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悪い子レベル(高専時代/同期4人、現代/学生組4人)

 「あ。」


誰が発したか、その声に4人全員が動きを止めた。

放課後、冬の外掃除当番。

男子4人が集まればそれが遊びに変わるのは当たり前で。

ただ問題なのは、少々集っ(つどっ)た少年たちが普通から逸脱していた事だろうか。

将来の隊員を育成する、組織の教育機関、高専。

そこで教育を受けた彼ら4人は既に戦闘能力だけでいえば一隊員と変わらなかったのである。

戦闘能力だけでいえば、だが。


(らく)……。」


まず最初に言葉を発したのはリーダー格である小柄な少年だ。

彼は最も華奢で、眼鏡をした地味な外見からは想像がつかない程頭が回る。主によくない方向に。


「ちょ、(れい)!ボクのせいみたいに言わないでよ!」


楽と呼ばれた快活な少年が抗議の声を上げた。

明朗快活な彼は、しかしながら能力の扱いが下手くそだ。

自身の怪力を持て余し、チャンバラと称して振り回していた(ほうき)で校舎の外壁を破壊したのだから。


「お前のせいだろ、馬鹿力。だからやめとけって言ったんだ。」


背の高い銀髪の少年が溜息を吐き出す。

しかし口ではこう言っているが、彼が友人たちの何かを本気で止めた事は一度もない。

案外自分も楽しんでいるのである。


「ど、どうしよう……。どうしよう彰良(あきら)!?」


銀髪の少年に助けを求めるのは、この中の唯一の良心である穏やかで気弱な少年だ。

彼は常に巻き込まれ体質だが、真面目な性質が不運にも友人たちのせいで確実に良くない方向に足を向けさせている。

ただし、彼もまた最終的に周りを巻き込むので自業自得ではあるが。


「まあ、落ち着きなよ清治(きよはる)。……うーん、やっちゃった事は仕方ないし……。あ、そうだ。」


玲と呼ばれた小柄な少年は、清治と呼ばれた穏やかな少年を落ち着けるように肩を叩いた。

そしてじっくりと校舎の壁を観察すると、その出来の良い頭から導き出された、斜め上の提案をにっこりと口にした。



 時は流れて8年後。

放課後、冬の外掃除当番。

男子4人が集まればそれが遊びに変わるのは当たり前で。

チャンバラが熱を上げて雄星(ゆうせい)が振り回した箒が校舎の外壁を破壊してしまった。

そんなに強い力ではなかったが、以前からの蓄積ダメージがあったのだろう。

残夏(ざんか)(なぎ)、雄星、(つかさ)は顔を青ざめさせて職員室の武田(たけだ)のところに謝りに来ていた。

特に実行犯となる雄星は、その体格に恵まれた身体を今にも倒れさせそうな顔色だ。しかし。


「あー、いいぞ。あそこは経年劣化もあるからな。まあ、今度からは気をつけなさい。」


「え?」


あまりの武田の軽さに残夏たちは拍子抜けしてしまった。

だって校舎の外壁だ。どんな理由があろうと烈火の如く怒られると思っていたのに。

そんな残夏たちに、武田が溜息を吐き出す。どこか遠い目をした担任は滔々(とうとう)と理由を語り始めた。


「いいか?昔お前たちと同じで外壁を壊した生徒たちがいてな……。そいつらはあろう事か、一晩掛けて外壁にペイントアートを施し、隠蔽(いんぺい)しようとしたんだ。」


「な、」


絶句。

絶句だ。

なんだそいつら。隠蔽とかあり得ないだろう。

しかもなんでそこで補修作業じゃなくてペイントアートなんだ。

斜め上すぎて意味が分からない。


「校舎の外壁中、奴等の落書きでな……。落とすのに苦労した……。」


その時のことを思い出しているのだろう。武田が深々と溜息をこぼす。

その様子に残夏達もつられそうになった。


「だからお前たちくらいは可愛いもんだ。悪い子レベルなら1だな。」


「悪い子レベル……。」


残念ながら、武田の心底気落ちした様子にその伝説の人たちの悪い子レベルは聞けなかった。

そして職員室からの帰り道。


「それにしても誰なんだろう……そんな破天荒なことする人たち。」


「馬鹿め!そんな奴らとうに退学になっているだろう!」


「ああ、まあそうだよなぁ……。」


「うーん、ぼくなんか心当たりがある気もするんだけどな……。」



一方、その頃。

(……くちゅん!)


(あ、玲。風邪?大丈夫?)


(うーん、風邪じゃないと思うんだけど……。)


読んでいただきありがとうございます。

ハグレモノ番外編第一話はいかがでしたでしょうか?


本編での大人たちの過去や、登場人物たちの日常を少しでも楽しんでいただけたなら嬉しいです。


次回は土曜日19:30頃に本編投稿予定です。

どうぞよろしくお願いいたします。

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