2話
続きです。それではお楽しみください
「さて少年、君はどんな異世界に行きたいんだ」
「えっと、そうですねぇ…いやあ迷うなぁ、今までそんな異世界転生なんて空想上の出来事だと思ってたんで、いきなり聞かれると悩んじゃいますねぇ」
「じっくり考えてくれ、選んだら変更はできないからな」
「はい!それじゃあ、ダンジョンがあって、魔物が出てくるような世界がいいですね」
「ダンジョンと魔物か、分かった。それで…そういえば、名前を聞いていなかったな」
「確かにそうですね、俺も忘れていましたよ。俺の名前は夜宮輝と言います」
「夜宮輝!」
クライスは輝の名前を聞いた瞬間、突拍子もない声が出た。
「えっと…どうしましたか。俺の名前何かおかしかったですか」
クライスはしばらく、黙り込んだが、やがて何事もなかったように話し始めた。
「いや、なんでもない…ただ珍しい名前だと思ってな」
「そ、そうですか…」
「すまんな、急に大声を出して」
「あ、いや大丈夫です」
「それで、ダンジョンと魔物が存在するダンジョンに行きたいということで間違いないのか」
「はい!」
「なら輝にぴったりの異世界がある。そこに転移させよう」
「どんな異世界なんですか」
「まあ行けば、わかるさ。次に異世界での君の武器と装備を決めたいんだがどうする」
「それも決められるんですか」
「ああ、自由に決めていい。向こうの世界で、チートな武器や装備を使って無双することだって可能だ」
「チートな能力とか武器はなんかつまらなくなりそうなので、ある程度の力で大丈夫です」
「分かった。どういうデザインの武器がいいんだ」
「俺ずっと憧れていた武器があって、日本刀のような片手剣ってできますか」
「ああ、もちろんできるよ。装備はどうする?」
「それなら俺はパーカーが好きなので、黒いパーカーにベージュのズボンで、靴は白黒が入ったスニーカーでお願いします」
「なるほど、了解した」
クライスは手を広げ、何もない空間から青いホログラムのような画面が出てきた。クライスはそこに何かを入力して、パソコンのエンターキーのようなものを押した。
「さて、これで異世界に転移できる準備は整った。輝、異世界でのライフを楽しんでくれよ」
「はい!いろいろありがとうございます!」
輝はそう言ってから急に眠気が襲い、そのまま倒れ込んだ。すると、クライスがいた空間から、輝は消えていき、異世界へと転移していった。
「輝…あの子を救ってやってくれ、あの子を救えのは君しかいないんだ。だから、頼んだぞ」
クライスは意味ありげな独り言を呟いた。
その頃、暗闇の中で炎が両サイドに燃えており、灯として機能していた。その奥に怪しげな黒い仮面をつけた男がいた。その男の前に同じような黒い仮面だが、目だけ隠れており、黒のローブを纏った者がいた。
「きたか、ノース。仕事には慣れたか」
「はい、問題ありません」
「分かっているとは思うが、お前のやるべきことはなんだ」
「はい、人を殺すこと…そしてある男への復讐です」
ノースは復讐という言葉を発すると、拳を握りしめて怒りが籠った声で言った。
「そうだ。お前には期待しているぞ」
男はにやりと笑った。その頃、異世界に転移された輝は優しい風が身体全身を包み込むように吹いた。その風で、輝は目を次第に開けていくと、太陽の優しい光が差し込んできた。すると、次第に鳥の鳴く声が聞こえてきた。輝はゆっくりと立ち上がり、周りの風景を見ると、そこは木々がたくさん生えており、森の中にいるようであった。
「ここが異世界なのか」
輝は次に自分の身なりを見ると、さっきまで制服を着ていたはずが、クライスの注文通り、黒いパーカーにベージュのズボン、黒と白のスニーカー、腰には剣が入った鞘が身につけられていた。
「俺は異世界に来たんだよな」
