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海賊たちの襲撃


 リゾートで海のサファイアの情報を集めようとしていたベーキウたちだったが、海賊が現れてパニックが起きてしまった。


「はぁ、人が情報を集めてるっつーのに、現れなくてもいいじゃないの」


「ぼやかないでシアン。あいつらが攻めてきたら、片付けてやりましょう」


 ため息を吐くシアンに、キトリはそう言った。パニックが起きて数分後、砂浜から海賊らしき男たちが現れた。


「ヒャッハー! どこかに美女はいねーか?」


「ロリでもいいぞ! とにかく売って金になればいいんだからなぁ!」


 男たちはそう言いながら、血走った目で美女を探していた。


「あいつらの言葉を聞く限り、どうやら人身販売を行っているようじゃな。下種なことをすの」


「そうだな。少し、ぶっ飛ばしたほうがいいかもしれないな」


「ベーキウの言う通りね。武器はないけど、あの程度の雑魚なら武器なしでも問題ないわ」


「お仕置きが必要ね」


 ベーキウたちは会話をした後、男たちの元へ向かった。男たちはベーキウたちの気配を感じ、振り向いた。


「あん? 何だテメーら?」


「すげーイケメンだな。あっち系のお客様に人気が出そうだ。おい兄ちゃん、死にたくなければ俺たちの言うことを聞け」


 男の一人が、剣を持ってベーキウに近付いた。だが、ベーキウは右手に魔力を少し流し、硬化した右手で男が持つ剣の刃を粉砕した。


「あ……あらまぁ」


「何だこいつらは! 俺たちとやるつもりか?」


「やっちまえ!」


 ベーキウたちが戦意を持っていることを察した男たちは、剣や銃を持って襲い掛かった。


「あんたら、テレビやラジオで情報を得てないのね。今から戦う相手のこと、ちゃーんと覚えておいた方が身のためよ!」


 シアンはそう言うと、光の魔力を発して男たちに攻撃を仕掛けた。


「ギャァァァァァァァァァァ!」


「何だ、この力は! 感じたことも受けたこともない!」


「クソッ! こいつら……もしかして!」


 男たちは悲鳴を上げながら、砂浜の上に倒れて行った。攻撃から逃れた男たちの一部は、シアンを見て後ろに下がった。


「こいつら、噂の勇者パーティーだ! こんなところにいるなんて!」


「つかの間の休息でバカンスしにきたのか? クソ! 俺たちは間が悪い時にここにきたようだ!」


「逃げろ!」


 男たちはベーキウたちに適わないことを察し、逃げようとした。だが、魔力を開放したクーアが両手を砂浜の中に突っ込み、男たちが察しできないように下から電撃の攻撃を放った。


