現れる人魚の姫
ベーキウたちはヤイバと一緒に海の上にいた。ベーキウたちは人魚と遭遇するため、ヤイバはハンガー海賊団と遭遇するため。
海に出て数分後、モンスターとの激しい戦いが続いたため、ベーキウたちは少し休んでいた。
「ふぃー、海のモンスターって厄介な奴が多いな」
ベーキウは肩を回しながらこう言った。シアンはお茶を飲み、海を見回していた。
「あれだけ激しい海だったのに、今は静かね。何かが起こりそう」
「そういうことを言うなシアン。本当に何かが起こるではないか」
と、水着姿になっているクーアが、日光浴をしながらこう言った。その様子を見て呆れたキトリは、クーアのサングラスを取った。
「ギャァッ! 目が、目がァァァァァ!」
「こんな時にのんきに日光浴なんかしないで。いつ、モンスターに襲われるか分からないのよ」
「少しくらい休んでも罰は当たらんぞ。ほんのちょっぴりでもいいから、余裕を持たぬといけないぞ」
クーアがこう言うと、巨大なゲスナゲソが再び現れた。ヤイバは剣を手にして身構えたが、クーアは少しだけ魔力を開放し、雷の矢をゲスナゲソの額に向かって放った。この攻撃を受けたゲスナゲソは、後ろに倒れて海に沈んだ。
「あらま、一発」
「弱点と急所が分かれば、一発で処分することができる。今のわらわなら、あんなのは雑魚と変わらん」
「ははっ。そりゃー頼もしい。それじゃ、また何かあったら頼むぜ」
と言って、ヤイバは剣を鞘に納めた。
その頃、アユと人魚たちはベーキウたちがいるであろうリゾート地に向かって、急いで泳いでいた。
「早く会いたいわ。お父様に見つかる前に、一目でも見たいなー」
「確かにそうですね。私たちの国の王様、かなり頑固で堅物ですからね。あ、このこと王様には内緒で」
「もちろんですわ」
そんな話をしていると、アユたちはリゾート地に到着した。顔を出したアユは、周囲を見回した。
「いないですね」
「どこかに行ったんでしょうかねぇ?」
「近くに人がいればいいんですが……あ」
アユが周りを見回すと、そこには溺れているジャオウがいた。
ジャオウは人魚の存在に気付かず、アルムとレリルによって助けられていた。
「す……すまん……またまた助かった」
「うん……」
アルムは急いでジャオウの手当てをしていた。その様子を見ていたレリルは、大きなため息を吐いていた。
「あーあ。まさかあんたが極度のかなづちなんて知らなかったわ」
「ぐ……言い返す言葉が見つからない」
レリルの嫌味を聞き、ジャオウは苦虫を嚙み潰したような顔をした。ジャオウは泳げないのである。ベーキウたちより先にリトマメ大陸に到着したものの、ジャオウの水泳訓練のせいで長時間動けなかったのだ。
「ジャオウ、海のサファイアは諦めて別の素材を探す?」
「いや、あと少しでコツを理解できそうだ。もう一度、やってみる」
「同じことを今日まで何百回も聞いたわよー」
レリルはため息を吐いてこう言った。その時、海にいるアユたちに気付いた。
「ゲェッ! 人魚!」
レリルの言葉を聞き、ジャオウとアルムは驚いた。アユはジャオウに近付き、口を開いた。
「あのー、この近くにものすごいイケメンっていませんでしたー?」
アユの質問を聞き、レリルはすぐにこう答えた。
「知りません」
「そうですか。それじゃ、この辺りをひと泳ぎしましょう」
「さんせーい」
レリルの答えを聞いた人魚たちは、海に潜って去って行った。レリルはアユたちがいなくなったことを察すると、ジャオウとアルムにこう言った。
「ここから場所を変えるわよ。人魚は見た目が美人だけど、イケメンを見たらすぐに発情する奴がいるのよ。発情したら最後、あいつらは気に入った人を海の底に連れて行くのよ」
「知っている。ここは危険だ。もし、俺が捕まったら終わりだ」
「だね」
その後、ジャオウたちは場所を変えるために、移動を始めた。
