大会に集まる者たち
ガラス王国がある大陸に上陸したベーキウたちは、すぐにガラス王国へ向かうバスに乗り込んだ。バスの中で、シアンは携帯電話を使って何かをしていた。
「おいシアン、バスに乗り込む前から携帯電話を使っているけど、何をやっているんだ?」
ベーキウにこう問われ、シアンは携帯電話の画面を見せながらこう言った。
「ガラス王国の人に連絡をしているの。私を大会に参加させてって」
返事を聞いたベーキウたちは、思わず驚いた声を出した。
「ガラス王国の人って……偉い人が関係しているよな?」
「お前、いつの間にとんでもない権力を持ったんじゃ?」
「まさか……裏で悪いことをしてないよね?」
ベーキウたちの言葉を聞き、シアンは呆れるようにため息を吐いた。
「皆忘れたの? 私は勇者。勇者の肩書きを使えば、武道会なんて楽に参加できるわよ」
「そんなことをしていいのか? 他の人たちは参加費とか、チケットとか必要なのに」
ベーキウが冷や汗をかきながらこう言ったが、シアンはベーキウの顔に近付いてこう言った。
「純白のガラスを手にするには、勇者の肩書きだろうが何だろうが利用するの。先にジャオウたちに取られたら、大変なことになるから」
シアンはそう言ったのだが、しばらくベーキウの顔を見ていた。
「あの……シアン……何でずっと俺の顔を見ているんだ?」
「ちょっと待って」
「何を待つんだ?」
ベーキウがこう聞いた直後、バスが動き始めた。その瞬間、シアンが何を考えているか察したクーアとキトリが、シアンをベーキウから引き離した。
「クソッ! バスが揺れたと言ってそのままベーキウの顔に近付いて、チューしようと思ったのに!」
「そんなことさせるか! お前は汚いガラスにでもチューしてろ!」
クーアはシアンの後頭部を掴み、シアンをガラスに押し当てた。シアンは右足を後ろに動かし、クーアを蹴り飛ばそうとしていた。喧嘩を始めたシアンとクーアを見て、ベーキウとキトリは呆れてため息を吐いた。
ベーキウたちより一足先にガラス王国に到着していたジャオウは、ガラス王国の武道会のエントリーを行っていた。
「えーっと、名前は……本当に匿名希望でいいんですね?」
「ああ。わけがあって本名を出せない。たが、どんな手段を使ってでも、純白のガラスが欲しいんだ。変な奴だと思われても仕方ないと思っているが、どうしても参加したいのだ」
と言って、ジャオウは土下座した。武道会のエントリーを行う役員は悩んでいたのだが、そこに上司らしい男性が現れた。
「どうした?」
「匿名希望の人がエントリーをしたいと言っているのですが、不審な点が多いんですよ」
「本名を明かせないのが変なのだが……いい腕をしているな」
上司はジャオウの腕を見て、にやりと笑った。
「チャンバ様に聞いてみる。腕のいい戦士が匿名希望で参加したいってな」
と言って、上司はチャンバと言う人物に連絡を始めた。ジャオウはチャンバと言う名前の人物が気になり、役員に聞いた。
「チャンバと言うのは?」
「この国の大臣です。長年この国に仕えているのですが、あまり評判がよくないんですよ」
「評判がよくない? 誰かに迷惑をかけるトラブルメーカーなのか?」
「仕事はできる人で、性格もそこまで人に迷惑をかけないのですが、何を考えているのか分からないんですよ。この武道会も、王子の反対意見を押し切って開催させたもんですし」
「王子の意見があるのなら、中止にできると思うのだが」
「それができないんですよ。王子と言っても、まだ十八歳です。立場としては、チャンバ大臣の方が上なんですよ。王様も、チャンバがやりたいならやらせておけと言っていますし……」
「そんな事情があったのか」
ジャオウがこう言うと、役員の上司がジャオウに近付いた。
「あなたの参加が認められました。もちろん、匿名希望での参加になります」
「そうか。すまない」
