あれ? 今回の章って主人公とライバルが活躍してないような気がする
レリルの脅しにより、部下は仕方なくベーキウとジャオウを開放することにした。このことを察したチャンバは、大きな声を上げた。
「あー! 貴様、勝手にクローンの素材を開放するな!」
「これ以上臭い思いをしたくないんすよ! このサキュバスから、強烈なニンニク臭がするんですよ!」
「そんなこと、ワシが知るか!」
「じゃああんたも嗅げばいい! あんたは歳だから、臭いを嗅いだ瞬間ぽっくり逝くかもな」
「臭いで人が死ぬか! とにかく、もう一度素材を元に戻せ!」
チャンバはこう命令し、部下はどうしようか考えた。だが、レリルが笑みを浮かべながら近づいた。
「私の言うことを聞かないの?」
「ギェェェェェ! 分かりました! チャンバさん、マジすいません!」
その後、部下は急いで水槽を開けた。大きな音を発しながら扉は開き、中で充満していた煙が一斉に外に放出された。そして、その中にいたベーキウとジャオウがその場に倒れた。
「ベーキウ!」
「ジャオウ!」
キトリとアルムは急いで倒れたベーキウとジャオウの元に駆け付けた。キトリはベーキウの左胸に耳を当て、心臓の鼓動が聞こえることを確認した。
「よかった、ベーキウは生きてるわ」
「ジャオウも生きてるよ。はぁ……とりあえず安心した」
「安心するのは早いわよ。見てよ、あのジジイ苛立ちで地団太してるわ」
レリルの声を聞き、キトリとアルムは地団太をするチャンバを睨んだ。
「あーチクショウ! せっかく手に入れたクローンの素材が、奪われてしまった!」
チャンバは怒鳴り声をあげていたのだが、しばらくしてあることを思いついた。
「そうだ。とっておきのクローン戦士がいたんだ。そいつを動かせば、あいつらなんてコテンパンにできるはず!」
そう言うと、チャンバは急いで走り出した。チャンバが何かをやろうとしていると察したキトリは、アルムの方を見てこう言った。
「あの人を追いかけてくる。ベーキウをお願い! 決して、あのサキュバスに触らせないで!」
「分かりました!」
「分かりましたって何よアルム! あんた、どっちの味方なのー!」
レリルの怒声を聞き流し、キトリは急いでチャンバの元へ向かった。チャンバはキトリが追いかけてくることを察し、道中でさぼっているクローン戦士たちにこう言った。
「おい! あのガキを止めろ! これは命令だ!」
「嫌っす」
「面倒」
「あんたがやりゃーいいだろうが」
と言って、クローン戦士たちはそっぽを向いた。苛立ったチャンバは、大きな声で叫んだ。
「言うことを聞かんかい! お前たちを作ったのはこのワシじゃ! 大人しくワシの命令を聞かんかい!」
「それじゃあ、戦いが終わった後で奇麗なねーちゃん紹介してくれよ」
「あんた、一応この国のお偉いさんだろ? 美人の一人や二人、知ってるはずだろ?」
「芸能人でもいいぜ。あんた、つながりがあるだろ」
クローン戦士たちは、鼻の下を伸ばしながらこう言った。チャンバはうなり声を上げながら、クローン戦士たちにこう言った。
「分かった! 知り合いの熟女系エロビデオに出演している女優を紹介してやる!」
「えー、熟女っすか?」
「俺たちは若い子がいいんですけど」
再びクローン戦士たちのブーイングが流れた。チャンバは強く地面を踏み、こう言った。
「分かった! 知り合いの知り合いに頼んでみる! だから、あの小娘を倒せ!」
「あいあーい」
クローン戦士たちはやる気を出し、キトリに襲い掛かった。
キトリは走る中、目の前に迫るクローン戦士たちを見て、魔力を開放した。
「悪いけど、ぶっ飛んでもらうぜ嬢ちゃん!」
「お前を倒せば、俺たちは美人とにゃんにゃんできるんだ!」
「大人しくやられてくれ!」
魔力を開放したキトリを見ても、クローン戦士たちはたじろぐことはせず、勇敢に戦い始めた。
「一対多数……これはちょっときついわね。本気を出さないと!」
