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チャンバ大臣の自白


 城内を調べていたキトリたちは、今回の事件の黒幕、チャンバの部屋に入ろうとした。だが、扉には鍵がかかっていた。


「あら、開かないわ」


「とりあえず、誰かがいると思いますので、ノックして返事を待ちましょう」


 アルムは律儀に扉を叩き、反応を待った。部屋の中では、ノック音を聞いたチャンバたちが慌てていた。


「おわっ! 誰かが部屋の前にいる!」


「どーしましょ。どーしましょ。どどどど、どどどど、どーしましょ」


 部下が慌て始めたのだが、チャンバはため息を吐いて部下を落ち着かせた。


「落ち着け。ワシが相手するから、お前はクローンを作れ」


「分かりました」


 チャンバは扉に近付き、咳払いをしてこう言った。


「誰だ? ここがワシの部屋だと知らないのか?」


「あんた誰ー? 相手を見下しているような口調で腹立つわねー」


 外から聞こえたのは、レリルの声だった。聞いたことのない声だったので、チャンバは再びこう言った。


「お前こそ誰じゃ! 名を名乗れ!」


 チャンバの言葉の後、しばらくの間をおいてキトリの声が聞こえた。


「私は勇者シアンの仲間、キトリと申します。さっきの声は腐れ縁のサキュバスです。実は、私の仲間のベーキウがどこかへ行ってしまいました。どこかの部屋に迷い込んでしまったと思い、部屋中を見ていますが……」


 キトリの言葉を聞き、チャンバは動揺した。ベーキウの仲間であるキトリが、すぐ目の前にいるからだ。


「あ……ああそうか」


「僕はアルムと申します。僕の仲間、ジャオウも行方が分からないんです。その部屋にいますか?」


 次に聞こえたのはアルムの声だった。まずいと思ったチャンバは、頭をフル回転させてどうにかこの場をごまかそうと考えた。


「いやー、知らんな。そうだ、自己紹介をしておこう。ワシはこの国の大臣、チャンバだ」


「大臣の部屋だったんですね。申し訳ございません」


「チャンバ大臣、城の中で怪しいモンスターと言うかなんというか……とにかく変な化け物がうろついていましたので、一人で部屋に閉じこもるのは危険です。できれば、兵士や信頼できる人の近くへ移動してください」


