力を奪って、力に溺れて
クーアが放った魔力により、大爆発が起きた。そのせいで、ユイーマの城とその周囲が大きく揺れた。
「何だ今の揺れは!」
「爆発音も聞こえたぞ! 城の中からだ!」
「やーねぇ。こんな状況で、城の人たちは料理でもしていたのかしら?」
「ガス爆発じゃないだろこれ。明らかに、魔力を使って戦ってたんだよ」
などと、門の周りにいた町の人たちが、ざわつき始めた。そんな中、町の人の一人が爆発のことをどーしても気になったので、様子を見に行くことにした。
「俺、気になるから見に行くよ!」
そう言うと、その言葉を聞いた他の人たちも気になったため、爆発が起きた場所へ走って向かった。
キトリは闇の魔力を使い、敵の女戦士を追い詰めていた。
「はぁ……はぁ……こりゃきついわよ」
敵の女戦士は何度も荒い呼吸をしていた。何度もキトリに攻撃を仕掛けたのだが、キトリは攻撃をかわし、強烈な闇の魔力の反撃を受けてしまったからだ。
「おばさん、これ以上戦うと命が危ないわよ」
「誰がおばさんよ! 私はザプレ! 年齢は四十よ!」
「十分おばさんだと思うけど……ま、敵のことなんてどうでもいいわ」
キトリはそう言うと、闇で作った剣を右手で持ち、ザプレに向かって走り出した。
「グッ! もう少し若ければ、それなりに戦えるんだけど!」
向かってくるキトリを見たザプレは、魔力を両手に発し、前に出した。
「無数の風の刃で切り刻まれろ!」
この直後、ザプレの両手から風の刃が放たれた。キトリは指を鳴らすと、背中から闇の魔力を発し、そこから弾丸を発して風の刃を破壊していった。
「うっそーん……」
「力の差がありすぎたようね」
キトリはそう言うと、闇の剣を振るってザプレに一閃を与えた。攻撃を受けたザプレは悲鳴を上げながら後ろに吹き飛び、その場に倒れた。
「降参するなら今のうちよ。できれば、負けを認めてほしいんだけど……」
キトリはため息を吐いてこう言った。この言葉を聞いたザプレは、心の中でこう思った。
このガキ! 力の差があるってことで私を見下しやがって! おばさんの本気を見せてあげようじゃないの!
怒りを原動力にして、ザプレは再び立ち上がった。叫び声を発するザプレを見て、キトリは呆れて再びため息を吐いた。
「まだやるのだったら……容赦はしないわよ」
「容赦しないのはこっちのセリフじゃクソガキィィィィィ!」
と言って、ザプレはキトリに襲い掛かった。ザプレの両手は、ちょうどキトリの胸に触れた。
「ひゃん!」
「ケケケケケ! 育っていない乳を触られて感じたのか? 貧乳でも触られたら感じるんだね!」
「垂れ乳のあなたに貧乳って言われたくない!」
「垂れ乳言うな! 私の攻撃は、これで終わったわけじゃないよォォォォォ!」
ザプレの言葉を聞き、キトリは体の違和感を覚えた。急に、体の力が抜けてしまったのだ。
「力が……入らない……」
「ケーケケケケケ! 気付いたようだけど、もうお前は何もできないよ! 私は相手の魔力を奪う技を持っている! 私がどんなに魔力を使っても、お前から魔力を奪えば回復できるってわけだ!」
そう言うと、ザプレは後ろに下がって魔力を開放し、勢いを付けて両手を振り下ろした。
「今度の風の刃は、簡単に壊すことができないよ!」
その直後、ザプレの両手から巨大な風の刃が放たれた。キトリは魔力のバリアで防御しようとしたのだが、巨大な風の刃はキトリのバリアを粉砕し、キトリを吹き飛ばした。
「うわァァァァァ!」
「ギャーッハッハ! いい気味だよ! もっとお前を痛めつけてやるよ!」
吹き飛んで倒れたキトリを見て、ザプレは笑いながらこう言った。そして、倒れているキトリに近付き、両手で首を絞めた。
「あぐ……あ……」
「このままお前の魔力を全部吸い取ってやるよ。それで……お前の首を絞めてやる」
笑みを浮かべながら、ザプレはキトリの魔力を吸収し始めた。キトリは徐々に力が抜けていくのを感じ、弱弱しく声を発していた。
「なーにー? 何か言ってるのー? 声が小っちゃくて何言ってるかぜーんぜーん分からなーい」
