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宿命の戦いは突然に


 戦いの舞台となるステージの外で、ベーキウは何度も深呼吸をしていた。こんなに早く、ジャオウとの戦いが起きるなんてベーキウは思ってもいなかったのだ。


 一方で、ジャオウも遠くにいるベーキウを見て、自身に落ち着けと言い聞かせていた。ユイーマの国でペデラタンと戦った時、ジャオウはベーキウの戦闘スキルが上がっていることを察していた。次に戦えば、負ける可能性があるとジャオウは思っていたのだ。


 しばらくして、リングアナウンサーの声が響いた。


「では次の対戦、ベーキウ・オニオテーキ選手対匿名希望選手です! ベーキウ・オニオテーキ選手は勇者パーティーの一員として、この前発生したユイーマの国の騒動を止めた一人です! で、匿名希望選手のことについては分かりません! ですが、この戦いで何かが分かるでしょう!」


 リングアナウンサーがこう言った後、ベーキウとジャオウは武器を持ち、高く飛び上がってステージの上に立った。武器を持ったベーキウとジャオウを見て、リングアナウンサーは動揺した。


「え? あのちょっと……」


「まさかこんなに早く戦うことになるとはな」


「ああ。これで決着をつけてやる!」


「それはこっちのセリフだ!」


 感情が高ぶったベーキウとジャオウは、リングアナウンサーの言うことを聞かずに武器を手にし、振り下ろした。


「うわァァァァァァァァァァ!」


 ベーキウのクレイモアとジャオウの大剣が激突した際に、強い衝撃波が発した。そのせいで、リングアナウンサーは吹き飛ばされた。


「うォォォォォォォォォォ!」


「てあァァァァァァァァァァ!」


 ベーキウとジャオウは、何度も力強く武器を振るった。それを見ていた観客は驚いていたが、次第に歓声を上げた。


「この戦い、何かあっても証人がたくさんいるから、白黒をはっきりすることができるな!」


「ああ! 思う存分戦える!」


 攻撃をする中、ベーキウとジャオウは話をしていた。その後、互いの武器がぶつかったのを確認したベーキウとジャオウは、後ろに下がって魔力を開放した。


 魔力を刃に注ぐんだ。無数の刃を放って、攻撃してやる!


 ベーキウはそう思い、ありったけの魔力をクレイモアの刃に注いだ。だが、攻撃の支度を先に終えたのは、ジャオウだった。


「どうやら、俺の方が先に終わったようだな!」


 ジャオウは叫びながら、大剣を振り下ろした。巨大な刃の衝撃波が、ステージの床を削りながらベーキウに向かって飛んだ。ベーキウは攻撃の支度を終え、目の前の刃の衝撃波を見て、叫び声を発した。


「俺は負けないぞォォォォォ!」


 気迫のある声を発したベーキウは、大声を発しながらクレイモアを振るった。すると、ジャオウが放った刃の衝撃波よりも、大きな刃の衝撃波が放たれた。


「何!」


 サイズの違いに驚いたジャオウだったが、乱れた呼吸を整え、素早くベーキウの元へ接近した。


 攻撃を終えた今なら、隙ができたはず!


 攻撃後の隙を伺ったジャオウだったが、ベーキウはクレイモアを構えて立っていた。


 俺の接近を察していない? いや……違う! どのタイミングで俺が攻撃を仕掛けてもいいように、カウンターの支度をしている!


 ジャオウはベーキウがカウンターを仕掛けると予想した。その予想は当たり、ジャオウが接近したことを察したベーキウは、ジャオウの方を見てクレイモアを振るった。


「グッ!」


 攻撃を察したジャオウは、大剣を盾にしてベーキウの攻撃を防いだ。態勢を崩したため、すぐに立ち上がろうとしたのだが、ベーキウは次の攻撃を放っていた。


「これで終わりだァァァァァァァァァァ!」


 勝利を確信したベーキウは、力を込めてジャオウに向かってクレイモアを振り下ろした。


「ここで終わってたまるかァァァァァァァァァァ!」


 仕方ないと思いつつ、ジャオウは闇の魔力でバリアを張り、ベーキウの攻撃を防いだ。ベーキウのクレイモアはジャオウのバリアに命中し、激しい電撃音を発しながらベーキウを吹き飛ばした。


