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ついに手に入れたぞ、焔のルビー!



 ペデラタンとの戦いの翌日、ユイーマは大変な騒ぎだった。ロリコン王が隣国の幼い姫を誘拐し、無理矢理結婚しようとしたことはニュースとなり、あっという間に世界に伝わった。ユイーマの大臣はマスコミ相手にあれこれ説明していたのだが、話を全て知っていると言うか、騒動の発端であるペデラタンが行方不明のため、マスコミは詳しいことを聞き出すことができなかった。


 その頃、ペデラタンとの戦いを終えて宿屋で休んでいたベーキウ一行。彼らの元にはマスコミがこなかった。その理由は、ヒルヴィルがマスコミによる話の拡大を防ぐため、宿屋の主人にマスコミに話をしないように、話を拡大させないようにと念を押すように伝えたからだ。


「これで、彼らも安心して休めるわね」


 ヒルヴィルは後ろの部屋で休むベーキウたちを見て、安堵の息を吐いていた。そんな中、スノウがベーキウたちの部屋へ入ろうとした。


「スノウ、ベーキウさんたちはまだ眠っているわよ。ベーキウさんの布団の中に潜り込もうなんてことは考えないでね」


「ギクッ」


 この言葉を聞いたスノウは、すみませんでしたと言いながら、自室へ戻った。




 数日後、ユイーマの国の政権は崩壊した。王であるペデラタンが行方不明になり、肝心の大臣たちも役に立たなかった。そんな中、国民たちの不満が爆発し、革命が起きたのだ。ベーキウたちとの戦いで疲弊していた兵士たちは、完全武装した国民たちの敵ではなく、あっという間に全滅した。


「ユイーマの国は、今日から生まれ変わる!」


「ロリコン野郎のせいで付着した嫌なイメージは、我々が取り除く!」


 国民たちは、完全崩壊したユイーマの城の跡地に立ち、新しい旗を掲げた。


 その情報はヘルグリームの王やヒルヴィルにも届き、彼らは急いでユイーマの国へ向かい、新しいユイーマの国の代表といろいろと話をすることになった。




 ペデラタンとの戦いから一週間後、ベーキウたちは外に出て、軽くストレッチをしていた。


「一週間寝込んでいたから、ちゃんと体を動かさないとなー」


 そう言いながら、ベーキウは体を動かしていた。ダメージを負ったベーキウは、一週間の間、ずーっと動けなかったのだ。ペデラタンとの戦いのさなか、ベーキウはクーアの治療を受けたのだが、それでも完全に傷は治らなかった。


「わらわがちゃんと治療していれば、一週間も寝込まなくてもよかったのかな……」


「仕方ないわよ。激しい戦いだったんだもん。私たちもかなり疲れたし」


 と、シアンがお茶を飲みながらこう言った。そんな中、カンベイたちがやってきた。


「皆さん、ついにあれが手に入りましたよ!」


 カンベイの言葉を聞いたクーアだったが、あれが一体何なのか分からなかった。


「あれって何?」


 それを聞き、呆れたシアンがため息を吐いてこう言った。


「忘れたの? 焔のルビーよ。私たちはあれを求めてここにきたんじゃない」


「あああああ! そうだった! いやー、いろいろあったから忘れてたのじゃー」


 と、クーアは笑いながらこう言った。そんな中、買い物に出かけていたキトリが戻ってきた。


「ただいまー。あ、カンベイさんたち。手に持っているものは?」


「これが焔のルビーです」


 キトリはカンベイの手の上にある焔のルビーを見て、思わず見とれた。激しい炎のような色をしており、光沢の反射のせいで、本当に燃えているような気がした。


「すごい……これがファントムブレードの素材なのね」


「かなりレアな鉱石です。あなたたちにはいろいろとお世話になったので、お礼として渡します」


 カンベイはこう言うと、キトリに焔のルビーを渡した。キトリは戸惑いながら、カンベイにこう言った。


「そんな、お世話になったのは私たちの方です」


 キトリの言葉の後、シアンが言葉を続けた。


「そうです! ヒャクアーシに噛まれた私たちを救った上、しばらく泊まらせてくれたんですよ! お礼したいのはこっちの方です!」


「いや、あなたたちはスノウ王女を救い、ユイーマの国をロリコンの魔の手から救ってくれた。それだけで十分です」


 カンベイがこう言うと、ヒルヴィルとスノウがやってきた。


「私たちからもお礼を言います。あなたたちのおかげで、スノウにまとわりつく変態が消えました」


「本当にありがとうございます。あのロリコン野郎には、いつも迷惑をかけられていたので」


 と言って、ヒルヴィルとスノウは頭を下げた。ベーキウたちは戸惑っていたが、ヒルヴィルは話を続けた。


「本当はお礼をしたいのですが……あなたたちは、まだやるべきことがあるんでしょ?」


 ヒルヴィルの問いを聞いたシアンは、頷いてこう答えた。


「はい。ファントムブレードを作ってジャオウを倒さなければなりません。今回、あいつらも手を貸してくれたのですが、本来は敵同士です。それに……あいつらもファントムブレードを作ろうとしています。何をするのか分かりませんが、奴らの野望を止めないといけないので」