と言って、ジャオウは頭を下げた。その後、ジャオウは宿に戻り、部屋にいたアルムとレリルの元へ戻った。
「無事に参加できるようになった」
「本当? よかった。参加できるかどうか、不安だったんだよ」
安堵したアルムだったが、レリルが机の上のお菓子を食べながらこう言った。
「参加できても、優勝できなきゃ純白のガラスがゲットできないじゃん。それに、あのイケメンたちも参加する可能性もあるわよ」
レリルの言葉を聞いたアルムは、少し不安になった。ジャオウ一行でまともに戦えるのは、ジャオウだけだからだ。
「ごめん、ジャオウ。僕にもう少し戦闘スキルがあれば、一緒に参加して戦えるのに」
「気にするな。他の参加者たちも見たが、それほどの腕ではない。俺の敵じゃない」
「そう。それならいいけど……」
アルムは少し安心した。だが、まだまだ見ぬ強者の存在が、アルムを不安にさせていた。
大会当日、オンラインで事前登録をしていたユージロコたちは、家の前にいるデレラと話をしていた。
「じゃあ行ってくるわ」
「出カケル時ハ、戸締リスルノヨ」
「変な奴が訪ねても、手を出していいけど殺さないこと」
「分かりました……」
元気のないデレラに対し、バキコはデレラの肩を叩いた。
「あんたも成長すれば、大会に出てもいいから」
「はーい」
デレラの返事を聞いたユージロコたちは、走ってガラス王国へ向かった。
ユージロコたちが出かけて数分後、筋トレをしていたデレラだったが、突如家のチャイムが鳴った。
「はーい」
「よう。久しぶりだな」
「まぁ! モントベーさん!」
デレラを訪ねたのは、ユージロコの古い知り合い、モントベーだった。モントベーはワイングラスを持って、家の中を見回した。
「あり? ユージロコはいないのか?」
「今日はガラス王国で武道会が開かれるんです。お母様たちはそれに参加するんです」
「あぁ、今日だったのか。で、デレラは留守番と」
「はい。本当は、私も強者を相手に戦いたいんですが」
「ハッハッハ。喧嘩好きは美人になっても変わらないなぁ。ガラス王国ねぇ……」
その時、モントベーはあることを思い出し、携帯電話を取り出した。
「どうかしましたか?」
「ガラス王国に知り合いがいる。そいつに話をして、参加できるかもしれないが……」
「ええ? 確かに大会に参加したいのですが、どうしてそんなことを?」
「お前さんも、世界の広さを知った方がいいと思ってな。強い奴と戦いたいなら、その身で経験するといい」
その後、モントベーは連絡を始めた。数分後、モントベーはデレラに向かってウインクをした。
「おめでとう。参加できるぜ」
「まぁ! ありがとうございます! では、早速行きましょう!」
「その前にこれ」
と言って、モントベーはヘルメットをデレラに渡した。外に出ると、モントベーが乗ってきた大型バイクが停めてあった。
「城に向かうなら、奇麗な馬車が本当はいいが、あいにく俺はそんなもん持ってない。この小汚いバイクでいいか?」
「もちろん! 馬車より、バイクの方がいいです!」
「嬉しいことを言ってくれるじゃないか! よし、戸締りはちゃんとしてから?」
「さっき、窓も玄関も閉めました。雨戸もしました!」
「オッケー! それじゃあ、ガラス王国までかっ飛ばすから、吹っ飛ばないようにしろよ!」
「分かりました! では、お願いします!」
デレラはモントベーの後ろに座り、モントベーの腰を抱きしめた。デレラの手の感触を腰で感じたモントベーは、バイクのアクセルをふかし、大きな音を発しながらバイクを走らせた。
「ヒャッホー! 相変わらず素晴らしいスピードですね!」
「ああ! 車もいいが、俺はやっぱりバイクの方が好きだ!」
「風を感じるのは、いいことですからね!」
そんな会話をしながら、モントベーはガラス王国までバイクを走らせた。
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