クリームシチュー(現代/清治、玲)
「清治、今日遅くなる?一緒にご飯食べない?」
本格的な冬に入り、雪も目立つようになった夜。
玲からの滅多にない誘いに、清治は一も二もなく頷いた。
玲がこうして誰かを誘うことは珍しい。
しかも食事なんて。もしかしたら彰良や楽も一緒だろうか。
浮き足立つ心を抑えながら早々に仕事を終わらせ、定時も少し過ぎた頃。
同じように早めに仕事を切り上げた玲と連れ立って、繁華街に繰り出した。
空は灰色を塗り固めたように動きがなく、雪だけが雲を切り落としたように落ちてきている。
灰色の街を玲と二人で話をしながら歩いた。
最近の任務や、後輩たちのこと、最近の楽しかったこと。隊長と隊員ではなく、気兼ねない友人として。
玲のチャコールグレーのコートに雪が降り積もっていく。遠くからクリスマスソングが響くのが季節の移ろいを感じさせた。
ーーまた、一年が終わる。
今年は残夏たちが入って、色んなことがあった。楽しくて、大変で、それでも暖かい日々。
ひとつひとつを思い出していると、明るいイルミネーションを抜けた先の路地に出る。
少し大通りを外れた静かな場所に、そのレストランはひっそりと建っていた。
カラン、と古い鐘の音が鳴って、厚い木の扉が開く。
漏れ出た灯りは橙色で、清治は寒さのせいで知らず詰めていた息をほっと吐き出した。
「いらっしゃいませ。」
「二人ーー、奥の席空いてますか?」
「はい。どうぞ、お好きな席へ。」
清潔感のある老婦人に出迎えられて、玲が前を歩く。その背について、奥まで行くと暖炉の前の温かいボックス席に玲が座った。
落ち着いたクラシックと、窓の外に広がる雪景色。
店内はあまり広くなく、客も常連ばかりのようで空席が目立っていた。
「ここ、俺のお気に入り。シチューが美味しいよ。」
「じゃあ、シチューにしようかな。……あ、エビフライ……。」
「ふふ、二個頼んじゃえ。」
迷う清治に、玲がくすくすと笑う。
その柔らかな音に、なんだか胸が温かくなって清治は結局二つとも注文してしまった。
暫くすれば、クリームシチューとエビフライ、セットのサラダとパンが届く。
「わ、美味しそう……!」
「ね。」
白い湯気が立つのに目を細めながら、清治はそっとスプーンをクリームに浸した。
ひと口含めば、生クリームの甘い味と野菜の旨みが舌に広がる。
美食というよりも家庭的でほっとする味だった。
「美味しい……。」
「でしょ?俺もここのだけ、たまに食べに来るんだ。」
「そうなんだね。」
玲のお気に入りのレストラン。
なんだか分かる気がする。
清治は小さく笑うと、もうひと口シチューを口に運んだ。
「美味しかったね。」
「うん。身体も温まったし……ちょっと食べ過ぎちゃったけど……。」
エビフライとシチューのセットは少し多かったかもしれない。
お腹をさする清治に玲がまた楽しげに笑う。
こっちの心まで暖かくするような笑顔だ。
「ふふ、気に入ってくれて良かった。誰かを連れて行ったの初めてなんだ。」
「え?そうなの?」
「うん。……シチュー、なんだか清治の顔が浮かんだから。」
玲が口もとに人差し指を当てる。
内緒ね、と微笑まれて、目に眩しかった。
相変わらず雪は降り積もり、大通りに足を向ければ喧騒が近づいてくる。
ーーまた、来ようかな……。
清治はマフラーに顔を埋めると、緩みそうになる口元を隠した。
読んでいただきありがとうございます。
ハグレモノ番外編第六話はいかがでしたでしょうか?
最近すごく寒いですねʕ⁎̯͡⁎ʔ༄❄️
そんな日々を少しだけ暖かくなるような日常を書けていたら嬉しいです。
次回は土曜日19:30頃に本編投稿予定です。
よろしくお願いします❣️




