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何が何でも大きければいいという問題ではない


 ベーキウとシアンがヒダーリとミンギーと戦っている中、倒されたクローン戦士や、パーフェクトクローンの小さな残骸が、誰にも気づかれないように動いていた。複数ある小さな残骸は一つになると、巨大なクローンの形となった。その後、新たに形成されたクローンは、小さな残骸を寄せ集め、自身の体に吸収し始めた。




一方、何も知らないクーアたちはチャンバの部屋の出入り口の近くにいた。


「これでやっと、この部屋から出られる」


 そう言うと、レリルは安堵の息を吐いた。だがその直後、巨大な手が出入り口を破壊した。


「んぎゃァァァァァァァァァァ!」


「なっ……何じゃ今のは!」


「何かがいるのか?」


 びっくりして腰を抜かしたレリル以外は、周囲を見回した。すると、アルムが何かを見つけた。だが、驚きのあまり言葉を失ったためか、何を見たのか伝わらなかった。


「どうしたの? 何を見たの?」


 キトリはアルムの視線の先を見て、目を開いて驚いた。そこには、十メートルぐらいの大きさのクローンがいた。


「で……でかい」


「まさか、僕たちが倒したクローンの残骸が集まって、こんなにでかく……」


 アルムの言葉の直後、巨大なクローンは大声を発しながら、クーアたちに攻撃を仕掛けた。


「クソッ! 受け止めるしかない!」


 ジャオウは大剣を手にし、巨大なクローンの攻撃を受け止めた。受け止めた直後、ジャオウの足元が下に沈んだ。


「うぐあっ!」


「ジャオウ!」


 心配したアルムはジャオウに近付いた。キトリも一緒に動いたのだが、キトリとアルムは力を失ったかのように、その場でうずくまった。


「しまった……魔力が……」


「さっきの戦いで、使いすぎたかな」


 クローンたちとの戦い、そしてベーキウとジャオウの治療で魔力を使ったキトリとアルムは、悔しそうに呟いた。クーアはため息を吐き、魔力を開放してジャオウに近付いた。


「しゃーない。わらわの魔力を使え。力が上がるはずだ」


「た……頼む」


 クーアは自身の魔力をジャオウに注ぎ、体力を回復させた。その後、ジャオウは大声を発しながら巨大なクローンの攻撃を返した。


「すまない。助かった」


「礼を言うのは今ではない。前を見ろ、次の攻撃がくる」


 クーアの声を聞いたジャオウは、魔力を開放して二撃目の攻撃を防いだ。そのタイミングに合わせてクーアは飛び上がり、巨大なクローンの頭を狙って風の刃を放った。


「頭を狙えば、それなりにダメージを与えられるはずじゃ」


 クーアが放った風の刃は、巨大なクローンの頭に命中した。だが、傷はすぐに元に戻った。


「クッ、治る速度が速くなっておる。どうやってあいつを倒そうか」


 そう言いながら、クーアは床に着地した。




 それから、クーアとジャオウは巨大なクローンとの戦いに専念していた。レリルは魔力切れのキトリとアルムを安全な場所に避難させた後、バックを探った。


「何をするの?」


「チョコか何かあったはずだから、探しているのよ。それ食べて元気出しなさいよ。えっと……あ! あったあった」


 レリルはバックから板チョコを出し、半分にしてキトリとアルムに渡した。キトリはチョコを手にし、レリルを見てこう言った。


「優しいところもあるのね」


「こんな状況よ。人に冷たくしてたら最悪な目に合うわ。それよりも。あのクローンをどうするかよ。再生するし、どうやって倒せばいいのか分からない……」


 この時、レリルはあることを思い出した。それは、キトリがどうやってクローンを倒していたかだ。


「ねぇ魔王の娘。あんた、どうやってあのバケモンを倒したの?」


「え? 魔力を使って戦ってたけど……それと、全身を包むように魔力を浴びせてたわ。切り刻んだりもしたけど……そう言われたら、どうやって倒したかなんて考えてなかったわ」


