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賞金稼ぎのヤイバ


 突如リゾート地に現れた海賊たちを追い払うベーキウたち。何とか追い払ったものの、攻撃から逃れた海賊がいた。だが、彼はヤイバと名乗る賞金稼ぎの手によって倒された。


 ヤイバと知り合ったベーキウたちは、リゾート地にある小さなレストランに向かい、話をすることになった。ベーキウたちは自分たちの素性を話すと、ヤイバは驚きのあまり、飲んでいた水が変なところに入ってしまった。


「ゲホッ! ゴフォッ! 見たことがある顔だと思ったら、まさか勇者パーティーとは思わなかったよ」


「まぁ、リゾート地に有名人がくるなんて、誰も思わないからな」


 ベーキウはそう言うと、ヤイバは咳き込んで話を始めた。


「それじゃ、俺のことも話をしておかないとな。俺は賞金稼ぎとして、この近辺に現れるハンガーって海賊を追いかけているんだ」


「ハンガー? ヘンテコな名前じゃのー」


 と、クーアがクリームソーダを飲みながらこう言った。クーアのこの言葉を聞いたヤイバは笑った後、話を続けた。


「確かにヘンテコな名前だろ? だけど、それなりに強いんだ。それに、用心深くて陸に上がるのも部下任せ。あまり顔を見せないんだ」


「部下にあれこれ指示をしているのね。で、自分は安全なところでのんびりしていると」


 キトリは浅漬けのキュウリを食べながらこう言った。ヤイバは少し考える素振りを見せた後、こう答えた。


「確かにそうかもな。だけど、何か重要なことがあったら自分で動くと思う。それに、あいつの部下もそれなりに強い奴がいるんだ。もしかしたら、かなり強いかもしれないぜ」


「そうねぇ。ま、戦いになったらけちょんけちょんにしてやるわ」


 シアンは笑みを浮かべながらそう言った。ヤイバは笑った後、シアンにこう言った。


「そりゃー大変だ。ハンガーには多額の賞金がかけられているんだ」


「賞金か。いくらかけられているんだ?」


「五百万ネカだな」


「ご……五百万!」


 ハンガーの賞金を聞いたクーアは、口にしていたクリームソーダをシアンの顔面に向かって吹き出してしまった。少しの間の後、額に付着したアイスクリームが机の上に落ち、それを皮切りにシアンがクーアに飛びかかった。


「このクソババア! 私の顔面にクリームソーダぶっかけるんじゃないわよ!」


「わざとじゃないわい! 堪忍してくれ!」


 シアンとクーアが騒ぎ始めたため、ベーキウは呆れてため息を吐いた。


「悪いな……いつもこんな感じだ。まぁ、俺たちは海賊の賞金が目的じゃなくて、この地にある宝が目的なんだ」


「宝? 宝探しか。ロマンがあるねぇ」


 ヤイバは面白そうな笑みを浮かべ、ベーキウにこう聞いた。


「で、何を探しているんだ?」


「海のサファイアって宝石だ。この近くにあるって聞いたんだけど」


 ベーキウの返事を聞き、ヤイバは何かを思い出したかのような顔をし、こう言った。


「聞いたことがあるぜ。噂だからあるかどうか知らないが、このリゾート地の深い海の底に、人魚たちが住む国がある。海のサファイアはそこにあるって」


「海の底……ねぇ」


 キトリはため息を吐いた。いくら強い魔力を持っている人でも、装備を持たずに深い海の底を行くのは難しい。潜水艦などを使えば楽なのだが、このリゾート地には潜水艦を貸してくれる場所なんてないのだ。