「グウッ! あと少しだったのに」


 吹き飛んだベーキウは、すぐに立ち上がってクレイモアを構えた。ジャオウも大剣を構え、ベーキウを睨んだ。


「やはり、あの時より成長している」


 と、ジャオウは小声でベーキウの成長を呟いた。しばらくの間、ベーキウとジャオウは動かなかった。だが、激しくぶつかっていた二つの刃の衝撃波が大きな音を発して破裂したその瞬間、ベーキウとジャオウは同時に走り出した。


「うォォォォォォォォォォ!」


「行くぞォォォォォォォォォォ!」


 叫び声を上げながら、ベーキウとジャオウは武器を振り下ろした。それから再び、クレイモアと大剣の刃がぶつかり合う音が響いた。しばらく武器を振るっていたベーキウとジャオウだったが、後ろに下がり、周囲を走りながら相手の様子を見始めた。


 少しでも動きに乱れがあったら、そこを狙って攻撃する!


 と、ベーキウとジャオウは同じことを考えていた。数秒後、あることを考えたベーキウは、その場に止まった。


 何を考えているのか分からんが、攻撃するなら今しかないか!


 そう思ったジャオウは足を止め、立ち止まったベーキウに向かって走り出した。すると、ベーキウは走り出したジャオウを見た。この瞬間、ジャオウはベーキウがカウンターを狙って攻撃したことを思い出した。


 あの時と同じだ! わざと止まって攻撃を誘い、反撃するのか! 面白い、同じ技で戦うつもりだな!


 心の中でそう察したジャオウだったが、あえてベーキウに接近し、攻撃することを選んだ。


「同じ技が、通用すると思うなよ!」


「通用する、しないはどうでもいい! とにかく、ダメージを与えられればいんだよ!」


 再びベーキウとジャオウの叫び声が響いた。そして、ベーキウとジャオウは同時に武器を振るった。


「グウッ!」


「ウウッ!」


 激しい武器のぶつかり合いで発生した衝撃波で、ベーキウとジャオウは後ろに吹き飛んだ。すぐに立ち上がったベーキウとジャオウは、武器を構えて走り出した。


「まだまだァァァァァァァァァァ!」


「この程度で、俺は倒れぬぞォォォォォォォォォォ!」


 叫び声を上げながら、ベーキウとジャオウは走っていた。だが、その間に入るようにリングアナウンサーが割り込んだ。


「止まってください! ベーキウ・オニオテーキ選手! 匿名希望選手! あなたたちはルール違反で失格です!」


 この言葉を聞き、ベーキウとジャオウの動きは止まった。


「え? どうしてですか!」


「俺たちは真剣に戦っていたのに!」


「ルールの確認をしてください! 武器の使用は禁止! これ、武道会ですよ! 武道! 武器を使ってはいけません! それに、感情が高ぶっただか何だかわかりませんが、開始する合図の前に、戦いを始めたでしょ? ちゃんと合図を聞いてから戦ってください!」


 リングアナウンサーの説教を聞き、ベーキウとジャオウはしょんぼりした。




 この戦いを見ていたチャンバは、にやりと笑っていた。その横では、部下がせんべいを食べながら笑っていた。


「いやー、ルールを守らない奴もいるんですねー」


「ああ、そうだな」


「ん? 何か面白いことでもあったんですか? 昨日、熟女系のエロ本を読んだんですか?」


「いや、昨日寝る前に見たのは人妻系の……そんなこと言わすな!」


「あんたが自分で白状したんじゃないですか」


「うるさい! とにかく、今の計画に必要なクローンの元を見つけた。あの二人は武器を使うが、その腕は素晴らしい。あの二人を利用し、クローンを大量に作れば戦力を強くすることができる!」


「クローンの素材ですか……確かに、ベーキウってイケメンはそれなりに強いですし、匿名希望って奴も不思議な魔力を使っていましたし、クローンの素材としては素晴らしいですね」


「ああ。おい、他の部下に命令しろ。何が何でも、あの二人を捕まえろと」


「了解しました」


 部下は敬礼をし、壁に掛けてある電話へ向かった。チャンバは、大人しくステージから降りるベーキウとジャオウを見て、にやりと笑っていた。


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