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出動、クローン戦士!


 行方不明のベーキウとジャオウを探すため、キトリたちが動き始めた。ベーキウとジャオウを捕まえたチャンバはこのことを知るが動揺せず、逆にクローン戦士の強さを知るいい機会だと思っていた。


「では、クローン戦士を動かします」


「うむ! やってくれ!」


 チャンバの部下はボタンを押し、クローン戦士が眠る水槽を開けた。水槽は大きな音を発しながら開き、中で充満していた水蒸気が一気に外に流れた。


「ついに動きますね、クローン戦士が」


「ああ」


 クローン戦士が動き出すのを、チャンバと部下は今か今かと待った。しばらくして、クローン戦士はチャンバと部下に近付き、口を開いた。


「あなたが俺を作ったんすか?」


 馴れ馴れしい若者言葉。そして、やる気のなさそうな声色。言葉を聞いたチャンバは一瞬動揺したが、にやりと笑ってそう言った。


「そうだ。ワシらがお前を作ったのだ!」


「あっそう」


 と言って、クローン戦士はあくびをして横になった。チャンバは少し苛立ち、クローン戦士にこう言った。


「おい、寝るな。早速仕事だ」


「えー? 俺生まれたばっかりですよー。生まれて早々戦わせるとか、あんた何考えてんだよ」


「とにかく言うことを聞け! お前は戦うために作られたのだ!」


「えー、マジ勘弁」


「何がマジ勘弁だ!」


 クローン戦士と話をし、チャンバは苛立ちながらキトリたちが映るモニターをクローン戦士に見せた。


「今、お前の強さの元になった戦士の仲間が動いている。あいつらが何かをする前に、処分するのだ!」


「はぁ面倒。あんたがやればいいじゃん」


 この言葉を聞き、チャンバの怒りが爆発した。


「何が面倒だ! たかがクローンが命令に背きやがって! ワシの言うことを聞いて戦わんかい!」


「嫌だね。そんなにあの嬢ちゃんたちを始末したかったら、あんたがやりゃーいいだろうが。ほら、これを使いなさい」


 と言って、クローン戦士は近くに落ちてたパイプを手にし、チャンバに向かって投げた。猛スピードで回りながら飛んでくる鉄パイプは、チャンバの顔面に命中した。


「ブアッハッハ。ざまぁ」


 クローン戦士は顔面にパイプ状のあざが付いたチャンバの顔を見て、大きな声で笑い始めた。苛立ちが限界に達したチャンバは、地面に落ちた鉄パイプを拾い、笑い転げるクローン戦士に近付いた。


「この野郎! ワシの言うことを聞かんかい!」


「あ! それはまずいですって!」


 部下はチャンバを止めようとしたのだが、その前にチャンバは鉄パイプを振り下ろしていた。だが、鉄パイプはクローン戦士に命中することはなかった。それなりの長さがあった鉄パイプだが、その半分が消えていた。


