喧嘩(高専時代/同期4人)
「あーあーあー、やばいってこれ……。」
廊下の窓の外を眺めながら、楽は溜息を吐き出す。
そこには見事に抉れたグラウンドと、グラウンドの真ん中な正座させられ、自身の祖父であり、2番隊隊長でもある北郷喜一郎に睨まれる友人二人の姿があった。
「これは酷いね……。」
窓枠に肘をついて眺める楽の隣で、清治が苦笑する。
表情には疲れが滲んでいて、楽はもう一度溜息を吐き出した。
事の発端は大したことではない。
小テストの成績で、彰良が赤点を取り玲がそれを揶揄った。
ここまではいつもの流れだが、よっぽど悔しかったのだろう。彰良が今日はその揶揄いを、喧嘩として買ってしまった。
いつもなら「うるせー!」とか「バカ!」とかそんな語彙の少ない罵倒だったのに、今日はよりにもよって玲の事を「チビ」と言ったのだ。
玲は華奢で、楽たちよりもひと回り身体が小さい。特に背で言えば、彰良とは頭半分も差がある。
それを密かに気にしているのを楽たちも知っていた。
普段は理性がある玲も、彰良に何度も言われればそれはキレる。
取っ組み合いの喧嘩の末、彼らは武器まで持ち出し、霊力も使用して、グラウンドにバカでかい穴を開けてしまったのだ。
もし喜一郎が止めなければ、きっと校舎も吹き飛んでいたことだろう。
「北郷先生がいて良かったね。」
「あいつらのせいで、おじいちゃん、非常勤だからね〜。」
清治の言葉に楽は肩をすくめる。
実は玲たちの喧嘩はこれが初めてではない。ここまで損害が出たのは初めてだが、結構よくある。
そして無駄に基礎値の高いあの二人を止められる人がおらず、なぜか喜一郎が非常勤として対応しているのだ。
本来隊長格は教職を掛け持ちしたりしない。
あの二人はとにかく規格外過ぎる。
「あ、お互い指さしてる。」
「あー、また喧嘩始まった……。」
喜一郎にどちらが悪いか聞かれたのだろう。
お互い相手を指差して、また取っ組み合いになりかけている玲と彰良を喜一郎の怒声が止めた。
これはまだ暫くかかりそうだ。
「あーあ!ボク、放課後皆んなで行きたいカフェあったのに〜!」
「一ヶ月は罰掃除だろうね……。」
楽と清治は顔を見合わせて、溜息を吐き出した。
彼らはまだ知らない。
それから約一年後、楽が持ち込んだ格ゲーで競った挙句、誰も勝ちを譲らないところから肉弾戦に変わり、四人で校舎を半壊させる事態になることを。
しかもその対応に当時、理事長代理だった東條が出てきて、地獄のような説教を受けることを。
その後二ヶ月に渡って奉仕活動をさせられることを。
彼らは、まだ知らない。
読んでいただきありがとうございます。
ハグレモノ番外編第十九話はいかがでしたでしょうか?
残夏たちの学生生活が可愛いですね。
この年代、教師たちはかなり手を焼いたのかなと思います。武田先生の頭皮も大ダメージを……。
皆さんの学生時代はいかがだったでしょうか?
思い出しながら、または今の自身と重ねて、楽しんでもらえたら嬉しいです。
次回は土曜日19:30頃に本編投稿予定です。
よろしくお願いします!