「なるほどねぇ……もしかしたら」


 あることを思いついたレリルは、急いでクーアとジャオウの元へ向かった。




 ジャオウは大剣を振り回しながら、巨大なクローンに攻撃をしていた。ジャオウの大剣がクローンの腕を斬っても、トカゲのしっぽのように生えてくる。その隙にクーアが魔力を使った攻撃を当てても、すぐにダメージが回復する。


「まずいな、このままだとこっちの体力と魔力が切れてしまう」


「クローンが合体して、再生能力も強くなったのか? 余計な能力まで強くなりおって!」


「文句を言っても仕方がない。なっ! 奴の攻撃がくるぞ!」


 ジャオウの言葉を聞いたクーアは後ろに下がり、ジャオウは魔力を開放してクローンの攻撃を受け止めた。その時、レリルがクーアに近付いて魔力を注いだ。


「おわっと! わらわに何をした!」


「強化しただけよ! あいつを倒す方法が分かったわ!」


「何じゃと!」


「あいつは攻撃を受けたらすぐに再生するっぽいけど、全身を覆う攻撃には弱いわ!」


「全身を覆う?」


「巨大な炎で焼けってこと! これは私の推測だけど、あいつには心臓にあたる部位が体のどこかにある。そこを攻撃すれば、倒せるはずよ! それと、奴の弱点は特殊な魔力! それさえ当てれば、ダメージを与えられるかもしれないわ!」


「そうか。助言ありがとな!」


 クーアはレリルに礼を言うと、高く飛び上がって魔力を開放した。クーアが何をするか理解したジャオウは魔力を開放したが、レリルが近寄って魔力を注いだ。


「強化するわ。それなら、あいつをズタズタにできるわ!」


「ああ、ありがとう!」


 ジャオウは礼を言った後、大剣を持って素早く動いた。巨大なクローンはジャオウが攻撃を仕掛けてくると察したが、あまりの速さに目が追い付けなかった。


 この動きなら、奴も見切ることはできまい!


 ジャオウはそう思い、大剣を振るって攻撃を仕掛けた。その結果、巨大なクローンの体はバラバラになった。


「いいぞ! 細かくバラバラになったのなら、あっという間にわらわの炎で塵にできるわァァァァァ!」


 宙に浮いているクーアはそう言うと、ありったけの魔力を開放して強い炎を発し、バラバラになった巨大なクローンの体を焼いた。高熱がクローンの体を襲い、あっという間に塵になった。


 しばらくして、クーアは炎を消して地面に降りた。床には広範囲に広がる焼けた跡があり、その上には何も残っていなかった。


「ふぅ、これでクローンは全部片付いたようじゃの」


「ああ。何とかなったな」


 ジャオウは大剣をしまいながらこう言った。そんな中、疲れ切っていたキトリとアルムが立ち上がり、ヒダーリとミンギーとの戦いを終えたベーキウとシアンが合流した。


「そっちの方も戦いがあったんだな」


「大変じゃったよベーキウ。巨大なクローンがわらわたちを襲ったのじゃー」


 と、クーアは猫なで声でベーキウに近付いたが、シアンがクーアの首を掴んでベーキウから遠ざけた。


「何かわい子ぶってんのよ? あんなことをして、かわいいと思うの?」


 シアンは黒焦げになった床を見て叫んだ。クーアは鼻で笑い、ベーキウに近付いた。


「美しいバラにとげがあるように、美しい何かにはちょっとした危ないものが仕込まれておるのじゃ。それもその一環ってことで」


「訳の分からないことを言うんじゃないわよ! そもそもあんたは美しくないわよ、ロリババア!」


 シアンとクーアの喧嘩が始まると察したベーキウとジャオウは、呆れながらもシアンとクーアを止めた。


「おいおい、喧嘩は止めてくれ」


「騒動はまだ終わっていない。外に出て、状況を確認しないと」


 ジャオウの言葉を聞き、シアンはリングの上で戦っているトンカチ一家のことを思い出した。


「あの人たち……無事ならいいけど」


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