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オムライス(高専時代/清治、楽、彰良)

 その日、清治(きよはる)はお腹が空いていた。

もちろん、朝も昼も夜もちゃんと食べた。だけどお腹が空いていたのだ。


 清治は消灯にはまだ早い時間、寮の共用キッチンへと(おもむ)くと、冷蔵庫を開けた。

清治と(らく)彰良(あきら)(れい)のスペースは四人の共用で、ここに入っているものは好きに使っていい。

今入っているものといえば、卵と玉ねぎとベーコンとバター。米は常備(じょうび)されているし、これは。


ーーオムライスが作れる……!


清治のテンションは上がった。

実は清治は洋食が好きなのだ。なぜなら西廣(にしひろ)の家は和食ばかりだから。

亡くなった母親は洋食が得意だった。洋食は清治には幸せの思い出そのものだ。


「オムライス……作ったことないけど、多分大丈夫……!!」


声に出せばもっと大丈夫な気がして、清治は意気揚々(いきようよう)と拳を上げた。


 20分後。

そこには、何かがあった。

オムライスのような何かではない。もう何かは分からない「何か」だ。

そもそも清治は卵すら割ったことがなかった。

お腹は空腹で鳴り響いている。

しかし自分の無力さに、清治は床にへたり込んでしまった。そんな時、


「清治?なにしてんの?それなに??」


「……!!楽……!」


明るい声に清治は活路(かつろ)を見出した。亜麻(あま)色の髪が蛍光灯で輝いて見える。

清治は楽の手を掴むと、(こと)次第(しだい)を説明した。


「なるほど……。実はボクもお腹空いて来たんだよね。ボクはインスタント麺にしようと思ってたんだけど……。」


楽は清治を見つめると小さく頷く。

共犯が成立した瞬間だった。


「ボクも作った事ないけど、おばあちゃんが作ってるの見たことある!頑張ろ!」


「おー!」


二人は拳を上げると卵に向き合った。


 20分後。

そこには、玉子の何かがあった。

オムライスのような何かではない。玉子である事だけはうっすらと分かる「何か」だ。

実は楽もまともに料理をした事がなかった。それでも清治よりかはマシだったが、こんな二人では限界があった。

清治のお腹の音に楽の分が合わさって、(むな)しいハーモニーを(かな)でている。

しかし自分たちの無力さに、楽と清治は床にへたり込んでしまった。そんな時、


「……なにやってんだお前ら。」


「……!!彰良……!」


(いぶか)しげな声に清治と楽は活路を見出そうとしてーー諦めた。

彰良が料理なんて出来るわけがない。

二人は顔を見合わせて溜息を吐き出す。玲だったらよかったのに。絶対作れるから。

そんな楽と清治の反応に彰良は眉を寄せると、溜息を吐き出した。


「どうでもいいけど、それ以上卵を無駄にするなよ。今から玉子酒作るんだから。」


「玉子酒……?」


「そう。卵と酒の甘いやつな。玲がまた熱出してるから、栄養あるもん作ってやろうと思って。」


その言葉に清治と楽は顔を見合わせる。

玲は身体が弱く、よく熱を出すのだ。心配が頭を(もた)げる。


「玲は大丈夫なの?」


「大丈夫だよ。風邪の引き始めって感じだから、ここで早めに栄養取らせるんだ。」


清治の問いに彰良は小さく笑みをこぼした。彰良は玲が関わると感情がよく現れる。

そのまま手際(てぎわ)よく鍋に火をつけるのに、清治は楽と顔を見合わせた。

これはひょっとしてひょっとすると。


「彰良。もしかして、料理できる?」


「出来るってほどでもねーけど、うちは親父があんま居ないから料理は小さい頃から作ってたよ。」


「ほんと!?じゃあ、オムライスとか作れる……!?」


「オムライス?……玉子巻くやつでいいなら……。」


清治の興奮に若干引きながら、彰良は頷いた。

清治は楽と顔を見合わせ、頷き合った。

楽の顔がキラキラしている。きっと清治の顔も似たようなものだ。

清治と楽は彰良に()めよると、同時に口を開いた。


「オムライスの作り方教えて……!」



 20分後、二人の目の前には昔ながらの美味しそうなオムライスが二つ並んでいた。ふわりと湯気が昇るのに清治は自分の顔が(ゆる)むのを感じる。

彰良は小さく息を吐くと、玲の玉子酒を手に取った。


「片付けはちゃんとしろよ。俺はもういくからな。」


「分かった!ありがとう、彰良!」


「ありがとう〜!!」


そのままキッチンを出ていくのに、清治と楽は顔を見合わせてから手を合わせる。

これでようやく腹の虫も治まるというわけだ。


 結論からいうと彰良のオムライスは見た目通り、とても美味しかった。


「美味しい……!」


「意外な才能だね〜!!」


楽と話しながら彰良のオムライスを頬張る。

彰良は結局、清治たちが散らかした「何か」を片付けるのを優先させて、さっさとオムライスを作ってしまった。

教えて欲しいのなら、今度玲に頼めばいいと。玲の方が料理は上手くて、ふわとろオムライスも作れるのだと。

それはもちろん魅力的だけど、この彰良のオムライスだって十分に美味しい。

だから清治は心に誓った。彰良のオムライスの作り方も今度必ず教えてもらおうと。


 楽と清治は米粒ひとつ残さず食べきると、綺麗に皿を洗って部屋に戻った。

玲のお見舞いは明日行こう。そして彰良にもう一回お礼を言って、料理を教えてもらえるか聞いてみよう。


 清治はお腹とは別に満たされた心のまま、のんびりと目を閉じた。



後日ーー


(この前、彰良のオムライス食べたんだ!美味しかった!)


(あいつの味付け美味しいよね。俺も好き。)


読んでいただきありがとうございます。

ハグレモノ番外編第十四話はいかがでしたでしょうか?


食べるのが好きなので、つい食べ物の話が多くなりますね。

私はオムライスの卵、巻くのもふわとろも出来ないので、とろとろのまま、形を整えずにご飯に乗せてます。

作れる人は尊敬しますね!


次回は土曜日19:30頃に本編投稿予定です。

よろしくお願いします!

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