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大臣が黒幕なのは、よくあること


 レンズ王国の王子、サンラは若い王子である。歳は十八だが、親や家庭教師によっていろいろと世の中のことを教わったため、そのおかげで常識的で、真面目な人物に育った。サンラはチャンバに近付き、モニターを見ながらこう言った。


「チャンバ大臣。どうしてあなたがこの大会を開こうとしたのか、私はまだ理解できない」


「理解できなくていいのです。世の中には、どうやっても理解できないことがあるんです」


 と、チャンバは愛想がある笑みでこう言った。その笑みを見ても、サンラは表情を変えなかった。


「武道会なんて野蛮なこと、私は好まないのだが……」


「何を言っているのですか王子。世の中には、血の気がある連中がたくさんいるんですよ。その人たちのために、こうやって大きな武道会のイベントを開いたのです」


「私には、その言葉は言い訳にしか聞こえない」


「まぁまぁ、深読みするのはお止めください。この大会のチケットのおかげで、かなり儲かりましたからね」


「このチケットに、一万ネカの価値があるとは思わないが? 高すぎるような気がするが……」


「世の中には、高い金を払って格闘技のイベントを見たい人がいるのです。あなたは若い。まだ世の中のことをすべて把握できていないのです」


「そうか……」


 サンラは納得したようにこう言ったが、水槽を隠してあるカーテンを見て、サンラはチャンバに聞いた。


「気になっていたのだが、あのカーテンの裏には何がある?」


 この言葉を聞いたチャンバは、少しだけ動揺した。


「あの裏には……その……あまり他の人に言わないでくださいよ? これは、私とあなただけの秘密にしてください」


「ああ……」


 チャンバはサンラの耳に近付き、小声でこう言った。


「あの裏には、エッチな本やビデオがたくさんあるのです」


 この言葉を聞いたサンラの顔は赤くなり、すぐにチャンバから離れた。


「お前は何を考えているんだ! その歳でいやらしい本やビデオを集めるなどと……恥ずかしくないのか?」


「年寄りになれば、恥なんて消えるものですよ。いずれ、あなたも分かりますし、いつか堂々とエッチな本やビデオを買うようになります」


「私はそんなものを買うことはしない! 恥を知れ、本当に……」


 呆れ果てたサンラは、チャンバの部屋から出て行った。サンラの足音が遠くへ行ったことを確認すると、チャンバはカーテンの裏の水槽を見て安堵の息を吐いた。


「ふぅ、何とかごまかせた」


「あれでごまかせるなんてある意味すごいですよ。純情なサンラ王子もちょっとあれだけど」


 と、カーテンの裏にいたチャンバの部下がこう言った。チャンバはため息を吐いた後、カーテンを広げて水槽を見た。


「あれがあのクソ真面目王子にばれたら、確実に上の方に話が行く。私の革命作戦がパーになってしまう」


「危機一髪でしたね。それよりか、隠し場所を変えた方がいいんじゃないんですか? あなたの部屋はとんでもなく広いですが、これ以上実験用の水槽を作るとなると、場所がないですよ」


 部下はこう言ったのだが、チャンバは首を振ってこう言った。


「こんなものを城内のどこかに隠しておけるか。誰かに見つかるリスクが高い。それだったら、多少の場所を使っても、私の部屋を使う方が見つかるリスクは低い」


「そうっすねー。まぁ、あなたの言うことも正しいですね」


 部下はそう言いながら、周囲を見回した。すると、ピンク色の文字でチャンバ以外は絶対に押しちゃダメよと書かれたボタンがあった。気になった部下は、そのボタンを押してしまった。


