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地上最強の家族ッ!


 ベーキウとキトリは、あくびをしながら朝日を眺めていた。静かに時間が過ぎる中、爆睡していたシアンとクーアが目を覚ました。


「ふぁぁ……拘束されてたけど、意外と練れたわ」


「おはよ……うげぇ。どうしたんじゃベーキウとキトリ、眠そうな顔をしとるじゃないか」


 クーアはやつれ切った表情のベーキウとキトリを見て、不安に思いながらこう言った。ベーキウはタンクトップの集団が筋トレをしていることを告げると、シアンは鼻をつまんだ。


「話を聞くだけで、汗臭さを感じるわね」


「しばらくは外に出ないほうがいいの。ん? じゃあさっきから聞こえるこの変な声って……」


「ああ。あの人たちだ。まだ筋トレしてるみたいね」


 キトリは外を見ながらこう言った。


 しばらくして、ベーキウたちは朝食を食べにキッチンへ向かった。キッチンには何人か客がいたが、シェフと話をしていた。


「なんかあったみたいね。見てくるわ」


 様子が気になったシアンは、客とシェフの元へ向かった。


「朝から味付けがしてない鶏のささみなんか食えるか。パンとコーヒーを用意してくれよ」


「それが、ガラス王国の武道会に参加するお客様から、たんぱく質が多いメニューを頼むと言われてまして……すみません、うちのメニューは多数決で決まるのです」


「だからと言ってなぁ……それなりにパンとか用意するはずだろう?」


「それが、ささみの注文が多すぎるせいで、パンを買う余裕がなかったのです。どうやら、格闘界で有名なトンカチ一家が出るらしく、勝つために色々と工夫をしているようで……」


 話を聞いていたシアンは、ベーキウたちの元に戻って話をした。


「鶏のささみしかないのか。仕方ないの。次の島に到着するのはいつじゃ?」


「今日のお昼前には到着する予定よ。ま、朝ごはんは大事だから、食べるしかないわね」


「そうね……」


 その後、ベーキウたちは呆れながらも朝食の鶏のささみを食べ始めた。




 トンカチ一家。ガラス王国で暮らしていると言われている、格闘界……いや、地上最強の家族のことである。


 家族構成は、母、ユージロコ・トンカチ。長女、ジャクミ・トンカチ。次女、バキコ・トンカチ。そして、養女として加えたデレラ・トンカチの四人家族である。


 養女であるデレラ以外の家族は、あなた本当に女性ですかと質問しそうな見た目である。つまり! 長身長、筋肉モリモリのご立派な女性である。


 トンカチ一家が暮らす家からかなり離れた森の中、そこには大きな巨大イノシシのモンスターがいた。巨大イノシシのモンスターの目の前に、何かが立っていた。相手は人。大きな女性だ。大きな角で体を一突きすれば、確実に一撃で命を落とす。だが、巨大イノシシのモンスターは動かない。何故なら、目の前の相手を見て、興奮と同時に恐怖を感じているからだ!


「おいおい。かかってこないのか? 子豚さんよォ?」


 と、女性は挑発するかのようにこう言った。言葉が通じたのか、巨大イノシシのモンスターは目の前の人に向かって突進を仕掛けた。力強く走っているのか、周囲には砂や土が舞った。そんな中、巨大イノシシのモンスターの角が、女性に突き刺さろうとしていた。


「フン」


 女性は鼻で笑った後、左手を前に出した。巨大イノシシのモンスターの角は女性の左手に命中した。だが、角は女性の左手を貫くことはなかった。


「何だい? その後自慢の立派な角で、私の左手を貫くんじゃなかったのかぁい? つまらん」


 女性はそう言うと、右手の手刀で巨大イノシシのモンスターの頭上に攻撃した。手刀は頭の奥深くまでめり込み、一発で巨大イノシシのモンスターを倒した。


「さて、晩飯の用意はできたね」


 と言って、女性は巨大イノシシのモンスターを担ぎ、猛スピードで去って行った。これが、これがユージロコ・トンカチである!




