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2 影の情報屋 - 忍び寄る陰謀

蒸気時計塔での奇妙な殺人事件の調査を進める中、俺は謎を追い続けていた。

歯車が逆回転し、異常な振動を引き起こしていた現場。

それは単なる殺人ではなく、この町全体を揺るがす何かが潜んでいることを示していた。

「もっと深く探る必要があるな」

俺は一人呟き、情報屋として名高い男、クロウの元へと向かうことを決めた。


町の裏通りに足を踏み入れると、蒸気機関の音が遠くなり、代わりに微かな囁き声が響く。

高い煉瓦の壁に囲まれた通りは薄暗く、足元には油で汚れた水たまりが点在している。

目印は歯車の形をした小さな看板だ。

その先にある古びた店の扉を押すと、錆びたベルの音が響き渡った。


「いらっしゃい」

低く響く声が店の奥から聞こえてきた。

黒いフードを目深にかぶったクロウが、手を動かしながら複雑な仕掛けをいじっている。

「何を知りたい?蒸気時計塔の事件のことか、それとももっと興味深い話か?」


俺は店の中央に腰を下ろし、ハルがカウンターに飛び乗るのを目で追った。

「時計塔の事件についてだ。歯車の逆回転や、異常な振動が起きた原因を知りたい」

俺の言葉に、クロウは意味ありげな笑みを浮かべた。


「お前が探しているのは、“メカノイド”だろう」

クロウの声に、ハルが鋭い念話を送ってくる。

「メカノイド?なんか怪しそうな名前だね!」


「メカノイドとは?」

俺は静かに尋ねると、クロウは機械仕掛けの装置を弄りながら語り始めた。

「機械の神を崇拝する結社だよ。彼らは蒸気機関や歯車を操り、都市そのものを支配しようとしているらしい。蒸気時計塔を狙ったのも、その一環だろう」


「それで……彼らの目的は何だ?」

俺の問いに、クロウは歯車を回す手を止めて答えた。

「噂では、“時を支配する”ことだと聞いている。だが真相は分からない。

ただ一つ確かなのは、彼らがオーガストの技術を狙っていたということだ」


クロウが差し出した資料には、時計塔の設計図が記されていた。

その中には、未完成の「時空制御機構」に関する記述があった。

「オーガストはこの機構を完成させる寸前だったらしいな。だが彼の死で計画は途絶えた……いや、そう思いたいところだが」


俺は設計図に描かれた複雑な歯車と術式の図面をじっと見つめた。

「時空制御機構…もし完成していれば、確かに時を操ることも可能かもしれない」

設計図には、「歯車の核」という特別な部品が必要だと記されている。

その部品は、オーガストが最後に作り出したとされるが、所在は分からない。


店を出る前に、クロウが一言付け加えた。

「気をつけるんだな。メカノイドは手段を選ばない。

お前のような探偵を狙うのも、奴らにとっては朝飯前だ」


「忠告ありがとう。だが、俺の方が手段を選ばないことも覚えておけ」

俺は冷たい微笑みを浮かべ、ハルと共に店を後にした。


町の路地を抜ける頃、ハルが念話を送ってきた。

「時空制御機構だなんてちょっと信じられないけど、あり得ないとも言い切れないね。それにしても、“歯車の核”ってどんなものなんだろう?」


次の手がかりを追うべく歩みを進めた。



蒸気の白煙が薄れる中

歯車が奏でる音だけが

空気を切り裂いているようだった






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