大会どころじゃなくなっちゃったよ
サンラは目の前の光景を見て、驚いて立ち尽くしていた。
「何だあの化け物は? 人のような、モンスターのような……」
「サンラ王子! ぽけーっとしている場合ではありません! 我々も逃げないとやばいですよ!」
近くにいた兵士の言葉を聞き、サンラは逃げようとした。だが、サンラはリングの上に立つシアンを見て、こう言った。
「逃げ遅れている人がいる! 助けないと!」
そう言って、サンラはリングへ向かった。兵士は驚きつつも、慌ててサンラを追いかけて走り出した。
シアンは剣と盾を持ち、目の前のクローン戦士を睨んでいた。
「とりあえずあんたは敵ってことでいいわね」
「俺の邪魔をしなければな。邪魔をしたら敵って判断する」
「あんたの邪魔? あんたは一体何をするつもりよ?」
「自由を得るために、この場から脱出する」
「あんたにとって自由の意味は?」
「誰にも縛られず、暴れることだ」
「そう。でも、あんたを自由にしたら迷惑がかかるから、ここでぶっ倒すわ!」
会話を終えた後、シアンはクローン戦士に向かって剣を振り下ろした。クローン戦士は後ろに下がり、左腕を刃に変形させてシアンに向かって伸ばした。シアンは攻撃を盾で防いだ後、剣でクローン戦士の腹を突いた。
「グウッ!」
攻撃を受けたクローン戦士は後ろに下がり、両腕を伸ばしてシアンを掴み、大きく振り回してリングの外に落とした。
「これでリングアウトってわけだな」
「これは試合じゃないわよ。本気の戦いよ!」
シアンは魔力を開放し、高くジャンプしてクローン戦士の近くに着地した。目の前に着地したシアンを見て、クローン戦士はにやりと笑った。
「わざわざ近くに着地して何のつもりだ? 俺にぶっ飛ばされたいのか?」
「ぶっ飛ぶのはあんたよ!」
シアンはそう言うと、剣に魔力を込めた。次の瞬間、剣の刃の周りに光り輝く魔力のオーラが現れた。
「ゲェッ! あれで斬られたらマジでやばい!」
「これでぶっ飛べ!」
叫び声を発しながら、シアンは剣を振り下ろした。魔力によって威力が上がっている斬撃は、クローン戦士に命中した。
「ガァァッ!」
攻撃を受けたクローン戦士は後ろへ吹き飛び、壁に激突した。シアンは魔力を抑え、クローン戦士の元へ向かった。
「ぐ……うう……」
「話して。あんた一体何者?」
シアンがこう聞くと、クローン戦士は苦しそうにこう言った。
「俺は……クローン。作られた戦士だ」
「作られた戦士? 誰があんたを作ったのよ?」
「へへ……それだけは教えられねーなぁ」
シアンはその言葉を聞いて苛立ち、クローンの首を掴んだ。
「教えなさい。でないと、もう一発攻撃を与えるわよ」
「そりゃー勘弁。あーあ、せっかく逃げて自由になったっつーのに……」
クローン戦士がそう言った直後、体が急にしわだらけになり、徐々に干からびた。いきなり干からびたクローン戦士を見て、驚いたシアンは悲鳴を上げて後ろに下がった。
「え? え、え? 何なのよもう」
動かなくなったクローン戦士を見て、シアンは小さく呟いた。その時、後ろから足音が聞こえた。シアンが後ろを振り向くと、そこには大量のクローン戦士がいた。
「うっわぁ。あいつ、あんなに仲間がいたのね」
「あいつ、俺たちの仲間を倒したぞ」
「それなりに強いな。皆で戦えば、どうにかなるな」
「やるしかない。自由のために、戦うんだ!」
クローン戦士たちはそう話をすると、シアンに向かって走り出した。
控室にいたデレラは、リングの方での騒ぎに気付き、外に飛び出した。
「何かあったのですか?」
外を見ると、リングの上では大量のクローン戦士に襲われているシアンの姿があった。
「まぁ大変! 助太刀に参ります!」
デレラは高く飛び上がり、シアンの近くに着地した。
「え? あなたはデレラさん!」
「助太刀に参りました。で、あれは一体何なんですか?」
「分からないわ。それなりに強いから、気をつけてください」