ベーキウたちはあくびをしながら釣りをしていた。
「あれからモンスターが襲ってこないな」
「そうねー。人魚もいないし、海賊もいない」
「もしかしたら今日は、いない日なのかもしれぬのー」
そんな話をしながら、ベーキウたちは動かない釣り糸を見ていた。ヤイバは船を止め、望遠鏡を持って周囲を見回していた。
「おかしーな。この辺りに出るって聞いたんだけどなー」
そう呟きながら、時計を見た。
「あと三時間で夕方か。夜は危険なモンスターがたくさん出るって言うし、その前に戻らねーとな」
「危険なモンスター?」
ヤイバの言葉を聞いたキトリは、近付いてこう聞いた。ヤイバは望遠鏡をしまって言葉を返した。
「ああ。さっき俺たちが戦った奴よりも、強い奴がうじゃうじゃいるんだ。特に夜は夜行性のモンスターがいて、かなり凶暴って話なんだ。一匹だけならどうにかなるけど、多数いたら大変だ。それに、船の上の戦いだと、俺たちが不利だ。あいつらが船を壊したら、俺たちは海の中では戦えない」
「確かにそうね。日が暮れる前に海賊か人魚が出てくればいいんだけど」
キトリがこう言った直後、海の方から音が聞こえた。キトリはすぐにヤイバから望遠鏡を借り、海を見た。そこには、人魚の群れがあった。
「あれは人魚。昨日の人魚と似ているけど……見たことがない人もいるわね」
「人魚か。近付いてみるか?」
「近付く前に武器を持って。あなたもそれなりにイケメンだから、狙われる可能性が高いわよ」
「忠告ありがとさん」
ヤイバは剣を持ち、外に出た。キトリは急いで釣りをしているベーキウたちに近付き、人魚がいることをベーキウたちに告げた。
「うおっしゃ! あいつらが現れたのね! 今度こそとっちめてやるわ!」
「いや、そこまでやらなくていいのよ」
「何かやったら、わらわの魔力で焼き魚にして、大根おろしと一緒に食ってやるわ!」
「そこまでしなくていいって言ってるでしょ。とにかく、準備して」
殺意を発するシアンとクーアを見て、呆れたキトリはこう言った。その後、船は人魚たちがいる場所へ向かった。
「ヤイバ! このままスピードを上げて、あの人魚たちをスクリューでバラバラにするのよ!」
「そんなことしなくていいわ! 近づくだけにして!」
キトリはシアンの口を塞ぎつつ、ヤイバにこう言った。ヤイバは笑いながら船を操り、人魚に近付いた。
アユは船を見て、すぐに飛び上がろうとした。だが、人魚の一人がアユにこう言った。
「私たちを狙う悪い奴らかもしれません。私が様子を見ます」
と言って、祖の人魚は高く飛び上がった。そして、船の上にいるベーキウとヤイバを見た。
「キャァァァァァァァァァァ! あのイケメンがいるわ! それと、同じくらいのイケメンがもう一人いるゥゥゥゥゥ!」
人魚の言葉を聞き、他の人魚とアユは急いで船の上に這い上がった。
「うおっしゃー! イケメンが二人じゃァァァァァ!」
「二人を捕まえて私たちの婿にするんじゃァァァァァ!」
「捕まえるのよ、何が何でも捕まえるのよ!」
人魚たちは叫び声を上げながら、ベーキウとヤイバに近付こうとした。だが、その前には殺意を放っているシアンとクーアが立っていた。
「オイゴラあばずれ人魚。お前たちにベーキウはあげないわよ」
「わらわがこーやって立っている以上、お前たちはベーキウとニャンニャンすることはできぬ。つーか、お前らはどうやって人間とニャンニャンするつもりじゃ?」
シアンとクーアを見たアユは、小さく笑ってこう言った。
「あんたらの言うことなんて気にしないわ! と! に! か! く! イケメンは貰うわ! 残念だけど、私たちの心を奪った以上こうなる運命なのよ!」
と言って、アユはベーキウに飛びかかった。
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