圧倒的なトンカチ一家の力ッ!
パーフェクトクローンの群れを倒したベーキウたちは、急いで会場へ向かって走り出した。その様子を、チャンバはこっそりと物陰から見ていた。
あいつら、まさかあのヒダーリとミンギーを倒してしまうとは……そして、融合して巨大化したクローンまでもが、あっという間に倒された。
ベーキウたちの戦闘能力を目の当たりにしたチャンバは、心の中でこう思うと同時に、自分の計画が失敗に終わると考えた。だが、もう一つ残っている巨大な水槽を見て、チャンバは笑みを浮かべた。
廊下に出たベーキウたちは、急いで会場へ向かって走っていた。その途中、何かから逃げていたクローン戦士の群れと遭遇した。
「ゲェッ! なんか強そうな奴らがいるんだけど!」
「もしかして、俺たちが狙いか?」
「だとしたら戦うしかない! ぶつかって粉々になるだけだ!」
と言って、クローン戦士の群れはベーキウたちに襲い掛かった。
「面倒だな。すぐにリングに向かいたいってのに!」
そう呟きながら、前を走るベーキウはクレイモアを手にし、近くにいたクローン戦士を一閃した。
「ギャァァァァァバァァァァァン!」
「なっ! あっという間に一人やられた!」
「構えろ! 次に誰かが狙われるか分からんぞ!」
クローン戦士たちは身構えたのだが、シアンが素早く動いて攻撃し、あっという間に倒された。
「ビィィィィィファイタァァァァァ!」
「なっ、何じゃこいつら? 強すぎる!」
シアンの攻撃を逃れたクローン戦士たちは、急いで逃げようとした。だが、ジャオウが逃げようとしたクローン戦士を捕まえ、そのまま攻撃した。
「グハァッ!」
「ひ……酷し」
攻撃を受けたクローン戦士は、情けない声を上げながら消滅した。
「雑魚が多いな。だが、今の俺たちなら一撃で奴らを倒せる。この勢いのまま、走るぞ」
「ああ」
ジャオウの言葉の後、ベーキウたちは再び走り出した。
一方リングの上では、トンカチ一家がクローン戦士を返り討ちにしていた。
「ヒッ……ヒェェェェェ……」
「何だよこいつら、強すぎる」
「この強さ、残虐性、異常すぎる……」
無様な姿となって散っていく仲間を見て、クローン戦士は完全に戦意を失っていた。そんな中でも、ユージロコたちは容赦ない攻撃を行っていた。
「どうしたんだい? あんたたちから売ってきた喧嘩じゃないか。途中で逃げようだなんて、許せないよ」
そう言って、ユージロコは近くにいたクローン戦士の頭を掴み、リングの上に叩きつけた。仲間を助けようとしたクローン戦士だったが、ジャクミがクローン戦士の首元を噛みついた。
「ギィヤァァァァァ!」
首元の肉をちぎられたクローン戦士は、首を抑えて転げまわった。ジャクミは口にしていたクローン戦士の首元の肉片を吐き出し、口を拭いてこう言った。
「柔ラカスギル。モット鍛エナサイ」
「うわァァァァァ! 化け物だァァァァァ!」
ジャクミの行動を見たクローン戦士たちは、出入り口に向かって走り出した。だが、バキコが素早く突進を仕掛け、クローン戦士たちを吹き飛ばした。
「逃がすと思う?」
「がっ……がはぁ……」
突進を受けたクローン戦士は、その場で気を失った。そんな中、一部のクローン戦士たちは背を向けているデレラを見つけ、笑みを浮かべた。
「何だよ、弱そうな奴がいるじゃないか」
「あの女なら、俺たちでも余裕で勝てるな」
そう言って、クローン戦士たちはデレラに襲い掛かった。その時、デレラは襲おうとしているクローン戦士たちの方を振り返った。デレラの顔は倒したクローン戦士たちの返り血で赤く染まっており、その両手も血で赤く染まっていた。
「まぁ、私に喧嘩を挑むんですね? では早速楽しみましょう!」
デレラは笑顔を作り、クローン戦士たちに向かって走り始めた。
「いやァァァァァ! この人が一番やばい奴だったァァァァァ!」
「こっ……怖いよォォォォォ!」