不利な状況だと察したキトリは、開放した魔力を利用して足元から無数の闇の刺を発した。
「ゲッ! 下から攻撃かよ!」
「避けられるかよ、こんな攻撃!」
「卑怯だぞー!」
攻撃を受けるクローン戦士たちは文句を言ったが、キトリは容赦なしに攻撃を仕掛けた。
「戦いに卑怯も何もないわ。あなたたちを倒すなら、何でも使うわ」
「じゃあ、こんな手を使っても文句は言わねーよな!」
クローン戦士の一人が、巨大なタルを担ぎ、こう言った。そして、キトリ向かって巨大なタルを投げた。
「原始的な攻撃ね。呆れた」
キトリはそう呟くと、闇を使って飛んでくる巨大なタルを切った。タルの中身に入っていた緑色の液体が周囲にばらまき、クローン戦士たちにかかった。
「何これ?」
「メロンジュースか?」
「いや違う。これは培養液だ! うっしゃ! これでパワーアップだ!」
培養液を口にしたクローン戦士たちは、パワーアップしてキトリに襲い掛かった。キトリは攻撃をかわしつつ、闇を使って攻撃を仕掛けた。だが、パワーアップしたクローン戦士たちはキトリの攻撃を難なくかわした。
「見える! 見えるぞ!」
「お前の動きが分かる!」
「これで逆転だな!」
クローン戦士たちの強気な言葉を聞き、呆れた表情のキトリは言葉を返した。
「パワーアップしたようだけど、雑魚がいくら強くなっても、雑魚は雑魚なのよ」
キトリはそう言うと、目の前に闇を発し、クローン戦士たちに向かって投げた。
「はん! 魔力の塊をぶっ飛ばして攻撃するつもりか!」
「こんな単純な攻撃、楽に避けられるんだよ!」
クローン戦士たちはキトリを罵倒しながら、闇から逃げた。だが、闇は途中で破裂し、周囲にいたクローン戦士たちを攻撃した。
「グワァァァァァ!」
「こんなのってありかよ!」
「パワーアップしたのに……」
キトリの闇を受け、クローン戦士たちの体は塵になって消えた。消えていく仲間を見た巨大なタルを投げたクローン戦士は、キトリが自分の方を向いていることを知り、逃げようとした。だが、その前にキトリは闇の矢を放ち、クローン戦士を倒した。
クローン戦士たちが足止めをしている中、チャンバは他の水槽よりも、倍以上の大きさの水槽の前に到着した。
「革命をする時に使いたかったが、仕方あるまい。作戦を変更するしかない! 今から、革命を行う!」
チャンバはそう言うと、近くのボタンを押した。すると、部屋中に付けられている非常ランプが音を発しながら、赤く光り出した。チャンバの近くに到着したキトリは、慌てながら周囲を見回した。
「な……何? 何が起こるっていうの?」
「ハーッハッハッハ! お前たちはもう終わりだ! 今から出てくるクローンは、他のクローンよりも強い! はっきり言って、世界最強だ! お前たちなんて、楽に始末してくれるだろう!」
チャンバの言葉を聞き、キトリは急いで闇を開放し、大きな水槽を攻撃しようとした。だが、闇が水槽に命中する前に、大きな水槽はゆっくりと動き出した。
「しまった!」
「さぁ、出てくるがいい! 世界最強で、完璧なクローン! パーフェクトクローンよォォォォォ!」
チャンバの声に合わせるかのように、水槽の中から巨大なクローン戦士が現れた。クローン戦士はチャンバの方を見て、礼儀正しく頭を下げた。
「フハハハハハ! 他のクローンよりも、ワシに対して忠誠心もあるというのか! 素晴らしい!」
「ご主人様。このパーフェクトクローンに命令をお願いしますニャン」
パーフェクトクローンのかわいらしい声を聞き、一瞬チャンバは戸惑った。
「もしかして、メイド喫茶で働く人の細胞がどこかで入ったのかな? まぁいい! パーフェクトクローンよ、あの小娘を倒せ!」
「了解しました。私の全てをかけて、あの女の子を始末しちゃいますニャン」
と言って、パーフェクトクローンはキトリに襲い掛かった。
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