沼地でヌメヌメ大騒動
モリモーリの森にあるアオクーサを何とか手にしたベーキウたちは、二つ目の素材であるイエロースライムを取りに向かった。
人々の話を聞き、ベーキウたちはある沼地の前にたどり着いた。シアンは情報をまとめたノートを手にし、目の前の沼地を見て口を開いた。
「どうやら、ここがヘドロマミレって沼地らしいね」
「ここがそうか……」
と、クーアが嫌そうな顔で嫌そうにこう言った。ベーキウとキトリは鼻をつまみ、嫌そうに前を見ていた。腐った水の臭いが周囲に漂い、沼の上にはなぜかでかくなったハエや気持ち悪い形のトンボなどが飛んでいた。
「どうしてあんなに気持ち悪い虫があちらこちらに飛んでいるんだ?」
「沼地が関係しているかもしれないわ。沼から感じる気持ち悪い何かが、虫を異質な形に変えたかもしれない」
「まぁ、イエロースライムのような変なもんがある沼地じゃかろのう。にしても……この腐って気持ち悪い場所からイエロースライムを探すなんて難しいの」
クーアは鼻をつまみ、嗚咽しながら沼を見た。その時、クーアは足を滑らせて沼の中に入ってしまった。
「クーア!」
ベーキウは急いでクーアの元へ向かい、腕を伸ばした。クーアはベーキウの腕を掴み、何とか上へ這い上がった。
「うわーん! 臭いよー、ヌメヌメして気持ち悪いよー!」
汚れてしまったクーアは、泣きながらこう言った。シアンとキトリは顔を見合わせ、ため息を吐いた。
「キトリ、水の魔力って使える?」
「無理。シアンは?」
「光以外使えない」
「じゃあ俺が使うよ」
と言って、ベーキウは魔力を解放し、水を発してクーアに付着した汚れを流した。
「はぁ……汚れは落ちたものの、びしょ濡れになっちまったのう」
「汚れが落ちたんだから別にいいじゃないの。それよりも、今からこの沼を調べるから、また汚れることを覚悟した方がいいわよ」
シアンはそう言って、あらかじめ用意していた、汚れてもいいような服に着替え、沼地へ向かった。ベーキウとキトリも汚れてもいいような服に着替え、沼地へ向かった。クーアはため息を吐き、すぐに着替え始めた。
沼地へ向かったベーキウは、周囲から漂う異臭に我慢しながら、イエロースライムを探していた。
「ぐうう……ガスマスクも用意しておけばよかった」
そう呟きながら、前を歩いた。しばらく歩いていると、前の沼から泡が発した。
何か出る。
何かが現れると思ったベーキウはすぐにクレイモアを手にし、前を見た。しばらくして、三匹の奇妙な形の魚が飛び上がった。それを見たシアンは、急いでベーキウにこう言った。
「あいつらはバツチーピラニア! 沼地に住む危険なピラニアだよ!」
「ピラニアか。相手になってやる!」
ベーキウは自分に向かって飛んでくるバツチーピラニアを見て、タイミングを合わせてクレイモアを振るった。クレイモアの刃はバツチーピラニアに命中し、沼の上に叩きつけた。
「まず一匹」
一匹倒したことを把握したベーキウは、残りの二匹のバツチーピラニアを睨んだ。その直後、キトリが放つ闇がもう一匹のバツチーピラニアを襲った。
「後一匹はベーキウの方で何とかできる? 今の状態だと、一匹しか倒せない!」
キトリの言葉に対し、ベーキウは頷いた。
「ああ、何とかできるさ。残りの奴を倒してくれてありがとな、キトリ!」
ベーキウからお礼の言葉を言われ、キトリは顔が赤くなった。その後、ベーキウは最後のバツチーピラニアを倒し、キトリの元へ向かった。
「キトリがいなかったら、後一匹は倒せなかったよ」
「役に立ててよかった。でも、まだバツチーピラニアが襲ってくるかも」
「それならまた倒すだけだ」
と、ベーキウはこう言った。シアンはなんだかいい感じの二人を見て、少しイラッとしていた。
「キトリ……ベーキウといい感じにイチャイチャして羨ましい。私だってベーキウとイチャイチャしたいのに……」
殺気を放つシアンに対し、背後から巨大なバツチーピラニアが襲い掛かった。沼から飛び出した際の音を聞いて巨大なバツチーピラニアの存在を察したシアンは、大声を上げた。