「イッギャァァァァァ!」


「下から電撃がァァァァァ!」


「あひィィィィィん! らめェェェェェ!」


 電撃を浴びた男たちは、悲鳴を上げながら倒れて行った。そんな中、男の一人がキトリを狙いに定め、剣を持った。


「あのバケモンが倒せないなら、こっちの大人しいガキを狙った方がいいなぁ!」


「私を狙うのね。呆れた」


 キトリはそう言うと、闇の魔力を発し、闇の剣を作り出した。それを見た男は目を丸くして驚き、恐怖で足が震え出した。


「な……何ですか? そ……その見た目が禍々しい剣は?」


「闇で作った剣よ。それであなたを斬ります」


 そう答えて、キトリは攻撃を始めた。闇の剣の攻撃を受けた男は悲鳴を上げながら吹き飛び、海へ落ちた。


「や……やばい相手を狙っちまったな」


「勝てねーよこんな奴らに」


「逃げるしかないって言ってるでしょうが!」


 その後、男たちは逃げようとしたが、目の前にベーキウが現れ、素手による攻撃で大半が倒れた。


「キャー! ベーキウ、かっこいい!」


「惚れなおすぞ!」


 ベーキウの動きを見ていたシアンとクーアが、黄色い声を上げた。他の女性たちも、ベーキウの動きを見て黄色い声を上げていた。そんな中、ベーキウを睨む男がいた。


「クソが! イケメンで強いからって、調子に乗りやがって! こっちは万年モテモテだったことがないんだよ! だから、イケメンは大っ嫌いだァァァァァ!」


 男は剣を持ち、ベーキウに斬りかかった。攻撃がくると察したベーキウは、左足を蹴り上げて男の顔面に命中させた。そして、男が落とした剣を素早く拾い、その剣で攻撃した。


「嘘……」


「少しだけ鍛えた格闘技でやられるなんて、お前はまだまだ弱いな」


 倒れる男を見て、ベーキウはこう言った。その言葉の直後、シアンたちの黄色い声が響いた。そんな中、男の一人がこっそりと戦いの場から去っていた。




 攻撃から逃れた男は、岩陰に隠れて連絡をしていた。


「もしもし、船長? 聞こえていますか?」


「ああ聞こえているとも。どうだ? 女子供を捕まえることができたか?」


「それが、勇者パーティーと遭遇してしまい、俺以外やられてしまいました」


「何だと! 勇者パーティーがここにいるだと!」


「すみません! 今、俺は隠れているんです。大声を出すのは控えてもらってもいいでしょうか?」


「ああすまん。まさか、勇者パーティーがいるとは思わなかった。クソッたれ。海のサファイアを探すついでに、奴隷市場で売ろうとする品物を確保しようと考えてたのに」


「世の中そう簡単にうまくいきませんね。とりあえず、俺は戻りますので、予定していた合流地点へ迎えをお願いします」


「分かった。お前だけでも逃げるんだ。捕まった奴らは、後で助ける」


「すみません、お願いします」


 船長との通話を終え、男は身を隠しながら合流場所へ向かった。その途中、一つの影が男の行く手を阻んだ。


「だ……誰だ!」


 男は急いで武器を手にし、目の前の影を睨んだ。影を見て、ベーキウたちではないことを確認し、安堵の息を吐いた。目の前にいたのは男の剣士。若くて、イケメンの男剣士だった。


「勇者パーティーじゃないか。よかった」


「勇者パーティー? へぇ、有名人がここにいるのか。いいことを聞いた」


「いいことを聞いたとしても、お前はここで血まみれになる運命だぜ」


 男は剣を持ち、男剣士を睨んだ。男剣士は男の話を聞き、タブレットを取り出してこう言った。


「えーっと……お前はハンガー海賊団の下っ端、テシターン。懸賞金は……たったの千ネカか。雑魚だけど、小遣い稼ぎにはなるかな」


 男剣士の言葉を聞き、苛立ったテシターンは大声を上げながら襲い掛かった。


「誰が雑魚だ! いい気になるなよ、小僧がァァァァァ!」


「いい気になるなよか。その小物が言うセリフ、いい加減聞き飽きたぜ」


 男剣士はそう言って、テシターンの攻撃をかわした。攻撃がかわされたことを察したテシターンは、すぐに男剣士の方を振り返って次の攻撃を放った。だが、その前に男剣士が鞘から剣を抜き、テシターンの腹を一閃していた。


「ガッ……ハ……」


 攻撃を受けたテシターンは、小さな悲鳴を上げてその場に倒れた。男剣士はため息を吐きながら、リュックを下ろして中から縄を取り出し、テシターンの体を縛った。そんな中、ベーキウたちの声が響いた。


「生き残りがこっちに向かったって聞いたぞ!」


「何が何でも捕まえて、あいつから話を聞き出すのよ!」


「何の話?」


「海のサファイアとか、ボスの名前とか!」


 しばらくして、ベーキウたちは男剣士の前にやってきた。ベーキウは男剣士の近くにいるテシターンを見て、こう聞いた。


「こいつ、あんたがやったのか?」


「ああ。雑魚だったぜ。あんたらが苦労して倒す敵じゃないよ」


 そう答えると、男剣士は立ち上がった。


「こちらからも質問だ」


「質問をする前に、あなたの名前と素性を知りたいわ」


「海賊を倒したから悪い奴じゃなさそうじゃが、素性を知らぬとこちらもやりにくいからの」


 キトリとクーアの言葉を聞き、男剣士は小さく笑ってこう答えた。


「俺は賞金稼ぎのヤイバ。以後、よろしくな」


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