ロリコン野郎はもう一人いる!
クーアは気持ち悪い笑みを浮かべて戦う目の前の男を見て、戦意を失いかけていた。
何じゃこいつは? 我が近くによると、嬉しそうに気持ち悪い笑みを浮かべおる。おえ、戦う相手、間違えたかなー?
クーアは心の中でこう思いながら、火の魔力で作った棒を使い、男の腹を突いた。攻撃を受けた男は後ろに吹き飛び、壁に激突した。しばらく何もしてこなかったのだが、男は立ち上がって気持ち悪い笑みを浮かべた。
「うひひひ。いい攻撃だねぇ。君みたいな若いエルフの魔力は、すごく素晴らしいよ」
「まぁ、若いですって?」
若いと言われ、頬を少し赤く染めてクーアは嬉しそうな声を上げた。その隙に、男は雷の魔力を使ってクーアに突進を仕掛け、床の上に押し倒した。
「がっ! ぐあっ!」
「俺はスシクス。君みたいな若い子を見ると、少しやる気になるんだよ」
「はん! 何がやる気じゃボケェ!」
叫び声を上げながら、クーアはスシクスの股間に向かって蹴りを放った。クーアの右のつま先は、見事にスシクスの急所に命中した。
「おっ! おごっ!」
異常な痛みを感じたスシクスは、股間を抑えながら後ろに下がった。その隙にクーアは立ち上がり、右手で水の魔力を発し、左手で風の魔力を発した。
「この野郎! 我を襲うなんぞ、千年早いわ!」
と言って、クーアは攻撃を仕掛けた。右手からは無数の氷の粒子がスシクスに向かって飛び、左手からは風で作られた槍がスシクスを襲った。
「ふふふ。いい攻撃だぁ。今のはちょっと痛かったけど」
何とか痛みに慣れたスシクスは、呼吸を整えてクーアの攻撃をかわした。
「太っている割に、見事な動きじゃ」
「これでも、前職は軽業師をやってたんだよ!」
身のこなしに驚くクーアに対し、スシクスは飛び上がりながらこう答えた。そして、斧を取り出して体を回し始めた。
「ドカンと一発、ぶちかましたるぜェェェェェェェェェェ!」
叫びながら、スシクスはクーアに襲い掛かった。勢いを付けた斧の攻撃を受けたら、体の一部がぶっ飛ぶと判断したクーアは、水の魔力を使い、スシクスに向かって放った。
「うわっぷ! ぶるるっ!」
噴水のような勢いで飛んでくる水を浴び、スシクスは苦しそうな声を上げた。それでも、スシクスの攻撃の勢いは止まらなかった。
「こんのぉ! よくもやったな!」
スシクスは叫び声を上げながら、床の上にいるクーアに攻撃を仕掛けた。斧が床に激突し、激しい音が発し、周囲に床の破片が散らばった。
おかしい。人を斬りつけた感覚はないぞ。
そう思いながら、スシクスは両目付近に付着した水を拭いながら、周囲を見回した。すると、雷の魔力を両手に発したクーアが、スシクスに接近していた。
「お前はバカじゃのう! 水を出したのはお前の攻撃の邪魔をするため! そして、この攻撃のためじゃ!」
叫び声をあげながら、クーアは両手の雷をスシクスに押し当てた。濡れているせいか、強い雷がスシクスの全身を襲った。
「うぐあァァァァァァァァァァ!」
周囲には、雷が轟く音が響いた。強い雷を発して攻撃したクーアだったが、スシクスの魔力が弱くならないことを気にしていた。
ダメージは与えている。じゃが、こいつはまだ魔力を残している。何かするつもりじゃ!