デレラの本性を察したクローン戦士たちは、勝てないと思い逃げだした。だが、デレラに喧嘩を売った時点で彼らの運命は決まっていた。
「逃がしませんわよォォォォォ!」
デレラは嬉しそうな顔で高く飛び上がり、逃げだしたクローン戦士たちの前に着地した。
「ひェェェェェ!」
「無理矢理な形で回り込んできた!」
「つーか何この脚力? この人、本当に人間?」
「うだうだとやかましいですわ! さぁ、早く喧嘩をしましょう!」
と言って、デレラはクローン戦士たちに攻撃を仕掛けた。
「ぐわァァァァァァァァァァ!」
「びぎょわァァァァァ!」
「びェェェェェん!」
デレラの情け無用の攻撃は、クローン戦士たちをあっという間に倒していった。数秒で全滅したクローン戦士たちを見て、デレラはつまらなそうにため息を吐いた。
「これで終わりですか? つまらない」
その時、こっそりとチャンバの研究室から脱出していたパーフェクトクローンが、大会会場に現れた。
「脱出成功だニャン。あんなジジイの言うことなんて、聞けないニャン」
パーフェクトクローンを見たデレラは、嬉しそうな顔をした。
「まぁ! あんなに巨大な化け物がいるなんて思いませんでしたわ! これはすぐに喧嘩を売らないと!」
そう言った直後、ユージロコたちがパーフェクトクローンに襲い掛かった。
「あんたなら、もっと私たちを楽しませてくれそうね!」
「コンナノガイルナンテ、思ッテモイナカッタワ!」
「楽しいねぇ、本当に楽しいねぇ!」
すぐに行動を始めたユージロコたちを見て、デレラは声を上げた。
「お母様たちずるいですわ! 私も戦います!」
と言って、デレラは急いでパーフェクトクローンの元へ向かった。
数分後、ベーキウたちは会場に到着した。だが、すでにトンカチ一家によってクローン戦士たちは全滅していた。
「ありゃまー、私たちが出る幕じゃなかったわねー」
シアンはそう言いながら、塵になったクローン戦士たちを見た。ベーキウとジャオウは武器をしまい、周囲を見回した。
「化け物並みに強い奴がいたのか」
「そのようだな。だけどこれはやりすぎだろ」
「ベーキウさんの言う通りですね、リングがボロボロ……」
「うわぁ……掃除が面倒ね」
キトリとアルムはボロボロになったリングを見て、小さく声を上げていた。そんな中、観客たちや参加戦士たちの避難を終えたサンラと城の兵士が現れ、シアンたちに近付いた。
「あなたたちも避難してください。いつ、あのような化け物がくるか分かりません」
「大丈夫です。私たちは強いので。それよりも王子、今から大事なことを語るのでよく聞いてください。この騒動に関することですので」
シアンはそう言うと、チャンバがこの騒動の元であるとサンラと兵士たちに伝えた。話を聞いたサンラたちは驚き、声を上げた。
「そうであったか。あのチャンバ大臣が革命を考えていたとは」
「おかしいと思ったんだ。あの人の部屋からいつも変な音が聞こえるし、クローンとかなんか変な単語が聞こえてたし」
「いや、その時点でおかしいと思ったら調べろよ」
ベーキウはため息を吐いてこう言った。そんな中、戦いを終えたトンカチ一家がやってきた。
「あなたたち、戻ってきたのね」
「私たちが雑魚たちを片付けたけど……それよりもボロボロね、どこかで戦ったの?」
「ええ……あなたたちにも今回のことについて話すわね」
その後、シアンはトンカチ一家にも今回のことを伝えた。話を聞いたユージロコは笑みを浮かべた。
「じゃあ、さっさとチャンバ大臣を捕まえて血祭りに上げましょう」
「お母様の言う通りですね! 早速見つけて、とっちめましょう!」
「あれだけ暴れたのに、まだ戦うつもりか?」
人並外れた戦闘意欲と体力を持つユージロコとデレラを見て、クーアは小さく呟いた。その時、大きな音が聞こえた。
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