輝はそう言うと、目の前を鳥が横切り、思わず、尻もちをついた。その飛んでいった鳥の方向を輝は見ると、鳥は鳥だが、輝がいた世界の鳥とは異なる色合いを持つ鳥がいた。前身は青い羽毛で覆われていて、一角獣のように一本小さい角がついていた。その鳥を見た瞬間、輝は異世界に来たのだと改めて自覚した。
「あんな鳥…俺の世界にいなかったよな…ってことは俺異世界に来たってことでいいんだよな…い……いやったーーー!!!」
輝は下を向いたと思ったら飛び上がり喜んだ。
「マジで憧れの異世界に来ちゃったよ!これから楽しみだなあ!それで俺はこれからどっちへ進めばいいんだ」
輝は森を抜け出すためにはどっちを進めばいいか分からなかったが、輝は勘を頼りに進むことにした。
進んでいると、森特有の不気味さはなく、木々の緑が透き通っており、それを彩るように動物や草花が引き立てていた。
こんな自然、田舎でも見ない光景だな。空気も美味しいし、全体的に穏やかだな。
そうこう思っているうちに、森の出口が見えてきた。輝は急いで、その森を抜けると、辺り一面に綺麗な草原が広がっていた。
「すげえ…こんな広い草原、日本じゃ見たことない」
輝は広い草原に魅入っていると、その向こうに小さい村のようなものがあり、その村へと輝は向かっていった。森の出入口と村の距離はそれほど、離れておらず、だいたい徒歩で10分程度かかる場所に村はあった。輝はやや下り坂になっている場所を下っていくと、村の入り口へと到着した。村の入り口には特に警備などはなく、すんなり村に入っていった。
「ようこそ!インフォル村へ!おや、見ない身なりのしたお兄さんだねぇどっからきたの?」
突然、明るめの町娘のような少女が輝に話しかけてきた。
「ああ、はい。遠くの東の国からきたものなんで、この辺りの土地がよくわからなくて何か情報を得られる場所ってありますか?」
「そうなんだ!情報収集なら、この先を真っ直ぐ行って突き当りを右に曲がった先に酒場があるからそこでマスターから情報を得られるよ」
「分かりました。ありがとうございます!」
やっぱRPGといえば、酒場で情報収集だよなぁ…そういえば、ステータスとかいう概念ってこの世界にあるのか?
「ステータス」
輝は試しに『ステータス』と言った。すると、自分の目の前に青いホログラムの画面が現れた。そのホログラムの画面に自分のステータスであろう数値が載っていた。
夜宮輝 性別♂ 16歳
Attack 6
Defence 4
Speed 5
Total 15
マジか…合ってた…これが俺のステータスかattackが攻撃力、defenceが防御力、speedが速さでいいんだよな。これは強いのか強くないのかわからん…まあ戦っていくうちに分かるか…レベルとかHPはなしってことか。
このtotalっていうのが俺の戦闘力の指標みたいなものなのかな。
輝はステータスについてまだ分からないことばかりであったが、これからじっくり調べていこうと思った。そうこうしているうちに、酒場の前まで到着しており、その中へと入ると、思ったより人数は多くなく、数人の冒険者らしき者達が別々の席で飲んでいた。輝はカウンター席に座り込み、メニュー表を開いてみた。異世界の文字はどんなものかと開いてみると全部すんなりと読めた。
これもクライスさんのおかげか…そういえば、俺はいくら持ってるんだ…
輝はポケットを探ると、小さいポーチの袋があり、その中身を見ると、この国の通貨らしきものがあった。通貨はパールと書かれていた。数えたら合計で、3000パールがその中に入っていた。
このお金…クライスさんが用意してくれたのかな…ありがとうございます。クライスさん、異世界で幸せに生き抜きます。
「ほう、見ない恰好をした旅人だな。どっから来たんだ」
突然、輝が座っていたカウンターの向かい側からちょび髭が生えた30代後半の男性が現れた。
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