 トンカチ一家の家。養女のデレラが玄関の前を箒ではいていた。その時、他のハチよりも大きいハチがデレラの背後に現れた。デレラはそれに気付かず、掃除をしていた。大きなハチは、デレラを刺そうとした。だが、瞬時にデレラは箒を剣のように振るった。箒に命中した大きなハチは、そのまま地面に落ちて行った。


「ふぅ、危ない」


 そう言って、デレラは何事もなかったかのように掃除を続けた。そんな中、狩りに行っていたバキコが帰宅した。


「戻ったわよ、デレラ」


「お帰りなさい。まぁ、大きなクレイジーベアね」


 帰宅したバキコが担いで持ってきたのは、巨大なクマのモンスター、クレイジーベアである。バキコはこの凶暴なクレイジーベアを素手で倒し、持ってきたのだ。


「あれ? ジャクミお姉様とユージロコお母様は戻ってきてないの?」


「はい。ユージロコお母様は少し離れた所で狩りをすると言っていましたが、確かジャクミお姉様は……」


「今、戻ッタワヨ。アラ、バキコモ戻ッテイタノネ」


 話をする中、巨大なワニのモンスター、リュックバックダイルを二匹背負ったジャクミが帰ってきた。


「まぁ、大きなリュックバックダイル。それに二匹も」


「お姉様には負けるわ。私はクレイジーベアを一匹倒してやったなのに」


「コレダケ大キナクレイジーベアヲ倒シタノヨ。バキコ、強クナッタワネ」


 と、デレラの二人の姉は話をしていた。それを見たデレラは、心の中でこう思っていた。


 あーあ、私も強くなって、皆と一緒に凶暴で強いモンスターと戦いたいなー。


 デレラは美人だが、狂人的な喧嘩好きである。一度、近くの町で買い物をした時に、デレラは厄介なナンパ野郎たちに絡まれた。喧嘩ができると勘違いしたデレラは、ナンパ野郎たちに対して、殴る蹴る投げる、挙句の果てには関節技を決めてナンパ野郎の一人の関節を外すなどと、とんでもないことをしたことがあるのだ。そのことを知っているバキコは、デレラの肩を叩いてこう言った。


「モンスターの相手は人と戦う時よりと勝手が違うわ。もう少し、筋肉をつけて戦闘スキルを身に着けないと、今のあなたじゃ返り討ちになるわ」


「そうですか? これでも、百キロ近くの重りを体中に巻いて掃除をしていたんですが」


 と言って、デレラは服をめくり、下に身に着けている重りが付いた下着をジャクミとバキコに見せた。ジャクミはデレラの腕を触り、こう言った。


「モウ少シ、力ヲ付ケタ方ガイイワネ。モンスターハ、確実ニ相手ヲ殺シニクルワ」


「それでも、早く戦いたいです」


「成長を焦るな。人はゆっくりじっくりと強くなっていくものだ」


 会話をする中、ユージロコが獲物を持って戻ってきた。獲物を見たデレラは驚き、ユージロコにこう聞いた。


「お母様。どこで狩りをしていたのですか?」


「遠くの方へ行ってたんだよ。帰りに襲われたから、返り討ちにしてやったわ」


 と言って、ユージロコはにやりと笑った。




 家事を終え、デレラは一枚のチラシを持って料理をしているユージロコに近付いた。


「お母様。私もこの大会に出たいです」


「大会? ああ、ガラス王国の武道会ね。あんたの腕じゃ勝ち上がるのはきついから、参加させないわよ」


 と、ユージロコはこう言った。デレラは頬を膨らませながら文句を言おうとしたが、その前にユージロコが口を開いた。


「この大会には、世界中から名のある戦士が参加するわ。私たちより強い奴も、いるかもしれないわ。あんたの喧嘩好きは知っているけど、それだけじゃこの大会を勝ち上がることはできないわ」


「えー。私もこの手で格上の戦士と戦いたいです。大会のことを知って、腕がうずうずしているんです。足もそうです。私の強烈な足技をお見舞いしたいですわ」


「それで倒せるのは軟弱な野郎だけだよ。とにかく、大会の日は、留守番をお願いね」


 と言って、ユージロコは料理を続けた。


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