「難しいわね。どうすれば海のサファイアを手にできるのかな?」


「海の底に行くのは難しいしな。とにかく方法を考えないと」


 ベーキウの言葉を聞き、キトリは頷いた。




 話を聞いた後、ヤイバと別れたベーキウたちは改めてリゾート地へ向かった。海賊騒動が終わったためか、人が海に戻ってきていた。


「この中に人魚がいる……なんてことはないわね」


「人魚は海の中に住む……まぁなんて言うかモンスターのようなもんじゃ。あいつらは海にしか住めない。陸に上がるのは不可能じゃ。多分」


 シアンとクーアはそう言いながら、人々を見回していた。そんな中、金髪で日焼けした肌の二人組のダサい男が近付いてきた。


「ねぇねぇ、俺たちとイイコトしなーい?」


 と、軽い言葉をシアンとクーアにかけてきた。ナンパされていると察したシアンとクーアはダサい男を睨み、こう言った。


「あんたみたいなダサい男はこっちからお断りよ!」


「異性から好かれるために髪を金に染め、肌を焼いたのか? そんな単純なやり方で女が一目ぼれすると思うなよたわけが!」


 シアンとクーアの殺気を感じたダサい二人組の男は、悲鳴を上げながら逃げて行った。キトリはため息を吐き、小さく呟いた。


「シアンはともかく、クーアをナンパするなんてセンスがないわね……実年齢を知ればショックで金髪から白髪になるわね」


「おいキトリ、どさくさに紛れてとんでもない毒を吐くではない」


 クーアは黒い笑みを浮かべながら、キトリの肩を掴んだ。そんな中、ベーキウは慌てた表情でキトリにこう言った。


「悪い、あの人たちをどうにかしてくれ」


 ベーキウの後ろには、ベーキウの後を追いかける女性たちとムキムキの男たちの姿があった。キトリはため息を吐き、ベーキウの前に立ってこう言った。


「私のベーキウに手を出さないでください」


 こう言ったのだが、女性たちはキトリを見てこう言った。


「まぁかわいい。このお兄ちゃんのことが好きなんだね」


「でもね、君はまだ子供なんだよ。子供が恋をするなんて十年早いのよ」


「嬢ちゃん、男と男の間に入るのはタブーなんだぜ? 理解したらどいてくれ」


 と、誰もがキトリをかわいい子供を相手にするような扱いした。キトリは頬を膨らませながら魔力を開放し、足元の砂を闇の魔力で吹き飛ばした。


「分かったらさっさと去ってください」


 キトリの言葉を聞き、ベーキウを追っていた人たちは悲鳴を上げながら逃げて行った。また騒ぎになると思ったベーキウは、深いため息を吐いた。




 一方、ハンガー海賊団の海賊船。船長であるハンガーが部下を集めて話をしていた。

「捕まった部下たちを助けるのは後回しだ。今、あのリゾート地にはかなり強い戦士がいる。リゾート地へ向かうのは止め、落ち着いたら捕まった部下たちを助ける」


 ハンガーの言葉を聞き、部下たちは返事をして頷いた。その後、部下の一人がこう言った。


「船長、海のサファイアを探すのを優先にするんですか?」


「ああそうだ。数は減ってしまったが、海のサファイアを探すことはできる。おい、潜水艦の用意はできたか?」


「もちろんできてますぜ、船長!」


 部下の一人は意気揚々と声を上げ、部屋に入って潜水艦を持ってきた。


「見てください! こいつはふかーい海の底に潜っても壊れない、上から空気が流れる、サメとか襲われても反撃できる武装がある! 素晴らしい潜水艦です!」


 部下の言葉を聞き、ハンガーは目を輝かせた。だが、何か変だと察したハンガーは、潜水艦を軽く一発叩いた。すると、潜水艦の周りに付いていたパイプを止めるねじが吹き飛び、パイプが落ちた。そして、武器が下に落ち、潜水艦本体も壁が壊れた。


「おい、これ適当に作った奴じゃないか?」


「一応ネット販売で買ったんですけど……安物だからかなー?」


「こいつを包んでいた紙袋に、いろいろと書いてあった紙があったはずだ。取ってこい」


「すみません、捨てちゃいました」


「まだごみ収集の日ではないはず! まだあるはずだから取ってこい! 早く取ってこないと、サメのエサにしちまうぞ!」


「ヒッ、ヒェェェェェ!」


 脅された部下は、急いで部屋に戻って行った。ハンガーはため息を吐きつつ、自分の作戦が軌道に乗らないことをみじめに思えた。


「あーあ……いつもワガハイの思い通りにいかないなぁ……」


 と、ハンガーはタルの上に座り、小さく呟いた。


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