ロリコン王の強硬手段!
作戦は失敗し、その上シアンとクーアの手によってペデラタンは半殺しにされた。強力な魔力の攻撃を受け続けた結果、ペデラタンの体は黒焦げになっていた。
「ふぅ、こんなもんね」
「まだ息はしておる。とどめを決めるか?」
「そうね。あの野郎は生きていたら、確実に人としての道を踏み外す!」
シアンはそう言うと、巨大な光の魔力の球体を作り、倒れているペデラタンに向かって投げようとした。
「げ! あばばばばば! あんなもん喰らったら死ぬ! つーか、勇者が一国の王を殺したらまずくないのー?」
「大丈夫よ! ごまかせば何とかなる!」
と言って、シアンはとどめの一発をペデラタンに向かって投げた。生きるため、ペデラタンは大急ぎで走り出し、何とかシアンの攻撃をかわした。
「クソ! 逃げやがった!」
「あの野郎、どさくさに紛れて城内に逃げるつもりじゃ!」
クーアは城の方へ向かって走るペデラタンを見て、大きく叫んだ。攻撃を終えたシアンは、クーアと一緒にペデラタンを追いかけた。
ペデラタンはあることを考えて城内に逃げ込んだ。
一つ。城内に逃げれば、シアンとクーアは強い攻撃を仕掛けない。その理由は、強すぎる攻撃で、他の人を巻き込んでしまうから。
二つ。ペデラタンにとって、これが一番重要なのである。それは、無理矢理スノウをさらい、自国へ逃げること。
ペデラタンは、スノウを探してひたすら城内を走り回った。しばらくすると、武装した兵士たちが現れた。
「見つけたぞ! あのロリコン野郎だ!」
「ヒルヴィル様とスノウ様から、あいつを仕留めればボーナスが出ると言われているんだ!」
「あのクソ野郎を始末するのはこの俺だァァァァァ!」
城の兵士は、槍を持ってペデラタンに襲い掛かった。
「ギャァァァァァァァァァァ! 私、一国の王だよ! 攻撃しないで、殺さないで!」
「情け無用! お前が死ねば、スノウ様は笑顔を取り戻すんだ!」
兵士の一人はそう叫びながら、剣を振るった。ペデラタンは悲鳴を発しながら攻撃をかわしたが、遠くから無数の闇の矢が飛んできた。
「いげぴぎゃァァァァァァァァァァ!」
ペデラタンは奇声を上げながら、何とか闇の矢をかわした。闇の矢を放ったのはキトリ。キトリもスノウやヒルヴィルから、ペデラタンを倒したらボーナスをあげると言われたのだ。
「チッ、無駄に運動神経がいいわね」
「キトリ、倒すにしても半殺し程度にしてくれよ。殺したら、何とも言えない……」
ベーキウはため息を吐きながら、キトリにこう言った。だが、ベーキウの脇腹に抱き着いているスノウは大声で叫んだ。
「半殺しなんて生ぬるい! ゴミは処分すべきです!」
「一応、あれでも一国の王だからさ、ゴミ扱いするのは止めようぜ」
スノウの子供とは言えない言葉を聞いたベーキウは、冷や汗を流してこう言った。その時、スノウの声を聞いたペデラタンは、全身から力がみなぎるのを感じた。
「見つけたぞ、マイエンジェル! 私が今、お迎えに参ります!」
ペデラタンはスノウを見て、すごい勢いで走り始めた。ベーキウがクレイモアを持ってペデラタンの前に立った。
「王女に手を出させねーぞ!」
「邪魔だ! 凡人が!」
ペデラタンは右足に魔力を込め、ベーキウを蹴り飛ばした。壁に激突したベーキウに気を取られたキトリは、その一瞬だけスノウから目を離してしまった。
「今がチャンスだな!」
「しまった!」
キトリはスノウを助けようとしたのだが、その前にペデラタンは無理矢理スノウの手を取り、自身の胸元に引き寄せた。
「ハーッハッハ! これで私の目的は達成した!」
「いやァァァァァ! 離して! どさくさに紛れて胸を触らないで、気持ち悪い!」
スノウは悲鳴を上げながら、手足を動かした。だが、ペデラタンはスノウを離すことはなかった。キトリが急いでスノウを助けようとしたその瞬間、ヒルヴィルが現れてペデラタンに蹴りを放とうとした。
「スノウを離しなさい、ロリコン野郎!」
