あのロリコン王に制裁を!
バーサーカーモードになって大暴れするドイテオニーチャン。これにより、ベーキウとシアンが倒されてしまった。この作品の主人公とヒロインなのに、どうしてやられるんだとか言わないこと。大ピンチな状況の中、ヒルヴィルが加勢した。
岩盤に叩きつけられ、追撃を受けたベーキウは大きなダメージを負っていた。クーアが救援にきたのだが、気を失ったベーキウを見て、悲鳴を上げた。
「ベーキウ! わらわがきたぞ! 安心せい!」
クーアはこう言ったのだが、ベーキウは反応しなかった。気を失っていると判断したクーアは、急いでベーキウの治療を始めた。
「今傷を治してやるぞ。しっかりするのじゃ!」
慌てるように、クーアは魔力を開放してベーキウの治療を始めた。しばらくすると、ベーキウが目を覚ました。
「ク……クーアか」
「ベーキウ! 目を覚ましたのか! このまま治療を続けるから、完全に治るまでもうちっと待ってくれ!」
クーアはこう言って、ベーキウを安心させた。治療中、ベーキウはクーアにあることを尋ねた。
「今、状況はどうなってるんだ?」
「キトリがシアンを回復中。ジャオウたちがあのポンコツを相手に戦っているのじゃが、ジャオウ以外の二人は、援護専門じゃから、ジャオウがやられたら終わりじゃ。あいつらに命運をゆだねるのはおかしな話じゃが……」
クーアがこう言うと、突如強い魔力を感じた。
「どうやら、誰かが援護にきてくれたようじゃ。ベーキウ、急いで治療するぞ!」
「ああ、頼む」
と、苦しそうにベーキウはこう言った。
ヒルヴィルは魔力を開放し、宙に浮いた。ヒルヴィルの魔力を感じたキトリ、そしてジャオウたちは目を丸くして驚いた。
「こんなに強い魔力を持った人がいるなんて……」
「あの人、私より強い」
と、アルムとレリルは小さく呟いた。そんな中、ドイテオニーチャンはヒルヴィルに向かってストレートを放った。だが、ヒルヴィルはあっさりとドイテオニーチャンのストレートを受け止めた。
「クソッ! ドイテオニーチャンの攻撃を簡単に受け止めてしまうとは! ドイテオニーチャン! 物理攻撃では無駄だ! ミサイルを使え!」
「はい」
ドイテオニーチャンの後ろにある小型ミサイルハッチが開き、無数の小型ミサイルが発射された。
「ヒルヴィル王妃!」
心配したキトリが、ヒルヴィルの名を叫んだ。ヒルヴィルはキトリを安心させるためにウィンクをし、宙を動き始めた。ミサイルはヒルヴィルを追尾するかのように動いていたのだが、ヒルヴィルは小さな魔力の塊を発し、ミサイルを破壊した。そして、ミサイル同士がぶつかり合い、爆発していった。この様子を見ていたペデラタンは、歯を食いしばりながら叫んだ。
「ドイテオニーチャン! 魔力だ! 魔力であのババアを始末しろ!」
「はい」
ドイテオニーチャンは両手から魔力の塊を作り、破裂させて勢いよくビームを発した。ヒルヴィルは振り返り、飛んでくるビームを受け止めた。
「ハッハッハ! あのババア、ビームを受け止めやがった! 今のうちにあのババアを始末しろ!」
「はい」
このまま押し切って、ヒルヴィルを倒そうとペデラタンは考えた。だが、突如コクピット内に警告音が流れた。
「何だこれは!」
「注意、注意! 背後から強烈な攻撃を受けています!」
「背後だと!」
ペデラタンは後ろを確認すると、手当てを終えたキトリ、そして復活したシアンがアルムとレリルの力を借り、後ろから攻撃していた。
「覚悟しろロリコン野郎!」
「あなたはここで倒します!」
シアンとキトリは、叫び声を上げながら攻撃していた。どうにかしたいのだが、ヒルヴィルを倒すためにビームを放っているため、今はとにかくヒルヴィルを倒すことに専念した。だが、その時だった。
「うォォォォォォォォォォ!」
ジャオウが渾身の力を使い、ドイテオニーチャンの足を大剣で攻撃したのだ。この攻撃を受けたドイテオニーチャンは、少しだけバランスを崩した。
