バトルマーメイド
ベーキウたちは、海のサファイアがあると言われる海の底の情報を得るため、人魚から話を聞こうとした。だが、人魚はベーキウに一目惚れし、海の中へ連れて行こうとした。シアンたちが何とかするのだが、人魚は仲間を連れて戻ってきた。
「かかってきなさい発情人魚! お前ら全員下半身ぶった斬って刺身にしてやるわァァァァァ!」
「海のサファイアのことを聞こうとしたのじゃが、そんなことはどうでもいい! ベーキウを守ることの方が重要じゃァァァァァ!」
「と……とにかく一度追い返さないと」
やる気満々のシアンとクーア、そして手加減して戦おうとしているキトリは魔力を開放し、迫りくる人魚を睨んだ。
「あいつら、本気を出したわよ!」
「それじゃあ戦うことよりも、あのイケメンをゲットすることを専念するわ!」
「皆の者! 一斉に飛びかかれェェェェェ!」
人魚たちは叫び声を上げながら、高く飛び上がってベーキウの元へ飛んだ。だが、シアンが光の魔力を放ち、人魚たちを海へ吹き飛ばした。
「グッハァツ! あのガキ、光の魔力を使うわ!」
「それじゃあ、あの子は噂の勇者! だとしたらかなり手ごわいわね」
「勇者だろうが何だろうが、とにかくイケメンをゲットすればいいのよ! 皆! 行くわよォォォォォ!」
攻撃を受けたのだが、人魚たちはベーキウを手に入れるために全力を注いだ。何度も吹き飛ばしても、人魚たちは何度も起き上がり、ベーキウに向かって飛びかかる。魔力を開放して戦うクーアは、苛立って叫んだ。
「うっぎゃァァァァァ! 何じゃあの人魚たちは! 何回もぶっ飛ばしても、不死鳥のごとく復活する!」
「きりがないわね。仕方ないから私も本気を出すわ」
「キトリ、最初から本気を出してくれ」
「これが終わった後、海のサファイアのことを聞こうとしたんだけど」
キトリはクーアに促され、魔力を開放した。キトリの魔力を感じた人魚たちは、顔を青ざめて後ろに下がった。
「あれは闇の魔力」
「魔界の住人がどうしてここに?」
「理由は分からないわ。あいつらが本気なら、こっちも力を合わせるわよ!」
「了解!」
人魚たちは同時に魔力を開放し、巨大な水を作り出した。そしてそれを上空に向かって放った。
「どこを狙っておるのじゃ? わらわたちはここじゃぞー」
と、クーアが人魚を挑発するようなしぐさでこう言った。だが、人魚たちは笑みを浮かべていた。
「あの人、勘違いしているようね」
「私たちの攻撃は、これで終わりじゃない」
人魚たちがこう言った後、上空に飛んだ巨大な水が急に凍った。それを見たベーキウは、驚きながらこう言った。
「あれはまるで、氷の槍じゃないか」
「まさか、あれで私たちを攻撃するつもり?」
「そうに決まっとるじゃろ。わらわに任せろ!」
クーアはそう言って、巨大な炎の柱を作り、宙に浮かぶ氷の槍を溶かした。氷の槍は水となり、雨のように周囲に散らばった。
「うっげぇ! 私たちの必殺技が!」
「魔力をかなり使ったのに!」
「悔しいけど、一度ここは戻るわよ!」
人魚たちはそう言って、海の中へ戻って行った。ベーキウとキトリは逃げる人魚を追いかけようとしたのだが、その前に人魚は逃げてしまった。
「逃げちゃった」
「海のサファイアのことを聞きたいんだけど……」
と、ベーキウとキトリは小さく呟いたが、シアンとクーアは海に向かってこう叫んでいた。
「二度と地上に上がるなあばずれ人魚がァァァァァ!」
「今度また現れてベーキウをさらおうとしたら、今度こそ刺身にして食ってやるからなァァァァァ!」
戦いに敗れた人魚たちは、急いで海の深くにある海の国へ逃げた。海の国には人魚以外にも、人の言葉を話す魚やタコなどが住んでいる。
「ん? どうしたの人魚のお姉さんたち」
と、近くにいたオレンジ色のヒトデがこう聞いた。人魚の一人はため息を吐いてこう答えた。