 シアンの言葉を聞いた後、ヒルヴィルは小さく頷いた。


「そうですか……そうですね。お礼として大きな宴をしようとしたのですが、あなたたちにはそんな余裕がないですよね」


「気持ちだけでありがたいです。また、旅が終わったらこの国によりますので、宴はその時にお願いします」


 と、シアンは笑顔でこう言った。そんな中、スノウがベーキウに抱き着いた。


「ベーキウ様。できればこの国に残ってください」


「やっぱり言われたか……」


 この展開になるだろうと予測していたベーキウは、小さくため息を吐いてスノウの目線に合わせるようにしゃがんだ。


「すみません、スノウ王女。俺はシアンの旅に同行している身です。それに、故郷には母がいます。株をやって儲けていますが、少し不安なのです。なので、旅が終わったら母の元に戻るつもりです」


「それなら、私も旅に……」


「いけません、スノウ」


 ヒルヴィルは暴れるスノウを抱きしめ、こう言った。


「あなたの恋心も分かりますが、ベーキウさんは忙しいんです。あなたのわがままを聞く余裕はないんです。それに、ベーキウさんが誰に恋をするのかはベーキウさんが決めること」


「うう……」


 ヒルヴィルの言葉を聞いたスノウは、少し涙目になった。ヒルヴィルは少し間を開けて、言葉を続けた。


「それに、一生会えないと決まったわけではありません。また、機会を見つけて会いに行けばいいじゃない」


「そうね。そうですね! ではベーキウ様、私の携帯の電話番号とメールを……」


「それは渡せませんねぇ」


 と言って、シアンがスノウを睨んだ。その後、スノウは無理矢理ベーキウに連絡を渡そうとしたのだが、それを防ぐためにシアンとクーアが動き出した。


「はぁ……やっぱりこうなったか」


 騒ぎ始めるシアンとクーアとスノウを見て、呆れたベーキウとキトリは大きくため息を吐いた。


その翌日、ベーキウたちは次の大陸へ向かう船に乗り、スノウたちと別れを告げた。ヒルヴィルやカンベイたちが見送る中、スノウは大きな旗を振るって、大きな声で叫んでいた。


「ベーキウ様ァァァァァァァァァァ! いつかまた、いつかまたあなたを迎えに参ります! どうかその時は、結婚してくださァァァァァァァァァァい!」


「断固拒否させる!」


「その前にわらわがベーキウを婿にするもんねー!」


「はぁ? ベーキウの嫁になるのは私よ! 引っ込んでなさい、クソババア!」


 スノウに向かって大人げないことを言った後、シアンとクーアは喧嘩を始めた。ベーキウが呆れながらこの攻撃を見る中、キトリがこう聞いた。


「ねぇ、ペデラタンはどこに行ったのかな?」


「あのロボットから脱出したから……多分、どこか遠くへ吹っ飛んだんだろう」


 ベーキウはそう言いながら、空を見上げた。




 ユイーマの城から何百キロも離れた荒野にて。大きな岩の上に、ペデラタンが乗っていたコクピットがあった。


「はぁ……はぁ……これで動くはずだ!」


 ペデラタンはコクピット内にある充電用のレバーを回し、コクピットが動くようにしていたのだ。ペデラタンがボタンを押すと、コクピット内が光り出した。


「よし、動いたぞ! これでユイーマに戻り、再びスノウ王女を私の手元へ!」


 戻ろうとしたペデラタンだったが、その前にドイテオニーチャンが現れた。


「お兄ちゃん、どこへ行くんだぁ?」


 ドイテオニーチャンの言葉を聞いたペデラタンは驚き、前にいるドイテオニーチャンを見た。


「どうして、コクピットがないのに動いているんだ?」


「忘れたの? 私は超高性能のAIがあるの。そのおかげで、コクピットがなくても動けるの。それより、どこへ行くんだぁ?」


 ドイテオニーチャンはペデラタンに近付き、再びこう聞いた。ペデラタンは慌てながら、言葉を返した。


「お前と一緒に、ユイーマの国に戻るんだよ!」


「一人用のコクピットでかぁ?」


 ドイテオニーチャンはそう言うと、両手でコクピットを掴み、そのまま持ち上げた。


「お……おい! 何をするんだドイテオニーチャン!」


「お兄ちゃんはずっと……ずっと私と一緒にいればいい! あの国なんかに戻らなくてもいい! 私がいるから、それでいいの!」


「よくない! とにかく離せ! コクピットを下ろせ! ユイーマの国へ戻らないと……」


 ペデラタンはコクピットを下ろせと懇願したが、ドイテオニーチャンは言うことを聞かず、足元からジェットを噴射させて高く飛び上がった。


「うわァァァァァァァァァァ!」


「ずっとずっと一緒にいようね。お兄ちゃァァァァァァァァァァん!」


「止めろ! 戻れ! 戻ってくれェェェェェェェェェェ!」


 ペデラタンは戻るように懇願したのだが、ドイテオニーチャンは言うことを聞かず、そのまま高く飛び上がった。しばらくして、コクピットを持ち上げたドイテオニーチャンの姿は見えなくなった。


 その後、ペデラタンとドイテオニーチャンの行方を知る者はいない。


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