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戦いが始まる前にいろんな意味での戦いが始まっている


 ガラス王国城内。大会エントリーを終えた戦士たちが、試合会場となる広い台の上に立っていた。参加する戦士の中に、エントリーを終えたベーキウ、シアン、クーアがいた。


「結局、俺たち三人が参加することになったな」


「キトリは武術ができないから参加できないって言ってたから、キトリの分まで頑張らないと」


「わらわたち三人がいれば、よゆーで優勝できるじゃろう! なっはっは!」


 勝ったつもりでいるクーアは、大きな声で笑い始めた。その声を聞いた他の戦士は、クーアを睨んだ。


「何だあのエルフ? 余裕で勝てるだと?」


「ふざけたことを言いやがる。お前みたいなちっちゃいエルフ、秒で始末することができるんだよ」


「ただのバカな目立ちたがり屋か……ただの自信過剰のバカか。ま、どちらにしろ、敵となったら本気で潰そう」


 と、戦士たちは小声でこう言った。呆れたベーキウは、笑い続けるクーアにこう言った。


「おい、最初から他の参加者を挑発するなよ。目立ってるじゃねーか」


「目立ってなんぼじゃ! それに、挑発されてると知っておきながらも、手を出さないんじゃあただの弱虫じゃ! 弱虫相手に、わらわは負けんぞ!」


 クーアのこの言葉を聞き、参加者の一人が苛立ちを表情に出しながら、クーアに近付いた。


「さっきから黙って聞いてりゃこのクソガキが! そんなに痛い目を見たいなら、俺が見せてやるよ!」


 と言って、その参加者はクーアに殴りかかった。クーアは参加者の攻撃を止め、右足のハイキックを放った。


「が……がぐはぁ……」


 クーアのハイキックを受けた参加者は、白目をむいてその場に倒れた。周囲が動揺してざわめく中、クーアは蹴り倒した参加者を踏み、近くにいた役員にこう言った。


「この人、大会前に倒れちゃった。どこか連れて行ってほしいのじゃ。それと、エントリーをしている役員の人にこう伝えてくれ、エントリー枠が一つ空いたと」


 役員はクーアの言われた通りに、倒れた参加者を担架に乗せて去って行った。このことがあったため、ベーキウたちは逆に目立ってしまった。


「はぁ、最初からこんなに目立っていいのかよ」


 と、ベーキウは小さく呟いた。




 キトリは観客席で、大会が始まるのを待っていた。


「始まるまで長いわね」


 そう呟きながら、キトリは周囲を見回していた。すると、見知った人影が遠くにいた。まさかと思ったキトリは立ち上がり、急いでそこへ向かった。


「ん? ゲッ! 魔王の娘!」


「あっ……あなたは!」


 見知った人影は、レリルとアルムだった。二人を見たキトリは、ジャオウが大会に参加していることを察した。


「その様子だと、ジャオウも大会に参加するようね」


「そうよ。で、あんたは出ないの?」


「武術は使えないから」


「あっそう」


 レリルはそう言って、手元のニンニク味のポテチを食べ始めた。その瞬間、周りにいた人はニンニク臭に耐え切れず、立ち上がって去って行った。


「ん? ラッキー。周りが誰もいなくなった。寝ちゃおーっと」


 そう言いながら、レリルは横になり、空いている椅子の上にニンニク味のポテチを置いた。それを見たアルムは、恥ずかしそうな顔でレリルから去って行った。


「連れがあれじゃあ確かに恥ずかしいわね」


「本当にもう……誰か、あの人に常識を教えてほしいよ」


 と、顔を赤くしながらアルムはこう言った。




 ベーキウたちが軽くストレッチをしていると、シアンは感じたことのある魔力を察した。


「ジャオウがいるな」


「ベーキウも感じたわね」


 シアンがこう言うと、ゆっくりと歩くジャオウの姿が現れた。ジャオウはベーキウたちに近付き、足を止めた。


「焔のルビーはお前たちに譲ったが、純白のガラスは俺が貰う」


「いや、純白のガラスも私たちが貰うわよ」