「それなりに強い? まぁ嬉しい! 楽しい喧嘩になりそうね」
と、嬉しそうにデレラはこう言った。美しい見た目から予想できない物騒な言葉を聞いたクローン戦士たちは、動揺しながらもデレラに襲い掛かった。
「とりあえず敵なら、ぶっ倒す!」
「俺たちを恨むなよ、美人の姉ちゃん!」
デレラの近くにいるクローン戦士が、右腕を伸ばして攻撃を仕掛けてきた。デレラは攻撃を見切り、クローン戦士の右腕を掴んだ。
「チッ、しくじった!」
右腕を掴まれたクローン戦士は舌打ちをし、すぐに右腕を元に戻した。その時、右腕を掴んでいたデレラも一緒についてきた。
「オラァッ!」
デレラはタイミングを見計らい、クローン戦士の右頬に蹴りを放った。蹴られたクローン戦士は後ろに吹き飛んで倒れる中、周囲にいた別のクローン戦士がデレラに襲い掛かった。だが、デレラはクローン戦士の攻撃を見切り、反撃を行った。
「うっげぇっ!」
「この美人、強すぎる!」
「俺たちじゃ勝てましぇん!」
攻撃を受けたクローン戦士たちは、泣き言を言いながら後ろに下がった。攻撃を終えたデレラは挑発するようなしぐさをし、クローン戦士たちを見つめた。
「これで終わりですか? つまらないですね」
「クソッ! こうなったらやけくそだ!」
クローン戦士たちは叫び声を上げながら、デレラに向かって走り出した。だが、その前にシアンが現れ、一閃された。
「一人で無茶をしないでください! こいつら、結構強いんですよ!」
「強ければそれだけ燃えるってことですわ! 私のことは気にしないでください! それと、戦って分かりました。こいつら雑魚です!」
デレラの雑魚発言を聞き、クローン戦士たちは怒り出した。
「この女、俺たちを雑魚って言いやがった!」
「クソッたれ! 俺たちにもプライドってもんがあるんだよ!」
「こうなったらみーんなまとめてやっつけてやる!」
怒り狂ったクローン戦士たちは、一斉にデレラに襲い掛かった。
一方、何も知らないサンラはリングの近くに到着し、大声でシアンとデレラに向かって叫んだ。
「こちらから逃げることができます! 急いで!」
その言葉を聞いたシアンは驚き、大声で言葉を返した。
「あなた、確かこの国の王子様ですよね! 私たちは大丈夫ですから、あなただけでも先に逃げてください!」
「いえ、あなたたちをその場に残して逃げることはできません! 早くこっちへ!」
この言葉を聞き、シアンは小声で呟いた。
「ありがたいけど、逆に戦闘能力がない人がこの場にいたら、ちょっと嫌なんだけど」
その時だった。サンラの存在に気付いたクローン戦士の一部が、サンラがいることを察したのだ。
「ケッケッケ。弱そうな奴がいるぜ。むしゃくしゃしているから、血祭りにしてやるぜ!」
と言って、クローン戦士の一部はサンラに襲い掛かった。突如襲い掛かってきたクローン戦士を見て、サンラは驚き悲鳴を上げた。そんな中、デレラがクローン戦士より早く走り、サンラの前に立った。
「あいつらは私が倒します! あなたは逃げてください!」
「すみません……足が動きません」
「そうですか。では、そこにいてください。私があなたを守りながら戦います!」
デレラはそう言うと、戦う構えを取った。クローン戦士はデレラの姿を見て動揺し、足を止めた。
「やべぇ、あの女が前にいるよ」
「確かあの女、俺たちの仲間を笑いながらぶっ飛ばしていたよな?」
「あんな奴に勝てねーよ。逃げよう」
デレラに勝てないことを察したクローン戦士は、急いで逃げた。デレラは猛スピードで走り出し、逃げたクローン戦士の一人に飛び蹴りを浴びせた。
「知っていますか? 弱者は強者から逃げられない!」
「ひっ……ひェェェェェェェェェェ!」
その後、デレラの容赦ない攻撃が、クローン戦士に襲い掛かった。
この作品が面白いと思ったら、高評価とブクマをお願いします! 感想と質問も待ってます!




