも東條家で暮らしいていた玲だけでなく、一緒に年末を過ごすことが恒例となっている彰良や清治、楽の分まで。
そのせいで豪華な着物が毎年増えて彰良としてはありがた迷惑に他ならない。
しかし東條の選ぶ品はどれも美しく、特に玲によく似合っているため拒否もできないというのが本音だ。
「彰良。お前のは濃紺だよ。羽織は鉄灰色。ふふ、水模様が綺麗でよく似合うね。」
玲が彰良の分を持ってきて、軽く合わせた。
まるで自分のことのように楽しげに笑う様子が彰良の心拍数を上げていく。そんな風に言われて嬉しくないわけがない。
「清治のは若葉色だよ〜。この羽織、めっちゃカッコいいね。淡い灰茶色で能面と波紋模様なんて。こういうのギャップが合っていいと思う!ボクのも見て。橙色に、星と雪の結晶が金糸で織り込まれてんの。可愛くない?」
「いいね、楽。明るい感じがよく似合ってるよ。僕、能面は少し恥ずかしいな。」
清治も楽に示された自分の分を広げて、はにかむように笑った。
そんな二人をよそに、彰良の視線は玲の方に向けられる。その視線に気がついたのか、玲は自分の分を取り出すと彰良の目の前で合わせてくれた。
それは非常に美しい装いだった。白地に控えめな鈴蘭の刺繍が袖や裾に配されている。
袖の形状は伝統的な男性用よりやや広めで玲の中性的な容姿に配慮したのだろう。鈴蘭の形をした銀の帯留めも可愛らしい。
対して、藍ねず色の氷の亀裂模様と、小さく控えめにデザインされた雪の結晶模様が散りばめられた墨染の羽織が淡い印象を引き締めている。羽織の背筋の銀糸も玲の凛とした佇まいに映えて美しい。
彰良は漏れそうになる息を堪えて、小さく呟いた。
「……似合うな。」
「ふふ、ありがとう。」
柔らかな笑顔に、また心臓が跳ねた。
毎年、こうして玲の美しい装いを見るのは彰良の楽しみであり、少しばかり面白くない気持ちもある。
毎年玲に違う花模様の着物を送ってくる東條。桜、藤、牡丹など、どれも玲に似合う花だ。
彼の言い分だと、東條家に挨拶に来るのに相応しい装いをしろ、というものらしいが本当は彼が弟分に何かしたいと思って贈るのだと玲以外は知っている。
だからこそ、玲の装いが一番美しく彼に映えるのだ。
しかしそれは、彰良の対抗心も擽っていく。彰良だって、玲に贈りたい着物があるのだから。
ーー玲には睡蓮が似合う。
だから、何としても来年こそは。
彰良は密かに決意した思いを悟られないように、小さく息を吐き出した。
皆様、明けましておめでとうございます(*´∇`*)
ここまで読んでいただきありがとうございました。
ハグレモノ番外編第八話はいかがでしたでしょうか?
年始なので、少し情緒寄りのお話にしました!
次回の短編とも地続きなので是非続けて読んでいただけたらと思います。
年末年始いかがだったでしょうか?
自分は元旦に初詣に行ったら二時間も並んでびっくりしました!
次回は1/14の19:30頃に投稿予定です。
今年もどうぞよろしくお願いいたします❣️
本編は土曜日19:30頃になりますので、そちらも良かったらよろしくお願いします❣️




