幼馴染の距離感(高専時代/彰良、玲)
その日彰良は、少しだけ落ち込んでいた。
というのも、珍しく朝から遅刻し朝食を食べられず、座学では当てられた問題が答えられない。
昼はお気に入りのAセットが売り切れで、午後からの実技では怪我をしてしまった。
今日は本当についていない。
だから日課の誰かの部屋に集まって過ごす、という気にもなれず部屋に閉じこもっている。
ーーこういう日もある……。
頭では分かっていても、どうしようもなく気落ちはするのだ。
そんな時、彰良の部屋のドアがノックされた。
こんな時間に誰だよ、と少しだけ億劫に思いながらドアを開ける。
そこには就寝姿の玲がカーディガンを羽織って立っていた。手には湯気を立てるマグカップが二つ。
「……玲。」
「彰良、入れてくれる?」
彰良は玲が差し出してくるマグカップを受け取ってから玲を部屋に入れた。
玲は特に喋ることなく、彰良のベッドに上って寛ぐとちびちびとマグカップの中身に口をつける。
彰良はそんな玲に文句を言う気にもなれず、息を吐き出してベッドの淵に腰掛けた。
マグカップの中身はココア。甘くて少しだけスパイシーな香りがする。
ひと口飲めば、胸が暖かくなるような感じがした。
彰良がベッドに腰掛けると、玲は彰良に近づいてきた。
彰良の背中に自分の背中をくっつけて体重を掛けてくる。玲の体重は軽くて、彰良には負担にもならない。
そのままくっ付いているところから身体が暖かくなってくる。
彰良も玲も言葉を口にしない。
それでも穏やかな時間がゆっくりと流れていく。
彰良はその心地よさに、もうひと口、ココアを口にした。
「……どうすんだ、これ……。」
彰良のベッドの真ん中で丸くなって眠っている玲に彰良は溜息を吐き出す。
彰良が心地よいと感じた温度は玲にとっても心地よいものだったらしい。
一度眠ればなかなか起きない幼馴染。
彰良は玲を起こすことを諦めて、その痩身にタオルケットを掛けてやった。
そして自分は床に寝転ぶ。
床板は固かったけれど、玲の小さな寝息を聞けば、どこか安心する。
濃い睡魔の気配に彰良はそっと目を閉じた。
きっと、明日はいい日になる。
読んでいただきありがとうございます。
ハグレモノ番外編第四話はいかがでしたでしょうか?
幼馴染二人の空気感が伝わっていれば嬉しいです❣️
次回は土曜日19:30頃に本編投稿予定です。
エピソード7はほんの少しだけ残夏が玲の秘密に近づきます。
よろしくお願いします❣️