「イケメンを見つけて連れ帰ろうとしたけど、失敗したのよ」
「地上に行ったんだね。でも、人魚は地上では生きられないからあまり行かないことをおススメするよ」
「たまに刺激を求めたい時があるのよ。ヒトデのあんたには分からないでしょうが」
「分からなくていいよ。海の底が一番安心だからね」
話を終えた後、ヒトデは去って行った。その途中、巨大なマグロに跳ね飛ばされた。
「うわー! 海の底にも危険はあったー!」
「ごめーん。マグロは急に止まらないのー」
ヒトデとマグロの言葉を聞いた後、人魚たちは住処に戻った。
「ん? 人……じゃなかった、魚がいっぱいいるわ」
「誰かいるのかしら?」
人魚たちの住処の周りには、他の人魚や魚たちが集まっていた。人魚たちがその集まりの中央を見ると、そこには美しい人魚が歌声を披露していた。
「あ! アユ様だ!」
「住処にきたのね」
人魚たちは声を上げ、アユの周りに移動した。アユは人魚たちに気付き、笑みを浮かべた。
その後、アユは人魚たちと話をしていた。
「久しぶりにコンサートを開いてたの。知らせておけばよかったね」
「いいわよアユ様。アユ様は王女様なんだから、気軽に私たちの住処に遊びにきてください」
「大歓迎ですよー」
人魚たちは笑みを浮かべてこう言った。その後、アユは人魚たちにこう聞いた。
「そういえば留守だったけど、どこに行ってたの?」
「上の世界。そこでとびっきりのイケメンと会ったんだけどねぇ」
と、人魚たちはベーキウのことをアユに伝えていた。話を聞いていたアユは面白そうにこの話を聞いていた。
「あなたたちが一目惚れするレベルのイケメンか。一度、見てみたいなぁ」
「アユ様もきっと心を奪われますよ」
「あんなイケメン、この海にいませんよ」
「いるとしたら、ヒトデやエッチなことが好きなタコとイカ。それと何故か言葉を話すスポンジ。あんなのを見ても心は動きませんよ」
「上の世界かぁ」
アユはそう言って、ベーキウがどんな人なのか想像を始めた。そして、アユはあることを決めた。
「決めた! 私も上の世界に行ってみるわ!」
「おお! いいじゃないですか!」
「その時は私たちも付いて行きます!」
人魚たちはこう言ったが、後ろから出っ歯の魚が現れた。
「いけまへん! いけまへんでアユ様! 上の世界はどえらい危険でっせ!」
「サンマ」
サンマと言われた出っ歯の魚は、アユに近付いて言葉を続けた。
「いいでっか? 上の世界はワシら魚を食っちまうんや! 知り合いの魚も、この前捕まって食われちまったんや! いい奴やったんや。よく赤ちょうちんに行って一緒に飲んでたんや。よくどんな女性がタイプか、乳か尻のどっちが好きかで話してたんや。いい奴やったんだけどなー。あ、そうだ。あいつに貸した金会ったの忘れてたわー。まぁええや。捕まった時のことを聞いたんやが、そりゃー情けない話やったで。エロい魚に似たルアーを見て発情して、飛ぶように泳いで捕まったんや。発情するのも抑えた方がええでほんま」
「サンマ、話が長い」
アユはサンマを睨んでこう言った。サンマは変な笑い声を発した。
「ファー! こりゃーすんまへん。長話はワシの悪い癖。話し出したら暴走機関車のように止まらないんや。とにかく、どんな理由であれ、地上に行くのは反対や。海に住む魚は海にいればええ。それが決まりなんや! ファー!」
「サンマ、決まりって言うのはね、壊すために存在するのよ! 皆、行くわよ!」
アユはそう言うと、人魚たちと一緒に地上に向かって泳ぎ始めた。サンマは勢いで回りながら、こう言った。
「こ……こりゃーえらく大変なことになってもうたー」
サンマは回る体を止め、近くの岩場に近寄って吐き始めた。
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