3話
続きです。
いよいよダンジョンでの戦いに近づいてきました。
「えっと…あなたがこの店のマスターですか」
「そうだ。俺はこの酒場のマスター高島だ。よろしくな」
「俺は夜宮と言います。遠い国から来たので、ここら辺の土地があまりよく知らないんですよ」
この世界は俺のいた世界と同じ苗字を名乗ってるわけか…
「夜宮か覚えとくぜ。それにしても、珍しい格好だな。今までいろんな旅人を見てきたが、こんな格好をしているやつは見たことないな」
「そ、そうなんですね…」
やっぱ異世界らしく、革の装備の方がよかったか…
「まあこれも何かの縁だ。何か好きな物頼みな」
「はい。じゃあこのベリージュースをください」
「はいよ」
高島は厨房に行き、ドリンクサーバーの蛇口を捻り、適量まで入れていった。適量まで入れると、輝の元までベリージュースを持っていき、輝の手前に置いた。輝はベリージュースの入ったコップを取り、一口飲んだ。ほどよい甘さと酸味が合わさってとても美味しかった。輝のいた世界でいうところのオレンジジュースに近いジュースのような味であった。
「美味い…美味いですね!」
「だろ!なんせこの店の人気のメニューだからなぁ」
輝は一気に飲み干し、ぷはあ~という声を上げて、ジュースの味の余韻に浸った。しばらく余韻に浸った後、輝は聞きたかった情報を高島に聞いた。
「高島さん、実は遠い国からふと耳にした情報なんでけど、この近くにレベル・ワールドと呼ばれるダンジョンを知らないですか?」
「ああ、もちろん知っている。この村から西に3km先に進んだ場所に巨大都市"ユグニア"と呼ばれる場所にある」
「えっ…都市の中にあるんですか?」
「そうだ。知っての通りこの世界に魔物はいない。いや、いたとされているが、不思議なことにその魔物が一斉に姿を消してしまったんだ」
「いったい何が…」
「正確なことは分からない。古代の書物を漁ってもその情報は出てこなかった。そこで、ある仮説が提唱された。それが"レベル・ワールド"と呼ばれるダンジョンの存在だ」
「そのダンジョンに魔物が移住したみたいな感じですか」
「ああ、そうかもしれないっていうあくまで説だ。実際に、あのダンジョンは何層にも積み重なってる構造になっているからな。ダンジョンの中に入った可能性もあり得る」
「何層にもってどんなダンジョンなんですか」
「それは行ってからのお楽しみだな。まあとにかく、レベル・ワールドに行きたいなら巨大都市"ユグニア"に行くことだ」
「ユグニア…ありがとうございます高島さん、有益な情報を教えてくれて」
「いやいや礼には及ばんよ。俺は長年こうしてマスターをしているからな、お前のような旅人にこうして情報を話すことはざらだ」
輝は代金を支払い、インフォル村を出て西の方へと向かった。3kmも離れていたので、徒歩での移動は苦ではなかったが、10kmほど離れている感覚を感じた。しばらく、歩き、また森の出口を抜けると、巨大な壁がそびえたっていた。壁の大きさからして40mはあるようなそんな感じがしていた。
「これが巨大都市"ユグニア"か」
輝はその大きさに驚きながらも、目の前に入り口らしき場所が見えていた。そこには関所らしき場所があり、門兵のような人たちがそこにいた。輝はその関所に向かった。
「止まりなさい。あなたこの都市に入るつもりですか」
一人の男の門兵が輝を立ち止まらされた。
「はい、そうですが」
「ここから先は第2区画"攻略協会"の本部と"レベル・ワールド"のダンジョンがある区画です」
「実は俺、遠い国から来た者なんでここら辺の土地がよくわからなくて、レベル・ワールドっていうダンジョンがこのユグニアにあると聞いてここまで来ました」
「なるほど、どおりで見ない身なりなわけですね。ならこのユグニアがどのような国なのか簡単に説明しましょう」
輝は門兵からユグニアに関しての説明を聞いた。この巨大都市"ユグニア"では大きく三つの区画に分かれている。第1区画は飲食店をはじめ、日用品の店、武器屋、防具屋がある区画だ。第2区画はレベル・ワールドを攻略するための協会"攻略協会"本部とレベル・ワールドがある区画だ。第3区画は主に都市の住宅街がある場所で、攻略者の寮もある区画だ。輝はその説明を聞いて、関所で簡単な手続きをし、第2区画へと向かっていった。入ると、目の前に巨大なビルが建っており、人もそれなりに賑わっていた。その行き交う人々はまさにゲーム、漫画、アニメで出てくるような装備をしていた。
マジでゲームやアニメで見るファンタジー世界の装備…ここから俺の異世界ライフが始まるんだな!!
