熱の記憶(中学時代/凪、玲 現代/凪、残夏、司、雄星)
風邪を引いた。
昨日、夜遅くまで窓を開けて星を見ていたせいかもしれない。
「こまったなぁ……。」
ぽつん、と静かな部屋に言葉が落ちる。
朝一で清治が面倒を見てくれたけど、仕事があってずっとはついていられない。
玲も出張みたいだし、お見舞いに来てくれる友達もいない。耳を澄ませてもなんの音も聞こえない空間。
なんだか、世界でひとりぼっちみたいだ。
けほん、とひとつ咳をして、布団を頭の上まで引き上げる。
毎日嫌がらせをされる中学校より、今の方がずっと安全なのに、中学校の方が音に包まれていて恋しいなんて。
ーーううん、大丈夫。
大丈夫。
きっと風邪が治れば、またお外に行ける。
友達がいなくても、日の光が気持ちいい木陰で鳥の鳴き声を聞けば寂しくないから。
気だるい身体を丸めて、ぎゅっと目を瞑った。
暑い。なんだか喉も渇いたし、身体も汗をかいて気持ち悪い。
耐えられなくなってガバッと起き上がれば、すぐ隣で声が上がった。
「凪、起きた?大丈夫?」
「……え、玲ちゃん?」
横を見れば、凪の机について玲が書類仕事をしていた。
なんで。
今日は出張って聞いてたのに。
「ふふ、早く終わったからね。……まだ熱あるね。服着替えよっか。毛布も厚いね。少し軽くしよう。はい、お水。飲んだら身体拭こうね。」
てきぱきと世話を焼いてくれる玲に、なんだか頬が熱い。
そっか、帰ってきてくれたんだ。
ずっと一緒にいてくれたんだ。
そっか、そっか。
「……玲ちゃん。」
「うん?」
すっかり快適になった布団に転がりながら、おそるおそる口を開く。
「手、つないでてくれる?」
そっと手を伸ばせば、くすりと笑う声と共に、暖かい手がしっかりと凪の手を包んだ。
ぱちりと目を覚ます。
暑くて、喉が渇いて、身体が汗で気持ち悪い。
耐えられなくなってガバッと起き上がれば、すぐ隣で声が上がった。
「あ、凪!起きた?大丈夫?」
「……残夏くん。」
「俺たちもいるぞー。起きたんなら、ゼリー食う?」
「馬鹿もの!先ずは水分補給と着替えだ!」
見渡せば、凪の部屋なのに残夏たちがいる。
心配そうに覗き込んでくる残夏。
購買の袋からゼリーを取り出す雄星。
そして、一番しっかりと指示を出す司。
わいわいと賑やかな様子に自然と笑みが溢れる。
「凪。水だよ。飲める?」
「うん、ありがとう。」
玲がいなくても寂しくなんかない。
玲が連れ出してくれた世界は、こんなにも幸せだから。
「……みんな。」
すっかり快適になった布団に転がりながら、口を開く。
「寝るまで、一緒にいてくれる?」
そっと尋ねれば、柔らかい笑みに包まれた。
「当たり前だよ。というか、今日はここで寝るから。起きても一緒だよ。」
「俺も。ゼリー欲しくなったらいつでも言ってな。色々買ってきたからさ。」
「心配せずに早く寝ろ!」
三者三様の答えに笑って目を閉じる。
手を繋がなくても、部屋の中は暖かかった。
読んでいただきありがとうございます。
ハグレモノ番外編第十六話はいかがでしたでしょうか?
久しぶりの高専組の話になります。
風邪の時って、なんだかすごく心細くなりますよね。少しだけ音がある方が寝付けるような気がします。
凪は少しずつ、親離れして、残夏たちと共に成長していくのだと思います。
次回は土曜日19:30頃に本編投稿予定です。
よろしくお願いします!




