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押してはいけないボタン(高専時代/同期4人)

 昼休みももうすぐ終わりという中。

(らく)たち四人は火災報知器の前で難しい顔をして立ち止まっていた。


「……このボタン、押しちゃいけないじゃん?(れい)、押したことある?」


「逆になんで俺に聞くの?」


「押したことありそう。」


楽の問いかけに不満そうに返す玲へ、玲以外の全員の声が重なる。

それに玲は溜息を吐き出した。


「流石にないけど……まあ、押してみたいよね。人生一回くらい。」


「だよね!」


「ちょっと待て。マジで押すのか?タケセンに怒られるぞ。」


彰良(あきら)が言う、タケセンこと武田先生は楽たちのクラス担任だ。

最近どうもストレスで髪が薄くなってきており、ちょっとした可愛らしいイタズラにいつも物凄く怒る。

でもこういうやっちゃダメってものを目の前に持ってこられるとやりたくなるんだよね。


「僕も……やめといた方がいいと思う……。」


「?清治(きよはる)は押したくないの?」


「いや、それは……ちょっとは気になるけど……。」


玲の心底不思議そうな、それでいて甘い誘惑に、清治も心が揺れ始めたようだ。

相変わらず彰良は仏頂面だが、本気で止めることもしない。これはもう、そういう事だ。


「……じゃあさ、ジャンケンで負けた人が押すっていうのはどう?」


そして切っ掛けという名の爆弾を放り込んだ玲に、最初に食いついたのは彰良だった。


「怒られる時は全体責任だろーな?」


「当たり前じゃん!」


「まあ……それなら。」


続けて楽も声を上げ、清治が渋々頷く。その様子に玲はにっこりと笑みを浮かべた。


「ふふ、じゃあジャンケンしようか。」


玲の合図で各々が思う手を出す。結果は、


「え、え、僕……!?」


うん、こういう時は必ずこうなるんだよね。

楽は清治の肩を軽く叩いて笑いかけた。彰良も腕を組んで見学の構えになっている。


「やったじゃん清治〜!ボクらの期待を背負ってるよ!」


「任せた。」


清治は見事にパーで負けたが、そのまま人差し指だけを残して拳を握り締めた。

覚悟を決めたように、恐る恐るボタンに手を伸ばしてーー。


次の瞬間に鳴り響いた、けたたましいベルの音にその場の全員が1センチくらい浮き上がった。


「へえ、こんな感じなんだ。スプリンクラーとかでないの?……あ、防火扉閉まり出した。」


「え、え、どうしよう!!?これどうやって止めるの!!?」


「ボクも分かんない!!!」


物珍しげな玲と、パニックになりかけている清治。

楽もちょっとびびっている。まさかこんなに大事(おおごと)になるなんて。


「……あ、やべーぞ。タケセン来た。」


その言葉に、全員が彰良の視線の先に顔を向けた。

そこには般若(はんにゃ)の形相をした武田がこちらに向かって走ってきていた。


「まあああたお前らかあああ!!!!亜月(あづき)!!三島(みしま)!!北郷(ほんごう)!!西廣(にしひろ)!!」


あまりの声量に、本能的にまずいと悟る。

顔から血の気が引くとはこの事だ。


「ど、どうする!?どうしたらいいの!?」


「あ、玲が逃げた!!」


「俺らも逃げるぞ。」


視界の端でいの一番に走り出した玲を追い、楽も駆け出そうとした。


しかし。


「ちょっと待って置いてかないで!!!」


清治の声が響いた途端、楽の身体が床に縫い付けられる。


こいつ、やりやがった。


「ちょ、き、清治……!!緊縛術式やめて!!」


「おい楽!!お前も俺の腕離せよ!!」


「絶対離さない!!!地獄まで道連れだよ!!!!」


清治の緊縛術式で動けなくなった楽は、彰良の腕を掴む。

こうなったら道連れだ。死んでも離さない。

そして人を術式で縛ったくせに、自分は逃げようと走っていく清治。その腕は彰良ががっちりと捕まえた。


 誰ひとり逃げられない道連れだらけの地獄絵図。

もちろん武田に呆気なく捕まり、一人逃げおおせた玲は、屋上でサボろうとしていたところを無事連行されてきた。そして。


「なんでお前らは今どき小学生でもやらん悪戯(いたずら)をするんだ!!!」


「はい。楽くんが最初に押したいって言い出しました。」


「えー!ボクなの!?はい、先生!それを言うなら清治くんもやりたいって言ってました!てかあいつが実行犯です!!」


「え!?全体責任って言ったよね!?彰良言ったよね!!?」


「俺は悪くありません。1番悪いのは亜月くんです。亜月くんが誘導してました。」


「は?」


「あ?」


「お前たちいい加減にせんか!!!!」


お互い売り合いへし合い、武田の怒鳴り声のもと、楽たちは一週間の罰掃除を言い付けられたのだった。




【10年後、組織内廊下】


「亜月隊長。この書類について……、」

「三島副隊長!次の訓練ですがーー、」

「北郷さーん。見てくださいこれ!」

「西廣さん。これもお願いできますか?」


武田(あいつら、大人になったんだな……う、歳のせいか、涙が……!)


読んでいただきありがとうございます。

ハグレモノ番外編第四話はいかがでしたでしょうか?


今回は本編のエピソード6-1で触れられていた、玲たちの高専時代のエピソードになります。

こんな事やってたんだな、と楽しんでいただけていたら嬉しいです!


次回は土曜日19:30頃に本編投稿予定です。

柱が倒れてくるのに巻き込まれた残夏たちはどうなってしまうのか。

ぜひよろしくお願いいたします。

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