「なっ! しまった!」
ペデラタンは動揺したのだが、すぐに体制を整えた。
「これで次は倒れんぞ!」
と、得意げにこう言った。だが、ペデラタンの不幸は終わらなかった。治療を終えたクーアが、ベーキウを連れて猛スピードで飛んできたのだ。
「ベーキウ! わらわの愛の魔力を注ぐ! その力で、あのロリコン野郎をぶっ倒すのじゃ!」
「ああ、任せろ!」
クーアは魔力をベーキウに注ぎ、力を付けた。その後、ベーキウはドイテオニーチャンに向かって飛び、足元を攻撃した。
「ああ! またバランスが!」
ペデラタンは慌てながら、再び体制を整えようとした。だが、ジャオウが再びドイテオニーチャンの足を攻撃した。
「これで倒れるはずだ」
ジャオウがこう言うと、ドイテオニーチャンは転倒した。ビームが弱まったその隙に、ヒルヴィルは目を開いて魔力を開放した。
「これで終わりよ! あんたのせいで、いろんな人に迷惑が掛かっているのよ! 反省しながら、ぶっ飛びなさい!」
ヒルヴィルはそう言うと、両手に強い魔力の塊を発し、大声で叫びながら大きなビームを発した。その大きさは、ドイテオニーチャンを包み込むほどの大きさであった。
「そんな……この……ドイテオニーチャンが……」
「バカな! こんなはずでは……」
ペデラタンとドイテオニーチャンは、悔しそうな声を上げた。このままだと酷い目に合うと察したペデラタンは、脱出ボタンを押し、自身が乗るコクピットを上へ吹き飛ばした。
「あ、逃げた!」
アルムは逃げるペデラタンを見つけて叫んだ。だが、ジャオウがこう言った。
「あいつ一人では何もできない。ここはひとまず、逃がそう」
その後、ヒルヴィルが放つビームは、ドイテオニーチャンをどこかへ吹き飛ばした。
戦いは終わった。ビームを放ち終えたヒルヴィルは、疲れた様子を見せながらその場に座った。
「ヒルヴィル王妃!」
「大丈夫ですか!」
と、心配したベーキウたちがヒルヴィルに駆け寄った。ヒルヴィルは疲れたものの、笑みを見せてベーキウたちを安心させた。そんな中、ジャオウはアルムとレリルに何か合図をし、その場から去ろうとした。そのことを察したベーキウは、ジャオウの名を叫んだ。
「おい、何をするつもりだ?」
「この大陸から去るだけだ。焔のルビーは諦める」
「そうか……」
ベーキウがそう答えると、ジャオウはベーキウの方を振り返ってこう言った。
「次に会う時は敵同士かもしれんな。その時に、焔のルビーを奪うかもな」
「渡せねーよ。絶対にな」
「ふっ。そうか」
ジャオウはそう答えると、アルムとレリルを連れて去って行った。
ジャオウたちが去った後、戦いが終わったことを察したスノウたちがやってきた。
「ベーキウ様ァァァァァ! あぁ、酷い怪我をされているようで……」
スノウは泣きながら、ベーキウに抱き着いた。シアンたちは奇声を上げてスノウをベーキウからどかそうとしたのだが、スノウはなかなか離れなかった。その様子を見て、ヒルヴィルは小さく笑ってこう言った。
「スノウ、ベーキウさんのことがずっと不安だったのね」
「はい。お……お義母さん!」
スノウは、やつれた表情のヒルヴィルを見て驚き、近付いた。
「お義母さん、強い魔力を使ったのですか!」
「ええ。少し疲れたけど、すぐに治るわ」
「もしかして、ペデラタンを倒すために強い魔力を使って……」
「その通りよ。少し無茶したけど、あなたを助けるためなら、何だってするわ」
と、ヒルヴィルは笑顔でこう言った。その後、疲れ切ったベーキウたちはカンベイたちの力を借り、近くの宿屋へ移動した。
とりあえず、戦いは終わったな。
移動する中、ベーキウは荒れ果てたユイーマの城を見ながら、心の中でこう呟いた。
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