「おーっと、ヒルヴィル王妃。このままだと、あなたの大事な義理の娘さんに蹴りが当たってしまいますよ?」
と、ペデラタンはにやりと笑ってこう言った。スノウがペデラタンの近くにいるため、ヒルヴィルは攻撃を仕掛けることができなかった。
「卑怯者!」
「卑怯? 卑怯で何が悪い! 私は目的を達成するためには、手段を選ばん! さらばだ、間抜け共!」
ペデラタンは高笑いしながら、猛ダッシュで逃げてしまった。兵士が追いかけようとしたのだが、ヒルヴィルが止めた。
「このまま攻撃を仕掛けたら、スノウに攻撃が当たるかもしれないわ。あの子を、傷付けたくない……」
「はい……」
兵士たちは武器を下ろし、高笑いで去って行くペデラタンを見ることしかできなかった。
その後、ヒルヴィルはカンベイたちにスノウがペデラタンにさらわれたことを伝えた。話を聞いたカンベイたちは、仕事が終わり次第助けに行くと返事をした。そんな中、ベーキウとキトリはシアンとクーアと合流し、話を始めた。
「大変なことになったな」
「あのロリコン野郎、ついにやっちゃいけない一線を越えたわね」
「無理矢理さらうとか、人として王として、やってはいけないことじゃろうが。あいつ、王としての器がないの」
「クーアの言う通り。とにかく、早く助けに行かないと」
キトリの言葉を聞いた後、ベーキウたちは頷いた。その時、兵士がやってきた。
「皆様、これからユイーマに行くつもりですか?」
「はい。今なら間に合うかもしれません」
「あのロリコン野郎がスノウにとんでもないことをする前に、あの野郎をぶっ飛ばすわ!」
シアンは腕を鳴らしてこう言った。兵士は神妙な声で、シアンたちに言葉を返した。
「今、ペデラタンはスノウ王女を取られないように、守りを固くすると思います。行くなら、慎重に……」
「忠告ありがとの」
「いくら慎重に動いても、あいつらは私たちがくることを予測しているわ」
クーアとキトリはそう言うと、軽い準備運動を始めた。兵士は動揺したが、ベーキウとシアンも軽い準備運動を行っていた。
「侵入しても、結局戦うことになる可能性はある」
「時間をかけてこそこそ動くより、真正面から攻め込んで手っ取り早く王女を助けた方がいいわ。私としても、こそこそ動くのは嫌いだし」
「うし、俺は準備できた。皆は?」
ベーキウの問いに対し、シアンたちは頷いて返事をした。
「よし、それじゃああの国に攻め込むわよ」
「うっしっし! 久しぶりに大暴れできそうじゃのう!」
「ほどほどにね……ま、あいつらが何かやってきたら、国一つ滅ぼすことも考えるけど」
「キトリ、物騒なことを言うなよ」
ベーキウたちは会話を終わらせた後、城の外へ向かった。兵士が動揺する中、ヒルヴィルが近づいてこう言った。
「今は彼らに任せましょう。私たちも準備が終わったら、あの国に攻め込むわよ」
「はっ……え? 攻め込む? いいんですか?」
「いいのよ。一度、あのロリコン野郎の気持ち悪い顔面に、一発強烈な拳を沈めたかったのよ。丁度いい機会よ」
ヒルヴィルは怒りの形相で、指を鳴らした。
一方その頃、ユイーマ近くの薬局店に、ジャオウたちがいた。
「こんなにたくさん胃薬を買うなんて……ま、こっちとしては儲かるからいいんだけど、本当にきつかったら病院に行った方がいいよ」
「そうだな、警告感謝する」
ベーキウは薬局の店員から、大量の胃薬が入った袋を受け取り、礼を言った。その後、外にいるアルムとレリルと合流した後、周囲を見回した。
「さっきより騒がしいな」
「今、ユイーマの国の王様が、隣の国の王女様をさらって戻ったみたいです」
「王様が隣の国の王女をさらうなんて、何バカなことをやってるんだか。私、呆れたわー」
アルムとレリルの言葉を聞き、ジャオウは遠くにあるユイーマの城を見つめた。
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