 ベーキウたちとジャオウの間に、見えない閃光が走る中、周囲がざわつき始めた。ベーキウたちとジャオウがざわつき始めた方を見ると、そこにはトンカチ一家がいた。


「おわっ! で……でけぇ!」


「見ただけですごい戦士と分かる」


 ユージロコたちの図体を見て驚くベーキウ、そしてジャオウ。二人を見たユージロコは、にやりと笑ってこう聞いた。


「イケメンの兄ちゃんと、仮面を被った兄ちゃん。あんたらも参加するのかいィ?」


「え……まぁ、はい」


「私らのことは知らないようだけど、言っておくよ。あんたらの実力じゃあ、私たちには勝てないよ。たとえ、勇者様でもねぇ」


 そう言って、ユージロコはシアンを睨んだ。シアンは長身で筋肉モリモリのユージロコを見て驚き、言葉を失っていたのだが、クーアがシアンの肩や頬を叩き、我に戻した。


「シアン! あのデカブツに何か言ってやれ! お前、勇者じゃろ!」


「え? 何か言えって? 勝つのは私たちよ!」


 と、シアンは訳も分からずこう言った。その様子を見て、ジャクミとバキコは笑っていた。そんな中、一台の大きなバイクが外に停まった。そのバイクを見たユージロコは、目を丸くして驚いた。


「驚いた。モントベーじゃないの」


「知り合いか?」


 ベーキウの問いに対し、ユージロコはにやりと笑って口を開いた。


「昔からの連れさ」


「オ母様、モントベーガデレラヲ連レテキテイマス」


「はぁ!」


 ジャクミの言葉を聞き、ユージロコは急いで外に向かおうとした。だが、その前に大きくジャンプしたデレラが、台の上に着地した。


「ふぅ、間に合いました」


「デレラ! あんたは留守番してろって言ってたはずよ!」


 ユージロコはデレラに近付き、こう言った。デレラは頭を下げ、言葉を返した。


「すみません! でも、私も戦いたいのです! 私もこの手で、強者たちと殴り合いをしたいのです!」


「あの美人さん、言っていることが結構野蛮じゃのう」


 デレラの発言を聞いたクーアは、ドン引きしながらこう言った。モントベーはユージロコに近付き、笑ってこう言った。


「いいじゃないか。世界の強者を知ることも、戦士として大事なことだろ?」


「確かにそうだけど……まさか、エントリーしたの?」


「ああ。知り合いに頼んでな」


「エントリーした以上、仕方ないわね。デレラ、試合で戦う時になったら、敵同士よ」


 と、ユージロコはデレラにこう言った。デレラは大会参加を認められたと思い、笑顔を見せた。




 そんな中、大会の主催者であるチャンバは、自室から会場の様子をビデオで見ていた。


「ほう。いい戦士たちがいるな」


「はい。参加者の中には、勇者パーティーのシアン・ダンゴ、ベーキウ・オニオテーキ、クーア・ポクレムコがいます」


「ほぉ。あのロリコン王を倒した勇者パーティーがいるのか。これはいい。奴らを捕まえれば、私の計画が順調に進むはずだ」


 チャンバは後ろを見て、にやりと笑った。そこには、人のようなものが浮いている円型の水槽が大量にあった。チャンバは立ち上がり、水槽の一つを触ってこう言った。


「強い戦士が必要だ。強い戦士の強さが凝縮された細胞や、戦いに関する知能があれば、ワシが作るクローン戦士たちはもっと強くなる!」


「はい。ですがチャンバ大臣……」


「ここでは次期王と言え!」


 チャンバは部下に向かって叫んだ。部下は戸惑いつつも、咳払いをして再び口を開いた。


「チャンバ次期王。クローン戦士製造計画は、順調に進むのでしょうか? 王子が我々の動きを怪しんでいる様子ですが……」


「王子? あの何も分からない、理解できない若造のことなど無視しておけ! もし、ワシの計画を知ったとしても、一人では動けない」


 と言って、チャンバは笑い始めた。その時、扉を叩く音が聞こえた。チャンバは部下に急いで水槽を隠すように伝えた後、扉を開けた。


「おお、サンラ王子。あなたでしたか」


 チャンバは扉の先に立っていた、レンズ王国の王子、サンラ・ビグスールに向かって頭を下げた。


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