「大丈夫だ。何とかするから」


「そうですか。では、失礼します」


 キトリの声が聞こえた後、遠くへ離れる足音が聞こえた。チャンバは安堵した表情をし、部下の元に戻った。


「あー、やばかった。下手したらこれを見られたよ」


「ふぅ……そうっすね。それより、次々とクローンが生まれてますよ」


 部下はそう言って、水槽から繋がっているパイプをチャンバに見せた。パイプからは、新しいクローンが次々と生まれ、現れていたのだ。


「フッフッフ。やはり質のいい戦士からは、質のいいクローンが大量に生まれる」


「これだけいれば、革命起こしても大丈夫そうっすね」


「まだだ。まだ足りん。もう少しクローンを作るのだ」


 チャンバはそう言って、モニターを見た。部下はクローンの素材を見て、足りるかどうか不安になった。




 一方キトリたちは、チャンバの部屋から少し離れた所にいた。


「どうかしたんですか? あの大臣が怪しいと思っているんですか?」


 アルムの言葉を聞き、キトリは頷いた。


「ええ。話を終えて数分経過したけど、あの大臣は避難しようとしないわ。もし、モンスターがいると聞けば、慌てて部屋から飛び出すと思うのに」


「考えすぎじゃないのー?」


 レリルはあくびをしながらこう言ったが、キトリは言葉を続けた。


「かもしれない。だけど、あの部屋が気になるのよ」


 キトリはチャンバの部屋を見ながら答えた。レリルはキトリがどれだけ神経質なのかと思ったが、キトリは再びチャンバの部屋に近付いた。


「ちょっと、何やってるのよ」


「中の様子を調べるのよ。ちょっと魔力を使って……これで」


 キトリは闇の魔力を使い、小さな闇の棒を作り出した。何をするつもりなのだろうとアルムとレリルは思ったが、キトリは小さな闇の棒を鍵穴に刺した。


「次はこうしてと……」


 キトリは闇を鍵穴に合うように大きくし、鍵を回した。すると、開く音が聞こえた。


「うわっ、鍵を使わず闇の魔力で」


「本当はやっちゃいけないことだけど、今は緊急事態よ。中に人がいれば、事情を説明すればわかると思うから」


 キトリはそう言いながら、チャンバの部屋に入った。レリルはその後に続き、アルムは戸惑ったのだが、行くしかないと決めて部屋の中に入った。


 チャンバの部屋はキトリが予想してたよりも広かった。キトリは物陰に隠れながら、周囲を見回していた。


「うっはー。高級なカーペットねー。このソファーも一人用だけどフッカフカ」


 レリルはチャンバの部屋の家具を触り、テンションが上がっていた。キトリとアルムは静かにするようにジェスチャーをし、レリルを落ち着かせた。その時、キトリはかすかに聞こえる機械音を耳にした。


「何の音だろう?」


「調べてみましょう」


 キトリたちは機械音がする方向へ向かっていった。仕切られたカーテンの奥をこっそり見ると、そこには大量の水槽と、その中に入っている大量のクローンがあった。


「ゲッ! あれって!」


 突如大声を出したレリルに驚き、キトリとアルムは魔力を使ってレリルの口を閉じた。その時、水槽の中にいたクローンたちが、一斉にキトリたちの方を振り向いた。


「あれはあの時戦ったクローン。もしかして、チャンバって大臣が……」


「チッ、余計なことをしやがって」


 と、チャンバの声が聞こえた。キトリとアルムはレリルを連れて、すぐに後ろに下がった。キトリたちに近付いていたチャンバの手には、注射器があった。


「あなたがチャンバ大臣ですね」


「大臣って肩書の割には、物騒な物を手にしているわね。それに、この部屋は何なの?」


「フン。あの世へ送る前に教えておこうか。大出血サービスじゃ」


 チャンバは近くにあったソファーに座り、キトリたちに話を始めた。


「これはワシが作ったクローン戦士じゃ。お前たちのちっぽけな脳みそで理解できるように説明すると、最強の戦士の遺伝子を使い、最強の戦士を作るということじゃ」


「何のためにクローンを作っているの?」


「それはもちろん、この国を乗っ取るためじゃよ!」


 チャンバの話を聞き、アルムはため息を吐いた。


「いい歳のおじさんが、世界征服のようなことを企んでいるんですか? 理解しないんですか? 世界と言うか、国を支配するなんてできませんよ」


「やってみなければ分からない! この国を支配した後は、この世界もワシが支配する! 最強のクローン戦士を使えば、物騒な兵器を使わずとも他国に攻撃を仕掛けることができ、簡単に滅ぼすことができる!」


「あーはいはい。悪人ごっこは一人でやってくださいねー」


 レリルはあくびをしながらこう言った。キトリは周囲の水槽を見回し、チャンバにこう聞いた。


「あほくさいけど、本当に世界を支配するつもりなのね」


「手始めにこの国から支配するがな。この日のために、何十年も待ったことやら。大変じゃったぞ。王や他の大臣から信頼を得て、仕事をこなし、地位と名誉を得て、自由に動けるまでは本当に大変だった」


「地位、名誉、金。全部あるのに何で世界を支配しようと思っているんですか?」


 アルムの問いに対し、チャンバは小さく笑ってこう言った。


「それはもちろん、足りないからじゃよ。ワシはもっと高い地位が欲しい、誰からも褒められるくらいの名誉が欲しい。そして、あらゆるものを手に入れるための金が欲しいのじゃよ」


「とにかく、あんたの本性は悪知恵が働く根気強いジジイってことね。と言うことは、ジャオウたちを捕まえたのも、あんたってこと?」


 レリルの質問を聞き、チャンバは頷いた。


「そうだ。いい素材じゃよ。お前らの仲間は」


「ベーキウを返しなさい!」


 話を聞いていたキトリは、魔力を開放してこう言った。怒りの形相のキトリを見ても、チャンバは動じていなかった。


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