「あ……あれ?」


「危ないじゃないっすかー。生まれたてのクローンに暴力するとか、あんた本当に人間ですかぁ?」


 クローン戦士はそう言いながら、刃のように変形させた右腕をチャンバに見せた。それを見たチャンバは驚いたが、次第にその表情は笑みへと変わった。


「すごい……すごいぞ! 体を変形させることができるのか! それさえあれば、革命なんて余裕で行える!」


「革命? なんだかおもしろそうなことを考えているじゃないっすか。乗った。あんたの作戦に乗ってやるよ」


 クローン戦士はチャンバが革命すると察し、にやりと笑ってこう言った。その後、クローン戦士はキトリたちの映像を見て、チャンバにこう聞いた。


「で、この嬢ちゃんたちがあんたの邪魔をするかもしれないってわけか」


「そうだ。お前の元になった戦士が、あいつらの仲間なのだ」


「へぇ、そうなんだ」


 クローン戦士は気を失っているベーキウとジャオウを見て、言葉を返した。返事をした後、クローン戦士は立ち上がって軽いストレッチを始めた。


「そいじゃ、どっちか潰してきますんで」


「早めに頼むぞ。ワシたちは、次のクローンを作る準備に取り掛かるからな」


「きょうだいができるってわけか。そりゃー嬉しいぜ。早めに頼むぜ」


 と言って、クローン戦士は外に出て行った。部下はクローン戦士を見て、チャンバにこう聞いた。


「ノリが軽いというかなんというか、大丈夫なんですかね?」


「今はクローン戦士を信じよう。ワシらは、ワシらができることをするだけだ」


「そうですね。それじゃ、クローンを作りましょう」


 その後、チャンバと部下は新たなクローン戦士を作り始めた。




 キトリは大きなため息を吐きながら、座って休んでいた。広いレンズ王国の城をくまなく探したのだが、ベーキウとジャオウの姿を見つけることができなかったのだ。


 これだけ探しても見つからないなんておかしい。嫌な予感がする。


 何か裏で事件が起きている。キトリはそう予感しながらも、立ち上がって再びベーキウとジャオウを探そうとした。そんな中、キトリは殺気を感じ、魔力を開放した。


「へぇ、見た目の割に結構強そうじゃん、お前」


 クローン戦士が柱の陰から、ゆっくりと姿を現した。キトリは闇で槍を作り、クローン戦士にこう言った。


「あなた、誰? 私に敵意を向けているようだけれど」


「名前か。そんなもんつけてもらってないな。ま、とりあえずお前を始末した戦士ってことで覚えておいてくれよ。生きてたらの話だけどな!」


 そう言って、クローン戦士は右腕を刃に変形させて、キトリに襲い掛かった。刃に変った右腕を見て、キトリは驚いたのだが、すぐに我に戻って攻撃をかわし、反撃を行った。


「おっと。いきなり反撃するなんて、酷いねぇ」


 クローン戦士はキトリの攻撃をかわし、闇の槍を掴んで力を込めた。キトリは槍を動かせないことを察すると、すぐに闇の槍を消滅させて、新たな武器を作った。


「おっと。魔力を使って武器を作るのか。そりゃーいいアイデアだ」


「これで!」


 キトリは闇を棒状にし、クローン戦士の頭に向かって振るった。横から飛んでくる棒は、クローン戦士の頭に命中した。だが、クローン戦士の頭は変形し、ダメージを受けていない様子を見せた。


「ざーんねん。これで俺にダメージを与えたつもりですかぁ?」


「グッ!」


 何かされると察したキトリは、すぐに後ろに下がった。下がったと同時に、クローン戦士の伸びる腕がキトリを襲った。


「逃げても無駄だぜ! 俺の腕は自由自在に伸びるし、いろんなものに変形する! それに、殴ってもダメージは受けねーぜ!」


 この言葉を聞き、キトリはあることを考えた。キトリは魔力を開放し、闇の弾を発してクローン戦士に攻撃した。


「魔力か……」


 クローン戦士は嫌そうな顔をし、後ろに下がった。だが、闇の弾の一部が変形し、クローン戦士の腹を貫いた。


「グバァッ!」


 苦しそうな声を聞き、キトリはダメージを与えたと確信した。その場に倒れたクローン戦士は、立ち上がろうとしたのだが、ダメージが強すぎるせいで体を自由に動かすことができなかった。


「チッ、こんな欠陥があったのかよ……」


「何のことだか分からないけど、あなたはただの人間じゃないわね」


 キトリが倒れているクローン戦士にこう聞いた。質問されたクローン戦士は少しの間をおいて、小さく笑って答えた。


「その通り。俺はただの人間じゃない。俺を倒したご褒美として、一つ教えるぜ。俺はクローン。クローン戦士だ」


「クローン戦士……」


 話を聞いたキトリは、目を丸くして驚いた。


「クローンってどういうこと? 誰かが何かを企んでいるの? 教えなさい!」


「教えねーよ。一つ教えるぜって言わなかったか? 俺が教えるのはこれだけだ。ま、話が聞きたいんだったら、後ろの奴に聞けばいいじゃん」


 後ろの奴と聞き、キトリははっとした表情で後ろを見た。そこには、大量のクローン戦士が立っていた。


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