「ん? あああああ! お前、そのボタン押しちゃったの?」


「はい。気になったんで」


 部下がこう答えると、近くの壁が動いた。その奥には本棚があり、大量のエッチな本やビデオが並んでいた。


「わーお。エッチな本やビデオがあるってことは、嘘じゃないってことですね」


「そうだ……」


 チャンバはそっぽを向きながら、部下に答えた。部下は一冊のエロ本を手にしてめくったが、嫌そうな声を出した。


「熟女系のエロ本じゃないですか。ん? まさか……うーわ、これ全部熟女のエロ本やビデオかよ! うーわ、萎えたわ」


「うるさい! これでもこの本に出ている人たちはみーんな私より年下だ!」


 文句を言った部下に対し、チャンバはこう叫んだ。




 無事にエントリーしたデレラは、ストレッチを念入りに行っていた。その様子を見ていた他の参加者は、デレラを見て話をしていた。


「あんな美人も参加するのか」


「うっはー。すげー美人やな。あの子に寝技かけられたーい」


「バカ言ってんじゃないよ。あの子はあのトンカチ一家の一人だぞ。エロいことをしたら他の家族に半殺しにされるし、そもそもあの子も強いかもしれないぞ」


 デレラはその話声が聞こえた、ストレッチを止めてその参加者の元へ向かった。


「あら、本人の目の前で堂々と陰口ですか?」


 急に目の前に現れたデレラを見て、参加者は悲鳴を上げた。デレラの気配を感じなかったからだ。


「いえっ! そうではありません!」


「にしても……俺たちが気配を感じなかった! まずい……この子、強い!」


「強いって褒めてくれるのね。ありがとうございます。でも、戦いになったら容赦はしませんので」


 と、デレラはにやりと笑ってこう言った。その時、参加者たちはデレラから強い殺意を感じた。それを見ていたユージロコは、にやりと笑っていた。


「あの子もやる気十分のようね」




 一方その頃、トイレに行っていたキトリは、急いで観客席へ向かっていた。その時、難しい顔をしているサンラと会った。


「ん? あ! 君は確か、勇者シアンの仲間の……」


「私のことをご存じですか?」


 キトリはハンカチをしまいながら、サンラに近付いた。サンラは頭を下げ、自分が王子であることをキトリに話した。目の前にいる人が王子だと知り、キトリは緊張で固まった。


「すみません、驚かせてしまって」


「い……いえ、お気になさらず。それより、どうして私のことを?」


「ユイーマの国の事件で、あなたたちのことを知ったのです」


「あの国の出来事、この国でも知られているのですね」


「はい。それより、あなたに話をしておきたいことがあるのです。簡潔に言うと、この大会は大臣であるチャンバが勝手に始めたことなのです」


 この言葉を聞き、キトリは周囲を見回して、誰もいないことを察してサンラにこう言った。


「今なら誰もいません。誰かに感づかれる前に、話は簡潔にお願いします」


「分かりました。私はチャンバ大臣が何かをするため、この大会を始めたと思っています。チャンバ大臣には野心がある。いつも彼の言動を見ている私は、そう思っているのです。理由は分かりませんが、何かあって始めたと思います。もし、大きな騒動があったら、止めてもらってもいいでしょうか?」


 サンラの言葉を聞き、キトリは頷いて答えた。


「分かりました。あなたの言うことを信じます。とりあえず、大きな事件が起きたら、私は動きます」


「ありがとうございます。事件があったら、王子の身分を利用して何とかしますので」


「お願いします」


 その後、キトリとサンラは人の気配を察し、急いで元の場所へ戻った。


 キトリが観客席に戻ると、すでに大会は始まっていた。


「あ、もう一試合目が終わっている」


 ステージの上では、殴り倒された選手が大の字で倒れ、勝利したと思われる選手が勝ち誇ったかのように、両手を上げて観客に勝利をアピールしていた。次の試合は誰と誰がやるのだろうと気になったキトリは、モニターを見た。そして、驚いた。次の試合は、ベーキウとジャオウだったからだ。


 い……いきなりベーキウとジャオウが戦うの!


 とんでもないことを知ったキトリは、ひたすら試合が始まるまで待った。


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