クーアが心の中でそう思う中、スシクスの魔力を感じた。攻撃をされる前に、クーアは次の攻撃の構えをした。だがその時、感電するスシクスはにやりと笑い、クーアの腕を握りしめた。
「んなっ!」
「つーかまーえた!」
クーアの予想外のことが起きてしまった。スシクスは感電しながらも動き、クーアを床に倒させ、その上にまたがった。
「がはっ!」
スシクスの重い体が、クーアを苦しめた。動こうと思っても、あまりの苦しさにクーアは手足を動かすことができなかった。
「ぐふふ。これで君は俺のオモチャさ。たっぷりといいことをして弄んであげるから、もっと喜べよ」
この言葉を聞いたクーアは、悪寒を感じた。こいつはとんでもない性癖を持っていると、クーアは察したのだ。
ユイーマの城の前、城から何か音がすると言って、気になった住人たちが門の前に集まっていた。
「なんか変な音がするぞ」
「一体中で何が起きているんだ?」
「あのロリコン野郎、仕事もせずにバカなことをしてるのか?」
などと言いながら、住人たちは門の前にいる兵士に詰め寄っていた。対処に苦戦する兵士たちは、互いの顔を見合わせて小声で会話を始めた。
「おい、どうするよ?」
「どうするって、なにをどうすりゃーいいんだ?」
「あのロリコン野郎がスノウ王女をさらって、無理矢理結婚式を挙げるって説明したほうがいいか?」
「止めとけ、住人の怒りが爆発する。それに、この音は結婚云々関係ないだろと言われるぞ」
「そうだよな。でも、どうすりゃーいいんだ?」
と、困惑しながら話をしていた。
そこから少し離れた所では、ジャオウたちがいた。
「何か起きてるみたいだね」
「ああ。少し……気になるな」
ジャオウは城を見ながら、アルムにこう答えた。
クーアはスシクスの重さに耐えきれず、嗚咽を発していた。その顔を見てか、スシクスは笑みを浮かべた。
「ああ、いい顔だ。苦しそうな顔が、俺を興奮させる」
「この野郎……貴様、リョナラーか。異常な性癖を身に着けやがって」
「確かにね。自分でも異常だと思ってるよ。それと、俺はペデラタン様と同じ、年下好きさ! 君みたいな十代後半の美少女を見ると、ムラムラするんだよ!」
この言葉を聞いたクーアは、プライドに大きな傷が付くかもしれないが、真実をスシクスに伝えた。
「そうか。お前はわらわのことを美少女だと思ってくれるのか! ありがたいが……わらわの実年齢は……八十五じゃ!」
この言葉を聞いたスシクスは、一瞬だけ動きを止めた。
「え……え? 八十五? そんな見た目で、八十五?」
「そうじゃ、文句あるか? エルフは成長が遅いから、若く見えてもかなりの年寄りの奴が多いのじゃ。わらわも、そのうちの一人じゃ」
クーアの言葉を聞き、スシクスは悲鳴を上げた。
「ぴっぎゃァァァァァァァァァァ! つーことは……俺、ババア相手に興奮してたってわけか! いやァァァァァァァァァァ! どうしよう、こんなこと誰かに知られたら、一生笑いもんだよ! ババアをいじめてあそこが覚醒したなんて知られたら、バカにされるよォォォォォ!」
慌て始めたスシクスを見て、クーアの怒りが爆発した。
「何じゃ貴様? 最初、わらわとやりあっている時はかなり嬉しそうだったじゃないか」
「そりゃーそうだよ! 最初はお前のこと、本当に十代後半の美少女だと思ってたんだよ! 歳をごまかすなんて最低!」
この言葉を聞いたクーアの怒りは、再び爆発した。
「なーにが最低じゃ! この、異常性癖変態ロリコンクソ野郎! お前みたいな人間としても男としてもクズな野郎は、わらわが半殺し……いや! 四分の三殺しにしてやるわ! 覚悟して歯ぁ食いしばれェェェェェェェェェェ!」
と言って、クーアはありったけの魔力をスシクスに向かって放った。この攻撃を受けたら死ぬと察したスシクスは、大急ぎで逃げ始めた。だが、いくら逃げてもクーアが放った魔力はスシクスを追いかけた。
「はぁっ、はぁっ、あの魔力……どこまで追いかけてくるんだよ!」
スシクスは息を切らせながら、走っていた。途中、窓があったのだが、スシクスは窓を突き破って外に逃げた。だが、クーアの魔力の一部が先に回っていたのか、スシクスの目の前にあった。
「そんな……俺の行動を予測してたのか!」
スシクスは目の前の魔力の球体を見て、言葉を失った。その直後、魔力の球体はスシクスに激突し、大爆発を起こした。
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