と、勝利を確信したザプレは、キトリを煽るようにこう言った。煽っても、キトリは口を動かしているので、本当に何を言っているのか気になったザプレは、キトリの口元に耳を近付けた。
「勝ったと思ったの? 負けるのはあなたの方よ」
キトリが何を言っているのかはっきりと聞き取った直後、ザプレの表情に怒りの色が見えた。だが、すぐにザプレは自身の違和感を覚えた。
あれ? 魔力を吸い取っているはずなのに、なんだかくらくらしてきた。
ザプレは目まいを感じ、ふらつきながら後ろに下がった。すぐに治ると思ったのだが、ふらつきは酷くなり、目に映る光景もおかしくなってきた。
「何で? なんで壁や床が歪んでいるの? さっきまでと色が違うんだけど!」
ザプレはこう叫ぶと、気分が悪くなった。口を押えながら急いでトイレに向かおうとしたのだが、足元がふらつき、転倒してしまった。
「はぁ……はぁ……はぁ……どうして……体がおかしい。回復したはずなのに……」
「ただの人間が、闇の魔力を吸収したからよ」
キトリの言葉を聞き、ザプレははっとした表情になった。キトリの魔力の属性は闇。普通の人間では扱えない属性である。ただの魔力ではない闇を体内に入れてしまったため、ザプレは自分の体が異常反応を起こしてしまったのだと察した。
「そんな……私は自分で、自分の首を絞めてたってわけかい?」
「その通りよ」
キトリは立ち上がり、ザプレに近付いた。だが、キトリは何もせず、去って行った。何もしないことに驚いたザプレは、苦しそうに大声を発した。
「ちょっと! 何も……しないの? とどめは刺さないの?」
「弱った相手をこれ以上苦しめることはしたくない。それと、私たちはスノウ王女を助けにきただけ。あなたと戦いにきたわけじゃないから」
そう答えると、キトリは去って行った。
ペデラタンは目の前のロボットを見て、笑みを浮かべていた。
「さぁ、お前の力を見せてくれ!」
ペデラタンは意気揚々とロボットのコクピットに乗り、操作をしようとした。だが、コクピットには無数のボタンやレバーがあった。訳が分からなくなったペデラタンは、外にいる兵士にこう聞いた。
「おーい、こいつの取説ってないのー?」
「上を見てください。ぶら下げていると思います」
兵士にこう言われ、ペデラタンは上を見上げた。そこには、フックに繋がっている取扱説明書があった。
「これか。えーっと……最初に起動したら、このロボットに名前を付けてあげましょう。このロボットには、最新鋭のAIが使われています。起動か……」
「赤いボタンがあるはずです。それを押したら、動きます」
再び兵士の声が聞こえた。ペデラタンはその声の指示通りに、赤いボタンを押した。すると、コクピット内が光り出し、手元のボタンが光り出した。
「始めまして、ロリコン王」
「ロリコン王? おい、誰かこいつに余計なことを教えただろ!」
「私は名もないロボ。まず最初に、私に素晴らしい名前を付けてください」
ロボットの言葉を聞き、ペデラタンはどんな名前にしようか考えた。その時だった。
「どいてお兄ちゃん! そいつ、倒せない!」
その言葉を聞き、ペデラタンは慌てて携帯電話を取った。今の変なセリフは、ペデラタンの着信音だったのだ。
「あーもしもし? 何だ、今私は忙しいのだ」
「大変です! ショルターたちが倒され、勇者一行があなたとスノウ王女を探しに、城内を走り回っています!」
「何だと!」
別の兵士からの連絡を聞き、ペデラタンは驚いた。そんな中、ロボットはペデラタンにこう言った。
「私の名前はドイテオニーチャンでよろしいですね。素晴らしい名前をありがとう」
「え? あ! ちょっと待って! 今のは違う! 違うったら!」
「ではこの私、ドイテオニーチャンを動かしてみましょう」
ロボットの言葉を聞き、ペデラタンは苛立ちながらも、仕方ないと思いつつ、ドイテオニーチャンを操作し始めた。
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