その光景を見た輝は興奮しながらも、まずは攻略者協会へと向かった。巨大なビルの中に入っていくと、高級ホテルのような広いロビーが広がっていた。そのロビーでは何人かで固まって話し合いをしているパーティらしき人達があちこちに点々としていた。輝は目の前に受付の場所を見つけ、受付の女性の話を聞くために向かった。
「こんにちは~私、攻略者協会で受付を担当しています。小倉菜々と言います。本日はどのようなご用件でしょうか」
ロングの茶髪で、かわいらしい女性がにこやかにに言った。
「はい、攻略者になりたいのですが」
「攻略者登録ですね。それではこの用紙にお名前をお書きください」
輝は用紙に名前を書いた。この世界はどうやら日本の苗字に似てるので、自分の本名を書くことにした。
「えっと…夜宮輝さんですね。それでは攻略証を発行するので、少々お待ちください」
小倉は受付を離れていった。輝は待っている間、ロビーの様子を一通り見回した。年齢層はよくわからないが、だいたい自分と同じ年の人から大人の年齢層までがいる印象であった。
「お待たせ致しました。こちらが攻略証になります」
輝は攻略証を取ると、その攻略証には自分の名前が記載されていて、その横にFと表示されていた。
「すみません、このFというアルファベットはなんですか?」
「あ、ごめんなさい説明を忘れていましたね。攻略者にはそれぞれ強さに応じてランク分けがされるんです。一番下からF、E、D、C、B、A、S、SS、SSS、Xの10段階のランクが設定されています。ランクを上げるにはダンジョンの攻略を進めることが手っ取り早いですね」
「そうなんですね。ちなみにEランクに上がるためにはどうすればいいんですか」
「その説明をするためにまず、レベル・ワールドと呼ばれるダンジョンの説明をしますね。多層に積み重なったダンジョンで構成され、それぞれ独立したダンジョンが存在し、それが全て合わさったのがレベル・ワールドです。それぞれ独立したダンジョンは下の階層からLv1、Lv2、Lv3と続いているのです」
「なるほど、それでそのダンジョンはどこまで続いているのですか」
「現状はどこまで続いているのかは分かっておりません。ただ現状で到達できた階層はLv98 雪花の街ですね。ただ、到達階層はすぐに更新される可能性がありますので、定期的にチェックする必要がありますね」
「Lv98…」
マジかよ、しかもまだ未知のダンジョンが多いってことだろ。ワクワクが止まらないなぁ
「それでEランクに上がれる条件ですが、Lv15 龍のすみかを攻略すれば、Eランク昇格の権利を受け取れます。そして、Eランク昇格試験を受けて合格すれば、Eランクに上がることができます」
なるほど、ダンジョンの攻略と昇格試験を受けて合格をつかみ取れば、ランクを上げられるわけか。なんだか面白くなってきたな。
「以上が説明になります。何か分からないことがありましたら、遠慮なく私に聞いてくださいね!」
小倉はまた、にこやかに微笑んで言った。異世界の美少女はやっぱりかわいい…
「それで早速なんですが、ダンジョンに挑みたいんですけど、大丈夫ですか?」
「はい!全然大丈夫ですよ!それではあちらの扉に進んでいただいて、また受付がありますので、そちらにお申し付けください」
「分かりました。いろいろとありがとうございました!」
「はい!夜宮さんのダンジョン攻略の幸運を祈ります」
輝は小倉にそう告げられ、扉の向こうへと向かった。
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