「うるせーんだよ、食材にもならない汚らしいピラニアが! テメーらは沼の中の石でも飲み込んで腹を満たしとけ!」
激しい怒りを込め、シアンは巨大なバツチーピラニアに一撃を与えた。攻撃を受けた巨大なバツチーピラニアは大きなしぶきを発しながら沼の中に入ったが、しばらくして沼の上に浮いた。
「ケッ、雑魚が調子に乗るからこうなるのよ!」
シアンは倒れた巨大なバツチーピラニアに向かってこう言うと、誰かがシアンの肩を叩いた。ベーキウが自分のことを気にしてくれていたのだろうと期待したシアンは急いで笑顔を作り、背後を見た。
「どうしたのベーキウ? ひょっとして、私ともイチャイチャしたいのー?」
そう言ったのだが、シアンが目にしたのは顔面に泥が付着したクーアだった。
「おいシアン。これ、どうしてくれるんじゃ?」
「えーっと……泥パックってことでいいんじゃない?」
「こんな汚い泥パックがあってたまるかァァァァァ!」
そう言いながら、クーアはシアンの顔面に向かって泥を投げた。クーアが投げた泥は見事にシアンの顔面に命中した。
「やったわねババア。わざとやってないってのに」
「反省の言葉がないじゃろうが。まったく、最近の若者は謝ることを知らないのか?」
この言葉を聞いたシアンは、再び怒りが爆発しそうになった。そのタイミングで、別の巨大なバツチーピラニアが現れた。
「さっきからうるさいのよ、このクソピラニアがァァァァァ!」
シアンは魔力を解放し、左手を光らせた。そして、襲ってくる巨大なバツチーピラニアに向かって左の拳を叩きつけた。その衝撃で、周囲の沼が吹き飛んだ。
「オワッ! 何やってんだシアン!」
「そんなことをやったら、私たちまで汚れちゃうじゃない!」
ベーキウとキトリが慌ててこう言ったが、シアンのこの攻撃で周囲の沼地の地面が見えた。その時、ベーキウは小さく動く黄色い物体を見つけた。
「あれは……まさか!」
ベーキウは慌てて黄色い物体の方へ向かった。ベーキウの接近を察した黄色い物体は慌てて逃げようとしたが、キトリが行く手を阻んだ。
「こいつがイエロースライムね。大丈夫。ちょっとだけ粘液が欲しいだけだから」
と言って、キトリはイエロースライムに近付いて、空の小瓶をイエロースライムに近付けた。すると、イエロースライムの一部が空の小瓶の中に入った。それを確認したキトリは小瓶を持ち上げ、栓をした。
「これで目的は達成したね」
「ああ。よかった」
ベーキウは難なく二つ目の素材を手にしたことを察し、安堵の息を吐いた。だが、ベーキウは今後のことを考えてため息を吐いた。汚い、臭い沼地の中を探索したため、今のベーキウたちはかなり汚れているのだ。
「うわーん。早くシャワーを浴びたいよー」
「シアンのせいで無数の泥がわらわにかかったわ。これ以上わらわの美少女フェイスが汚くなったらどーしてくれるんじゃ!」
「八十五を超えたババアが美少女とかほざくんじゃないわよ!」
シアンとクーアは罵り合いをしながらベーキウとキトリの元へ近づいた。ベーキウはため息を吐き、こう言った。
「とりあえず一度沼から出よう。それから、俺の魔力で皆の汚れを流すから」
沼から上がったベーキウは、すぐに魔力を解放して上から水を流した。
「はぁ……ベーキウの水……ベーキウの水」
「シアン、あまり変なことを言うな。誤解を与える可能性がある」
水を浴びてリラックスするシアンを見て、ベーキウはこう言った。キトリは水を浴びながら、小さくこう言った。
「シャンプーと石鹸があればよかったんだけど」
「そこまで用意してないぞ」
「まぁ、ここで汚れを落としたら一度近くの町によるとするか。わらわのリサーチによると、そこの町は温泉があるようじゃぞ」
クーアのこの言葉を聞いたシアンとキトリは、ベーキウの肉体美、そしてよいこの皆が見ているこの場では表現してはいけないことを考えていた。そのことを察したのか、ベーキウは悪寒を感じてくしゃみをしていた。
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